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巫女さんメモリーズ  作者: 華永夢倶楽部
第49話〜第60話
59/85

第55話『電話』

 家でのんびりと過ごす(しゅう)。今日は仕事が久々の休みなので、こうして部屋でゆっくりしている。

「ふぅ〜、今日はゆっくり出来そうだな」

 本棚から本を取り出して、しおりのページをめくって読んでいると、スマホから着信が入った。

「ん、誰だろう……」

 スマホの画面を見ると、「来宮(きのみや)」からの電話だった。秀は相手をするかどうか悩んだが、来宮の性格を考え電話に出た。

「はい、俺だけど?」

『久しぶりだな秀、元気してたか?』

 来宮がいつもと変わらないテンションで話しかけてきたので、秀は内心ホッとした。

「どうした来宮? もう寂しくなったのか?」

 秀は少しふざけた言い方で来宮に言ってみると、来宮が急に静かになった。

「……き、来宮?」

 秀は来宮の様子を察し、真面目なトーンで心配する。

『…………えぇ。一人だと寂しいので電話したんです』

“おっと、これはマジの発言だな……”

 来宮は前よりも素直になってきた。今は意見をぼかしながらも言う様になってきた。

 そんな来宮が「寂しい」と、秀に伝えた。

「分かった。俺も一人で暇だったから、お前の相手してやるぞ」

『ありがとう秀。せめて長電話にならない様にするから、最後まで私のそばにいてくれ』

「おぉ、いてやる」

来宮は今、恐らく心が暖かくなっているだろう。秀は何となく電話の向こうにいる来宮の様子が想像出来ていた。

『あのさ秀、この前一人で動物園に行ったんだ。給料である程度お金が入ったからな』

“おっ、一人で動物園に行ったのか。来宮も随分と大人になったなぁ……”

『そこにいたペンギンが可愛いかったんだ! もぐもぐタイムになると、もっと可愛かったんだ!』

“やっぱり来宮は子供だった……‼︎”

 ペンギンを前に大はしゃぎしている来宮を想像して、頭を抱えた。

『なぁ秀……』

「なんだ来宮?」

『ペンギンが社会で働く時代が来たら、世界は一体どうなっているんだろうか……?』

 かなりマジなトーンでアホみたいな質問をしてきた来宮に、やや引いていると、

『人間と共にペンギンが働き、人間の言葉を喋るペンギンに進化したら、この世界は劇的に変わると思うか……?』

 来宮の声には一切のウケ狙いがなく、純粋に秀からの答えを待っている。

 秀はなるべく来宮のテンションに合わせようと、それなりのセリフで答える。

「そうだな。劇的に変化はしなさそうだが、闇に満ちた社会に抵抗する事なら出来そうだな」

『皇帝ペンギンならぬ、抵抗ペンギンですか。なかなか面白い発想をしますね、秀は……』

「今のどこに面白さがあったんだよ……」


『そういえば、秀は仕事休みなんですか?』

「いや、今更気付いたのかよ‼︎」

『えぇ、てっきり休憩時間の合間に話していたのかと……』

「だとしたら、時間的におかしいだろ。まだ朝の十時だぞ?」

『そうですね、秀の仕事場はもっと後に休憩時間があるんでしたね。まぁ、私と職場が同じなので粗方スケジュールを知ってますが……』

「知ってて言ったのか……?」

『いえ、先程の発言は本気でしたが?』

 本当なのか嘘なのか。この発言に対して疑問があったが、無視して話を進める事にした。

『それよりも、聞いて下さい秀。私の給料が上がったんですよ! これは栄誉ある褒美です!』

「おお! やったな来宮! お前もついに真面目な働きぶりが認められたのか〜」

『当たり前ですよ、我の存在は如何なる人間の目にも映る存在。影の濃さなら誰にも負けませんよ!!』

 まぁ、間違った事は言ってない。

 どちらかと言うと、来宮の言動が影の濃さを決定付けているのだから。

『なので秀、もしお互いに余裕が出来たら…… その……』

 急に来宮がモジモジしだした。言うのが恥ずかしい事なのだろうか?

「なんだ、来宮? 言えそうか?」

『いっ、言えますよ……!! その、秀? もし、もしですよ? お互いが休みの日でお金に余裕があり、そして今よりももっと深い絆に結ばれた暁には…………』

 来宮は勇気を精一杯振り絞って、自分がしたい事を告白した。

『い、一緒にどこか遠くに行きたいです……‼︎ 駄目でしょうか……?』

“俺と「デートがしたい」って事か……”

 思えば、二人は学生時代に両思いになったが、デートをした事が一度も無かった。

「……おぉ。お前と一緒に、どっか良いトコ行こうな」

 しばらく来宮は無邪気な喜びの声を上げ、

『えぇ! 一緒に旅行しましょう!』

 嬉し泣きをしながら答えた。

『あわよくば、秀と一緒にお風呂に入れるホテルが良いです……』

「分かった分かった。知らない人とお風呂入らないんだろ? 今度二人で入れるホテルを探そうな」

『秀が望む場所なら、私は何処へでもついて行く覚悟はありますよ?』

「いや、共倒れだけはしないでくれよ?」

『えぇ、分かってますよ。では秀、私はもう寂しくないので切りますね。それではまた会おう』

 来宮からの電話が切れた。秀はスマホの画面を見ながら、

「そういえばアイツ、北海道に行きたがってたなぁ……」

 修学旅行の準備中、来宮が「自然を楽しみ、自然の中で夜を過ごしたい」と言っていた事を思い出す。

「いつか来宮と一緒に、北海道に行けたら楽しいだろうなぁ…………」

来宮「……………………」

(気分が最高潮に到達する)

来宮「いやぁーーーー‼︎ 言っちゃいました‼︎ ついに言ってしまいましたよ‼︎」

(ベッドの上で大暴れする来宮)

来宮「秀と初めてのデート…… これは運命の選択なのだろうか……?」

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