第61話『海外少女が変態でした。』
昼休みになり、かなえとお話する為にいつもの様に隣の教室に行こうとした美紀。しかし今日はかなえがいる教室には一箇所に人だかりが出来ていた。
「なんだなんだ? あそこってかなえの席だよね……」
周りの人が邪魔で見えない美紀は、近くの人に話しかけた。
「ねえ、どうしてかなえの席に人だかりが?」
「あぁ、転校生が来たからだよ」
転校生。その言葉に美紀は強い好奇心を刺激された。
「ちょっと、私も見たいんだけど……」
美紀は人混みをかき分けて、やっと転校生の姿を拝む事が出来た。そこにいたのは……
「おっと、外人さんだ」
煌く金髪、白い肌、気品のあるオーラ……
まさに海外からやってきた美少女だった。
海外からやってきた彼女、レミ・ハンニバルことレミは昼休みからずっとかなえとくっついていて話しかける機会が無いまま放課後を迎えてしまった。美紀はそれでも諦めずに後をつけた。
“かなえとやけに仲が良いけど、前に会った事があるのかなぁ……?”
色んな予想を立てながら追跡していると、レミの話し声が美紀の耳に届いた。レミの声は少し幼さが残った声だが何処か色気も感じる不思議な声。
美紀はレミを雲の上の存在として見ていると、かなえが少し困った表情を見せ始めた。
“あっ、レミがかなえの手を引っ張って何処かに行こうとしてる。何処行く気なんだろう……”
かなえを引き連れて行った先には焼肉屋。まさかの堂々寄り道外食だった。
「えっ、何故に焼肉⁉︎」
レミがかなえを半ば強引に引き連れて入った焼肉屋に美紀も入り、店員の案内で二人とは三席程離れた席に座った。
早めに肉を注文し、レミ達の話し声に聞き耳を立ててみたが……
『〜〜〜〜‼︎』
焼肉の音、会社帰りの大人達、そして既にお酒が入って盛り上がっている大人達の話し声にかき消され、何も聞こえなかった。
話し声を聞くのは諦めて、一人でササッと食べて店を後にした。
「な〜んか引っかかるんだよなぁ〜……」
レミの事について少し疑問を持ち始めている美紀。昨日は焼肉屋で肉を食べるというかなりインパクトに残る第一印象を受け、昨夜はレミの事が気になって眠れなかった。
「あの子は一体何者なんだろう…… 悪の回し者じゃないよね?」
そうこう考えている内に昼休みのチャイムが鳴り、そのチャイムと同時に美紀は早速レミがいる隣の教室へ向かった。
今日もレミはかなえと一緒にいた。やっぱりレミはかなえがお気に入りらしい……
「さて、どう話しかけようか……」
無難に話しかけるのが安全だが、美紀はあえて別の印象を与える事にした。
“かなえの後ろに回り込んで……”
かなえの脇腹に手を構え、柔らかい部分に指を食い込ませた。
「ひゃっ……!」
かなえがビクッと反応した。それと同時に美紀はかなえの背後からヒョコッと顔を出してレミの目を見た。
「初めまして〜、私は伊藤 美紀。隣のクラスの高校二年生だよ」
「は、初めまして…… レミ・ハンニバルです」
レミに自己紹介を済ませ、かなえに話しかける。
「大丈夫? 感じてない?」
「か、感じたかどうかは分からないけど…… まぁ大丈夫、かな」
ムズムズが残っているのか、まだ脇腹を抱えて座っている。
「ねぇかなえ、レミとは前から会ってたの?」
「うん、たまたま転校前日に会って以来仲良くなったんだ。昨日は焼肉に誘われたし……」
「へぇ〜、焼肉かぁ……」
あの時自分もいたとは、あえて言わずに話を続けた。
「で、その時のレミってどんな様子だった?」
「あの時は……」
レミが大量の肉(しかも上物ばかり)を注文し、かなえは一皿分に対しレミは五皿分の肉を一人で平らげた事を伝えると、美紀はレミの男子顔負けの肉食っぷりに少し引いていた。
「あぁ、やっぱりレミちゃんって普通じゃないのかな?」
