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第37話「装置の完成を阻止する」

お読みいただきありがとうございます。装置の完成に必要な欠片を全部押さえた翌日、ギレンが全国三十一か所の廃ダンジョンを電波干渉で同時起動します。蓮と凛が七か所を回る。埼玉の林、千葉の砂浜で走る避難者、神奈川で逃げ遅れた老人——そして最後の栃木の山では「山全体が白く光った」。七か所目を終えた瞬間、御堂から無線が入ります。「ギレンが来ました」。

茨城の欠片を回収した翌日、栃木も確保した。これで急進派が持つ欠片の施設は全部潰した。早川が「装置の完成に必要な欠片は全部こちらで押さえました」と言った。「根源の強制解放は不可能になりました」


 施設の食堂で早川の報告を聞いていた。村瀬がコーヒーを飲みながら「終わりましたか」と聞いた。


「装置は完成できない。ただ、ギレンが諦めるかどうかはわかりません」と御堂が言った。


 蓮は何も言わなかった。ギレンの目を思い出していた。計算が外れた時、落ち着きが崩れた。ただ諦めた顔ではなかった。別の手を考え始めた顔だった。装置が完成できない。欠片が手に入らない。では次は何を使うか。ギレンが考えているのはそのことだった。


「ギレンにとって、根源を強制解放できる手段は欠片の装置だけではないかもしれません」と蓮は凛に言った。


「他の方法があるということですか」


「わかりません。ただ、昨日諦めた顔じゃなかった」


---


 その夜、早川から緊急連絡が来た。


「全国三十一か所が同時に動き始めています」


 観測室に走った。モニターに三十一本のラインが立っていた。急角度だった。七か所の余震の時の比ではなかった。


「装置なしでこれができますか」と蓮は言った。


「装置の設計図を使わなくても、今こちらが押さえた欠片を逆用できます」と早川は言った。「こちらが回収した三十個の欠片、まだ一か所に保管しています。その一か所から一斉に信号を出せば、欠片が接続している廃ダンジョンを全部起動できる」


「欠片を盗むつもりですか」と御堂が言った。


「それは無理です。ただ」と早川は言った。「施設の外から欠片に向けて信号を送ることはできます。電波干渉です。欠片の保管場所が特定できれば、施設の外から起動信号を送れます」


「三十一か所を同時に動かして、こちらの戦力を全部分散させる」と蓮は言った。「その間に——ギレンが直接来る」


 部屋が静かになった。


---


「A級を分けますか」と御堂が聞いた。


「全員出しても三チームが限界です。残り二十八か所は対応できません」


「俺が動きます」と蓮は言った。「近い順に当たります」


「凛さんは」と御堂が聞いた。


「一緒に動きます」と凛はすでに補助具を持っていた。


「村瀬さんは施設に残ってください」と蓮は言った。「ギレンが直接来る可能性があります。御堂さん、施設の警備を最大にしてください」


「わかりました」と御堂が言った。「ただ、柏木さん。三十一か所を全部一人でやれますか。昨日四十七人を止めた。今朝の栃木もある。消耗しています」


「大丈夫です」


「本当に」と御堂は言った。「正直に答えてください」


 蓮は少し間を置いた。「正直に言えば、全部は無理かもしれません。ただ、できる限りやります。残りはA級のチームに頼みます」


---


 最初の現場は埼玉だった。廃ダンジョンの林が音を立て始めていた。凛と二人で着いた。


「四十一匹。散っています」と凛が言った。「集まる前に」


 蓮は手を伸ばした。林全体が白く光った。四十一匹が消えた。八秒だった。


 次は千葉だった。海岸の廃ダンジョンだった。砂浜に近かった。潮の匂いがした。避難中の人間がまだ波打ち際を走っていた。岩の間から何かが出てきた。大きい種類だった。走っている人間に向かっていた。


 蓮は走りながら手を伸ばした。岩の間が一瞬白く光った。出てきかけたものが止まった。岩の表面が黒くなっていた。「五匹でした」と凛が言った。走っていた人間が転んだ。立ち上がった。振り返った。岩の間に何もいなかった。しばらく立ったまま動かなかった。それから力が抜けたようにしゃがんだ。


