第六章 覚醒06
呆然となった水沢は、しばらくその場に立ち尽くしていた。
子供たちの前に、佳代の姿があった。
佳代に目配せをされた采沢が、水沢の存在に気が付き、目を向ける。真っ白な髪のままだったが、その顔は穏やかなもので、どれをとっても水沢が手に入れたくても手に入れられなかったもの。
「もうそろそろ、来るころだと思っていたよ」
「どういうこと?」
「ああ紹介しよう。僕の子で、優奈と瑠羅。それに妻の佳代」
「佳代さん、あなた生きていたの?」
呟く水沢に、佳代は静かに微笑んだ。
「采沢先生」
「もうその呼び方は止してくれ」
両手を上げ、おどけて見せる姿に目を見張る。
「君の言い分は、分かっているつもりだ。僕の息子の件だね」
「どうしてそれを」
郊外にあるカフェに場所を変えた二人は、向き合って座っていた。
「この子が、あなたの子です」
写真を見せられた采沢は、目を細める。
「名前は?」
「健吾です」
「良い名だ」
「どうしてなんです? あの子達はいったい何者なんですか?」
日差しが眩しく、赤くなった顔を崩して笑う采沢に、水沢は眉根を寄せた。
「すばらしいだろ? あの子達が僕らの地球人を救う」
「何をおっしゃっているのか、さっぱり分りません。しっかりしてください。あの女は狂っています。誰が信じるんです? 地球が燃えてなくなるなんて」
「まぁいないだろうね。僕を除いては」
「采沢先生?」
「話はそれだけかね?」
「私に、あの子達のDNA鑑定をさせてください」
穏やかだった采沢の目が、一瞬険しさを見せる。
「その必要はない」
立ち去ろうとする采沢に、水沢は食い下がった。
「お願い。健吾には父親が必要よ」
ゆっくりと振り返った采沢が、唇だけを動かす。
「やがて運命の糸は結ばれる。君はそれに逆らってはいけない」
采沢と会ったのはそれが最後となった。
「沸々とした気持ちのまま、年月が過ぎ、そしてあなたたちは行動を起こした。そうですよね」
「ま、そういうことになるかな。柊歌、それを語ったところで事態は何も変わらんよ」
「分かっています。すべて筋書き通りに、ですよね」
「ああ」
「僕はあなたみたいに潔く、諦められない。諦めてはいけないと、いろんなものを見せられている気がします」
苗代は何も言わず、踵を返す。




