第66話『食べてはいけない』
「明日は健康診断、何も食べても飲んでもいけない……」
明日は学校で行う健康診断の日。その為にも、美紀は夕べから絶飲食をしている。
「お腹、空いた…………」
空腹に耐えながら、布団に潜る。
「……っていうか、そもそも一日前から食事しないのはどうかしてると思うなぁ。まさかだけど私がどうかしてるなんてないよね……?」
布団の中であれこれ考えるが、既に始めてしまった以上もう後戻りは出来ない。
「明日の朝、うっかり水を飲まない様にしないと……」
そう思いながら、美紀はゆっくりと目を閉じた。
「おはよう小夜ちゃん……」
「おはよう美紀、今日は健康診断だね。空腹は限界になってない?」
「あぁ、何とかね……」
小夜は自分の朝食を食卓に並べて、席に座って手を合わせる。
「いただきます……」
美紀は小夜が朝食を口にする様子を、そばで見つめる。
『じ〜〜〜〜……』
小夜はちょくちょく美紀を見ながらも食事を進める。
「…………」
そして、手を止める。
「……あげないからね?」
「分かってる。だから小夜ちゃんが食べてるトコを見て満足しようと」
「私が食事するところのどこが楽しいのかな……」
「そりゃあ、柔らかい口が触れるところを見るのが」
「すごいトコを突いてきたね……」
「でも、もう時間だから行かないと。小夜ちゃん行ってきます‼︎」
「行ってらっしゃい」
空腹に耐えながら、美紀は学校へと向かった。
「も、もう走れない……」
何も食べてない事に気付き、走って数分で息を切らしてしまう。遅刻はしないが、頭が上手く回らないのは美紀にとって痛手である。
「食事は健康診断が終われば出来るけど、水すら飲めないのは辛過ぎる…… いくらなんでもキツいよ〜」
愚痴をこぼしつつも学校へ辿り付き、やっとの思いで教室へ入る。
途中で何人かに挨拶されたが、ぐったりしている美紀には全く聞こえなかった。
「やっと健康診断が始まった……」
空腹に耐え続け、やっと出番が訪れた。美紀は部屋を移動する前にトイレへ向かって行く。
「やる事をする前に、ちゃんと体調確認もしないと……」
身体の調子を徹底的にチェックし、正常なのを確認してからトイレを出た。
「ふぅ〜、これが終わればやっとお弁当が食べられるね。そう思うと希望が湧いてきた‼︎」
手を洗い、ハンカチで手を拭いて水を一口飲む。
「よしっ、行こう‼︎」
「それじゃあ女子の皆さんは順番に来て下さい」
美紀の健康診断が始まり、席に座る。医師の話を聞きながら診断を進めていく。
「えぇではまず、診断前に何か食事したりしていませんか?」
「いいえ、何も食べてません」
「では、水を飲んだりは?」
「いいえ、それもして…………」
美紀は固まった。ついさっき水を飲んでしまった事を思い出して。
「……飲みました」
その後美紀は特に何も無かったが、割とダメージを受けてしまった。




