第六章 覚醒04
ゆっくりと瞼を開けた苗代は、ハッとする。
躰を起き上がらせようとするが、身動きが出来なかった。
苗代はカプセルに入れられていた。
「お目覚め?」
瑠羅が顔を覗き込む。
「そんな怖い目をしないで」
カプセルが蓋を解除した、瑠羅が微笑む。
「何をする気だ?」
手足を固定された苗代が身をよじりもがく。
「さぁ?」
肩を竦めた瑠羅が、愉快そうに笑う。
「あなたは、何を企んでいるの?」
優奈がスクリーンに水沢亜紀が映し出す。
「哀れな姿よね。私たちをモルモット扱いした罰が下ったのよ」
優奈の言葉に、苗代は目を瞠る。
それは人工呼吸器をつけられた水沢が、横たわった姿だった。
「私たちはなぜ、あの場所に集められたの? ママはなぜ、死ななければならなかったの?」
瑠羅の言葉に、苗代の瞳が揺れる。
「ねぇ知っている? このカプセルは私たちの能力を引き出すために開発されたのよ。少しでも兆候があるとみなされたいろんな子が、この中で精神を破滅させていったわ」
苗代は、顔を強張らせていた。
余程それが愉快だったのだろう、瑠羅が苗代の頬を撫で、そっと囁く。
「あなたはどうかしら?」
蓋が閉じられる。
「止せ」
何を叫んでも、外には漏れることはない。
まるで慈しむように、瑠羅は唇部分を指でなぞる。
「ゲームセット」
瑠羅の唇がそっと動き、ボタンが押されるのと同時に、けたたましく警報が鳴り出す。
照明が落ち、暗がりから手が伸びる。
訳が分からないまま、苗代は引っ張り上げられ、火の手から間逃れることが出来たのだった。
むせ返りながら苗代は、茫然と燃え落ちていく研究所を見ている優奈に、目を瞠る。
「きみが?」
優奈が悲しい目で頷く。
「こんなことの繰り返しに、意味などありません。瑠羅はあのカプセルで脳にダメージを受けてしまいました。ずっとあのベッドで時間だけを感じ、生きているだけの生物体になってしまったのです。それでも采沢の研究は止まることがありませんでした。より正確で確実な能力。私が連れてこられたのもそんな理由でした」
優奈が苗代の瞳をじっと見つめ返す。
「あなたもご存知ですよね。最初に見出されたのは、私のママだった。何も知らないママは、人助けになると言われ、協力をしてしまったの。数回に渡りトリップさせられたママの体は、悲鳴を上げだした。その頃だったんです。私たちを身籠ったのは。そんな小さな生命にさえ、采沢は手を掛けようとした。当時助手を務めていた兵藤に命令してね。可愛そうなママ。ただ、人より勘が鋭いというだけで、利用されてしまったの。だけど少し違っていたみたい。しゅうちゃんの方が鮮明にそのやり取りを知っていた」
「あんた、柊歌が瑠羅だって気が付いていたのか」
振り返った優奈が小さく笑う。
「あんた、あいつのことを好きだったんだろ。だから怜美が許せなくなって」
黙って立ち去る優奈を見届けた苗代は、火の手が上がる研究所に向かって、もういいぞと声を掛けた。
「本当にこれで良かったのか」
「優奈を束縛しているものは、瑠羅なんかじゃない。あの研究所そのもの。見えない影に優奈はずっと怯えて生きていた」
煙草をポケットから出した苗代を見て、僕は苦笑する。
「まさかこんな風に繋がっちまうなんて、母親は分かっていたのか」
「おそらく計算ずくでしょう」