普通じゃないとは思うが、かなりの大食い女子は増えている。今の時代は大食い女子は普通とは言いにくい。それを踏まえて、
「全ッ然、普通じゃないよ。レミは肉好きの女子なんだよ」
「うん、それは自分で言ってたよ」
美紀はチラッと時計を見て、一旦引く事にした。続きは放課後にレミを尾行する事にした。
そして放課後、美紀はかなえとレミの後ろをバレない様に尾行を始めた。周りが見たら多少怪しい女の子に見えそうだが、美紀を知ってる人ばかりなのが幸いし、まだ誰も声をかけない。
「かなえを連れて何処に行くんだろう…… 今度は街から離れていくから家だと思うんだけど」
二十分程歩き辿り着いた先には、中くらいの大きさの賃貸マンション。そこにレミはかなえを連れて入って行った。
“うわ、このままじゃレミの事を知る事が出来ない……‼︎”
悩んだ末に美紀は勇気を出して前を歩き、二人に近付いた。
「あれ〜? かなえ、何してるのー?」
二人の尾行を諦め、瞬時に切り替え帰宅途中での偶然を装って話しかけた。
「あれ? 美紀の家って反対方向じゃ……」
「そういうかなえだって、家が反対方向だよね……」
お互いに訳の分からない会話になりそうな時、レミが笑顔で美紀を出迎えた。
「えっと、あなたは確か美紀さんでしたね……」
「あ、美紀で良いから」
「えっと…… ミキも一緒にどうですか? レミの家に案内しますよ!」
意外にもレミの家にあっさり入れてしまった。美紀はあまりにも簡単に入れた事に疑問を持っていた。
“おかしい、何故突然現れた私にまでレミは私を部屋に通したんだろう……”
レミの部屋はとても広く、三人家族が生活しても窮屈には感じない程に広く感じた。
“まさかレミ、女子供をとって喰う悪役なんじゃ……⁉︎”
「はい、お水だけど大丈夫ですか?」
レミから水を受け取り、まじまじと眺める。別段変わった雰囲気はなく、水道水だった。
「ねえ、かなえ……」
しかし、かなえは何の疑いもなく水を飲んでいた。
“え〜……”
飲もうかどうか悩んでいると、レミがテーブルの席について軽い女子会のテンションで会話が始まった。
「さてと、今日はレミの家に来てくれてありがとうございます。レミの事を教えてあげますよ!」
この部屋がレミの自己紹介の場になった事で、美紀にとってチャンスが生まれた。
しかし、お互いに譲り合うばかりで中々進まない。
「じゃ、じゃあさ……」
一番乗りはかなえ。
「ここに一人暮らししてるのかな……?」
“ナイス、かなえ‼︎”
「はい。レミは国から出て一人暮らしです! あ、でもお金はちょっぴり親から貰ってるのでまだまだですよ……」
美紀はレミの話を聞きつつも、何とか思い付いた質問を投げる。
「はい、じゃあレミはかなえに対して何か思う事ってある?」
「えっ、どういう事……?」
かなえの頭にハテナが浮かんだが、レミは自分の思いを言い放った。
「カナエさんを見てると…… 何だか食べたくなりマス」
『えっ……』
美紀とかなえ、二人はレミの発言に固まった。するとレミは突然かなえの頬を掴み、凝視し始めた。
「ちょ、ちょっとレミちゃん……?」
そして、
「いただきます」
レミはかなえの頬をかじった。
「…………⁉︎」
かなえは突然の行動に混乱し、
「おぉ、どうやらレミは変態キャラの様だね〜」
美紀は冷静に傍観している。
「ちょっとレミちゃん⁉︎ くすぐったいよ……」
「我慢だよかなえ‼︎ ボーナスタイムだと思って我慢して‼︎」
「ボーナスって、何の⁉︎」
「えっと〜…… 魔法少女の?」
「何かが違う気がするんだけど…… うぅっ!」
レミがかなえの頬をまたかじった。レミはまさかかなえを食べるつもりなのか、犬歯を突き刺している。
「かなえ、ドンマイ……」
「ちょっと美紀、諦めないで‼︎ レミちゃん、やめてよ…… 痛いからやめてよ〜‼︎」




