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巫女さんメモリーズ  作者: 華永夢倶楽部
第49話〜第60話
56/85

第52話『夜中に目覚めてしまった少女のお話』

 ある日の夜中零時。神社で暮らす一人の少女の名は美紀(みき)

 彼女は今、突然目が覚めてしまった。

「な、何故このタイミングで……?」

 トイレで目覚めたとしても、少し証拠としては弱く当てにならない。かといって地震が起きたわけでもない。

 美紀は地震の揺れで起きるタイプだけど、今は全く揺れていない。

「どうしよう、全然眠くない……」

 不思議なくらいに目が覚め、外を走っていられる程。けど、それをするにはいくつもの壁がある。

 乗り換える為にあるのが壁だが、乗り越えてはいけない壁もある。

 それを美紀はよく分かっている。

「とりあえず、トイレに行こうっと……」

 部屋から出て真っ暗な廊下を歩いてトイレを目指す。美紀はたまに夜の廊下を歩くが、まだまだ夜中の廊下は歩き慣れてない。

 流石に一人で歩くのは怖かった。

“でも、頑張って来たからさっさと終わらせよう……”

 トイレを済ませて出ると、少しだけ変な感じがした。美紀は辺りを見回してみたけど、誰もいない。

「おっかしいなぁ〜、今は私しかいないはずなのに……」

 あんまり深く考えると怖い思いをしそうだった美紀は、無視して過ぎ去る事にした。


 眠くない事を活かして、深夜番組を観る事にした。

 いつもなら観る事自体がレアになった深夜番組は、相変わらず独特の雰囲気が漂っている。

 ただ、音を出してないから何を言ってるのか分からない。

「もうイイや……」

 テレビの電源を落として、美紀は他の事をする事にした。


 たとえば、夜中の東京を眺める。これは夜中まで起きてないと出来ない。

 周りは一般住宅ばかりなので、電気が着いてる家はほとんどない。でも、それが一番日常の大切な一ページになっていた。

「いや〜、平和だなぁ〜」

 夜景を見ていく内に、少し涙が出そうになった。

“みんな寝てるのに、私だけ寝てないとか……”

 外の風に当たっている時、ふとお腹が空いている事に気付いた。

「うっ、何か食べたい…… でも夜食は余計に胃が反応しちゃうし、味が違って楽しめるし……」

 自分へのデメリットを考え、どこか嬉しそうに保存食入れからインスタントラーメンを取り出した。

「まぁ大丈夫でしょ。なんてったって私は普段から頭を使ってるからカロリー消費が高いもんね!」

 そんな根拠のない考えでお湯を入れ、三分待つ。

「あぁ〜、ただ今ラーメン界に高温の水が津波となってやって来ました〜。突如として訪れた大災害に、伝説の勇者ラーメンが立ちはだかる!」

 もはや壊れたかの様な思考で妄想をしだす美紀。

 美紀の頭の中が心配になってきた。

「ここで勇者ラーメンが持つ能力を説明しよう! 彼の能力は『吸水』! 水分を自身に吸い取り美味しく仕上げる事が出来る!」

 この光景を一言で例えると、美紀は変なテンションになっている。

「だが、ラーメンだけでは力を最大限に発揮出来ない…… しかし、そんなラーメンに多数の仲間が現れるのだ!」

 しばらく美紀の妄想に付き合ってくれると、ありがたいです。

「かやく、参上!!」

 かやくを振りかけながらカッコよくナレーションする。そして次にお湯を入れる為にポットの下に置く。

「ラーメンとかやくの前に現れた悪の組織のボスであるポットの部下達が、ラーメン達を追い詰めるっ!!」

 お湯を入れて三分待つ…………

「くっ…… 俺達は、こんな事で諦めない……!!」

 ふやけて反り返ったふたを重りで抑え、残りの時間を過ごす……

「俺はラーメン、お前達には絶対に負けない……‼︎」

 もうすぐで、美味しいインスタントラーメンが食べられる……

「行くぞ! 見てろポット、これが俺達の力だぁー‼︎」

 ふたを開けて、箸を深く刺して麺を沢山すくう。それに息を沢山吹きかけて口に入れる。

「熱っ‼︎」

 まだ熱かった。

 もう一度息を何度か吹きかけ、口に入れる。

 今度は食べられる熱さになってて、美味しかった。

「…………」

 作っている時はあれだけペラペラ喋っていたはずなのに、いざ食べる時は黙っている。

 でも、心の中では……

“ポット…… お前は私と共に地獄に行く覚悟はあるか……?”

“バカめッ‼︎ 自爆する気か⁉︎”

“あぁそうだ、例えこの命尽きようとも、正義の魂は不滅ッ‼︎ お前達悪には決して折れない強靭な魂が、この星の人達にはある……ッ‼︎”

“待てッ、ヤメロ‼︎ グォォォォ‼︎‼︎”

「ごちそうさまでした」

かやく一つ残さず完食して、軽く洗ってゴミ箱に捨てた。


 ようやく眠くなってきた美紀は音を立てない様に歩き、部屋に入った。そこで寝ているのは神社に住む巫女の小夜(さよ)

 そう、美紀はわざと小夜の部屋に入った。

「えへへ〜、小夜ちゃんが起きたらビックリするだろうなぁ〜……」

 そんな期待をしながらそっと布団に潜り込み、寄り添う様に眠った。


「うぅ…… また美紀が来たかぁ……」

 今夜も美紀が自分の部屋に入っては、勝手に布団に潜って眠りに来た事を知ってる小夜。

「もう…… これ女性向け恋愛漫画みたいな展開になってるじゃん……」

 美紀としては、朝目が覚めたら隣に知らない人が寝ていて驚く。そんな展開を期待していた様だが、小夜は熟睡していても物音一つで目覚める体質なのを美紀は知ってて何度もやっている。

 そして、小夜は一応このリアクションをとる。

「いつの間に美紀が……⁉︎」

 完全な棒読みではなく、かなり本気のトーンで美紀を喜ばせた。

 美紀には全く聞こえていないが。

小夜「はぁ…… 美紀の所為で目が覚めちゃった……」

美紀『えへへ〜……』

小夜“あっ、美紀が寝言を言いそうだ”

美紀『小夜ちゃんを食べたいなぁ〜』

小夜“…………”


小夜“私を食べても美味しくないから……‼︎”

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