 神奈川では住宅地に隣接した廃ダンジョンだった。逃げ遅れた老人がいた。アパートの二階の窓から顔を出していた。蓮がダンジョンの入口を光らせた。老人が「……もう大丈夫ですか」と窓から聞いた。「大丈夫です。出てきてください」


 東京郊外、茨城。六か所を終えた時点で昼を過ぎていた。車の中で凛が水を渡してきた。蓮が受け取った。飲んだ。


「疲れていますか」と凛が聞いた。


「大丈夫です」


「動きが五か所目から少し遅くなっています」と凛は言った。「嘘をつかないでください」


 蓮は少し間を置いた。「大丈夫です。ただ、正直に言うと三十一か所全部は無理かもしれません。あと一か所だけ大きいのがあります。それを取ったらA級に残りを任せます」


「わかりました」と凛は言った。「最後の一か所に補助を全部使います。あなたが動く前に全員の位置を渡します。一度で取れる形にします」


「ありがとうございます」


 凛が少し黙った。「それを言うのは今日が初めてですね」と言った。


 蓮は少し考えた。「言っていなかったですか」


「言っていませんでした」


---


 最後の一か所は栃木の山だった。廃ダンジョンの中で規模が最大だった。着いてみると山全体が揺れていた。地鳴りのような音がした。


「六十七匹です」と凛が言った。「まだ増えています」


「一度で取ります」


「わかりました」と凛が補助具を両手で操作した。「今から補助を最大にします。引っ張られたら声をかけてください」


 山に向かった。足元が振動した。木が揺れていた。光点が見え始めた。増えていた。凛が「今です」と言った。


 蓮は両手を伸ばした。


 山全体が白く光った。林より広い。光が山の上まで届いた。岩も斜面も全部が白くなった。一瞬だけ、山の形が昼間より鮮明に見えた。それから光が消えた。地鳴りが止まった。


「六十七匹、全部取れました」と凛が言った。声が少し変わっていた。


 蓮は手を下ろした。足元が少し揺れた気がした。凛が「引っ張られていますか」と聞いた。「ないです。大丈夫です」


 その時、無線が鳴った。御堂だった。「施設に来ています。ギレンが来ました。一人です」


---


「一人ですか」と蓮は言った。


「はい。部下なし。単独で正門前に立っています。武装はしていますが、攻撃体制ではありません。ただ」と御堂は言った。「何か持っています。容器のようなものです。欠片と同じ種類の光を発しています」


「欠片ですか」


「違います。もっと小さい。ただ、反応があります」


 蓮は少し考えた。ギレンが手に持っているもの。欠片以外に根源と接続を持つものがあるとすれば——


「今から戻ります。動かさないでください」と御堂に言った。「俺が直接話します」


 蓮は山を下り始めた。凛が横に来た。補助具をまだ持っていた。夕方になっていた。空が赤かった。


「ギレンが一人で来た理由は何だと思いますか」と凛が聞いた。


「話すことがある、か。最後の手を打ちに来たか。どちらかです。欠片なしで根源に干渉できる別の方法があるなら——それを持ってきた可能性がある」


「御堂さんが言っていた、手に持っているもの」


「そうです。早川さんに調べてもらいます」


 凛が少し間を置いた。「今日一日で、どれだけ動きましたか」


「七か所です。六か所目は神奈川で、老人が逃げ遅れていました」


「見ていました」と凛は言った。「走りながら手を伸ばしていました。止まらなかった」


「止まる必要がなかったです。凛さんが位置を教えてくれていたので」


 凛が黙った。しばらく歩いた。「今日も、ありがとうございます」と凛は言った。昼間蓮が言ったのと同じ言葉だった。


 手帳を出した。「三十一か所同時対応。全部終わった。ギレンが施設に一人で来ている。何かを手に持っている。覚醒から八十八日目」

次話:第38話「ギレンとの決着」

七か所を一人でやって戻ったその夜、ギレンが正門前に一人で立っていた。右手に持っているのは欠片ではない——根源の残滓です。続きが気になった方は、ぜひブックマークや【☆☆☆☆☆】評価で応援いただけると嬉しいです!

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