第49話『家で遊べる事って沢山あるよね?』
「外出が出来なくなっちゃったけど、神社でも出来る遊びをしよう!」
部屋からトランプを持って来た美紀。小夜が答える前に美紀はトランプを配り、手札を手にした。
「ところで、何して遊ぶの?」
「ババ抜き!!」
美紀はジーっと小夜を見つめてくる。小夜が場所をずれると、美紀は視線を小夜に合わせて、
「ババァ抜きをしよう!!」
その後何回対戦をやっても、美紀は一度も小夜に勝てなかった。
「そもそもトランプを二人でやるのはつまらないよね。もっと一対一が盛り上がる遊びをしよう」
トランプを部屋に片付けた美紀は、座布団二枚を真向かいになる様に敷いた。
「と言うワケで、叩いて被ってジャンケンポーン!!」
ピコピコハンマーとヘルメットも用意した美紀は、早速座布団の上で正座した。
「ルールは言わなくても良いよね? じゃあ始めるよ」
小夜の手に目をやりながら、ジャンケンを始めた。
「叩いて被ってジャンケンポン!!」
美紀が勝って、小夜が負けた。
「ハンマーで叩く……!!」
しかし、既に小夜はヘルメットで頭を守っていた。
「早ッ!!」
美紀は叩くのをやめて、次のジャンケンに入った。
「叩いて被ってジャンケンポン!」
今度も美紀が勝った。
「はい叩くッ!!」
もう小夜はヘルメットで防御していた。というか、既にしていた。
「小夜ちゃんズルしてないよね!?」
「うん、してないよ。美紀がちゃんと見てないから不正を疑うんだよ?」
美紀はムッとなった。そこで言われた通り次のジャンケンは負ける事を前提にして、小夜の頭を注意深く見てみる事にしてみた。
「叩いて被ってジャンケンポン!」
何故か美紀が勝った。ここぞとばかりにハンマーで小夜を叩こうと振りかぶった。
そして、小夜はもうとっくにヘルメットで頭を守っていた。
「だから無駄な動きが多いんだって……」
美紀はジャンケンで小夜に勝てないと確信した。
……はずだった。
「ふふふ……」
何故か美紀は諦めてなかった。それに、目つきも悪い。
「まだだよ、私はジャンケンをやめてないからね……!」
美紀は右手を突き上げ、ジャンケンを始めた。
「最初は––––」
「『エックス』?」
美紀は右手を下ろす直前で手を止めて、やり直した。
「最初はグー……」
「『その次パー』?」
…………。
「う〜〜〜〜……」
小夜が次々と先を読んで行動するので、美紀は段々といらついて……
「グー、チョキ、パーンチのグー!!」
小夜に拳をお見舞いした。
「パー」
小夜は美紀の拳を握って、勢いを止めた。美紀はもう勢いを無くし戦意喪失した。
「ダメだ…… 小夜ちゃん相手にジャンケンはダメだ。もっと良いのにしよう」
そう言いながら、美紀は別の遊びを考えた。しばらく考えて、何か思い付いたのか物を取りに向かった。
しばらく待たされた小夜の前に現れた美紀。美紀の手にはプラモの箱。
「一緒に作ろう!」
それから数十分、小夜も美紀も黙々と作業に徹して作り上げた。
そして二人はプラモを完成させた。
「出来たね〜」
「出来たね〜」
特に盛り上がったりはしなかった。
「参拝客が来ないから、しばらくは小夜ちゃんもヒマでしょ?」
「そんな事はないよ。御札を作ったりして、いつでも参拝客のお参りをお待ち出来る様にしないと」
小夜は墨汁と和紙を用意して、御札を作り始めた。美紀は小夜が作った御札の仕上げを担当して、二人で御札を完成させた。
それからしばらくして、いくつか作った御札を棚に置いて準備は万端。
後は参拝客に配布するだけ。とは言っても、今は誰も来ないので小夜も暇に感じてきた。
「やる事がない……」
とうとう小夜は感情を素直に出してしまった。
「ほら、やっぱヒマでしょ? でも珍しいね。小夜ちゃんがヒマになるって」
巫女である以上、休みがほとんどない事を前提に務めるのが普通だが、今はそれどころではない。
小夜が本格的に自由になった、貴重な瞬間である。
「じゃあさ、次はあっち向いてホイをしようよ!」
「良いね、じゃあ今すぐしよっか」
小夜は美紀と向かい合う様に座り、遊ぶ準備を整えた。
「よーし、じゃあ始めるよ」
美紀は小夜を見つめながら右手を構える。小夜も美紀を見ながら左手を構える。
「ジャンケンポン!」
美紀が勝った。
「あっち向いてホイ!」
小夜は微動だにしない……
「ジャンケンポン!」
今度は小夜が勝った。
「あっち向いてホイ」
美紀は小夜の指から逃げ、振り切った。
「ジャンケンポン!」
次は美紀が勝った。
「あっち向いてホイ!」
勢いよく指を流したが、小夜は微動だにしない……
「動いてよ!!!!」
美紀は涙目になりながら小夜をわざとらしく怒った。
「やっぱりダメだ。小夜ちゃんはいつボケるか分からない…… じゃあ次はにらめっこ! 一人ずつ一回勝負をやって、笑ったら負けだよ」
お互いにどんな変顔で笑わすか、目を見てから作戦を練る……
そして、最初は美紀が小夜を笑わす番。
「にらめっこしましょ、笑うと負けよ。あっぷっぷ!」
アニメや漫画で覚えた背脂の真似で勝負を仕掛けた。
しかし、小夜の表情は全く変化しない……
「やっぱり!!」
美紀も薄々と、小夜に勝てないと分かっていた。
「じゃあ今度は私が……」
小夜は美紀の前で自分なりの変顔を披露した。美紀は小夜をジッと見つめ、小夜の真面目な変顔に段々と笑いが込み上げてきた。
そして、遂に吹き出してしまった。
美紀の負け確定。
「小夜ちゃん、それはズルいってー!!」
美紀はまだ笑い続けて、しまいにはツボってしまった。小夜は美紀がツボる様子を見て困っている……
「そんなにおかしかった……?」
「おかしっ、おかしい……ッ!!」
段々と美紀は落ち着いてきて、立ち上がって小夜を見る。
小夜は美紀を普段の表情で見ていると……
「あはははは!!」
また美紀に笑われてしまった。
美紀「小夜ちゃんって、いつも変化球でボケてくるよね。そもそもボケる時がないから耐性がないからかもしれないけど……」
小夜「今のはボケた訳じゃないんだけど……」
美紀「じゃあ小夜ちゃんは天然ボケだね。だから小夜ちゃんは無敵だよ」
小夜「無敵、かな……?」




