第48話『美紀と御守りと参拝者』
「ついに! 私は高校二年生になったよ!」
小夜の前でカレンダーの四月七日を指差し、入学式を終えた事をアピールする新高校二年生の美紀。
また一つ、大人に近付いた。
「おめでとう美紀。色々あったけどよく耐えたね」
「ふっふっふ… 私はもうあの頃の私じゃないからね。ちょっと強くなったんだよ!」
ドヤ顔で誇る美紀。小夜はこのお調子者を普段通りに見ながら昼食を作ろうとした時だった。
境内に参拝客が訪れたのだ。
「あっ… 私、行って来るね」
そう言いながら小夜は台所から出ようとしたが、美紀が小夜の手を掴んだ。
「いや、ここは私が行くよ。何もする事ないからね」
美紀が境内に行くと、そこには最近会う様になった女の子がいた。
「あれ? どうしたの?」
女の子は美紀の声に反応して、顔を上げた。
「み、美紀おねーちゃん……」
すると女の子は手の平からお金を見せて、ピッと御守りを指差した。
「おまもり! おまもりちょーだい!!」
美紀は御守りの方を一度見て、「ん?」となった。
「えっと… 御守は、どんなのかな?」
女の子は涙目で答えてくれた。
「あのね、おべんきょうが出来るようになるおまもり!!」
「学業成就御守だね。はい、どうぞ」
「ありがとう美紀おねーちゃん!」
女の子は笑顔で御守りを受け取った。
「ツバサちゃん、ようこそお参り下さいました」
「ん? 何で『ありがとうございます』じゃないの?」
ツバサは巫女の挨拶に疑問を持った。しかし、美紀は前にツバサに巫女のいろはを教えたはずだが……
ツバサはどうやら忘れてしまっている様だ。
「あのね、御守はただ売ってるんじゃないんだよ? 御守には神様の力があって、それを参拝者に配ってるんだよ。だからね、参拝者には御守を求めてくれた事に対して感謝をするんじゃなくて、この神社に訪れてくれた事に対して感謝をするんだよ。だから『ようこそお参り下さいました』なんだよ」
美紀なりに簡単に説明したつもりだったが、まだまだ難しかったらしく……
「…………??」
ツバサにはしっかり伝わらなかった。
美紀は悩みながらもっと簡単な説明を考えてみた。
「その〜… 巫女さんは他のお仕事とは少し違うって事だよ!」
美紀はもう説明を諦めた。
「そういえば、ツバサちゃんは一人で御守を買いに来たの? もしかして、お父さんお母さんに内緒で来たとか?」
「ううん、ちがうの」
ツバサはモジモジしながら教えてくれた。
「あのね、ツバサ四月から一年生になるから…… おべんきょうが出来るように、神さまに見守ってもらうの!!」
どうやらツバサは小学校の勉強が分からなくならない様に、御守りの力を授かりに神社を訪れたらしい。
「そっかぁ〜… お勉強頑張ってね、ツバサちゃん!」
「うん! ツバサがんばる!!」
ツバサは神社を後にした。美紀はツバサが見えなくなるまで手を振った。
「ふぅ… 上手く出来たかなぁ?」
美紀にとって久しぶりになる御守り配布なので、小夜からOKを貰えるか不安だった。
“小夜ちゃん、今のどうだった?”
小夜は料理を作っている途中だったが、一度手を止め美紀を見つめ…
グーサインを送った。
“よしっ……”
美紀は心の中で喜んだ。
次に美紀が担当した参拝者は、新社会人なのか「開運招福御守」を頂きに訪れた。
よく見ると、マスクはしていない。
「ようこそお参り下さいました!」
美紀は笑顔でそう言うが、裏では……
“どんな人相手でも笑顔…… 笑顔で……!!”
巫女をしている間は、マスクについて考える余裕はない。
そして参拝者が神社を出てから、美紀は通常モードに入った。
「小夜ちゃ〜ん、マスク出来ないの辛いよ〜!」
小夜は昼食をお皿に盛り付けながら美紀の辛さを受け止める。
「そうだね… 身なりについてどんな理由も許されないのは、神職の少し融通の利かないところだよね…… これは最悪、アイドルよりも過酷だったりして……」
「う〜ん…… まだアイドルが一番かな」
小夜もアイドルの過酷さを美紀から教わってるので、まだまだ現役アイドルには敵わないと二人で思った。
お昼を過ぎた頃に、また一人参拝者が訪れた。また美紀が担当に行くと、そこには顔見知りの人がいた。
「やぁ美紀、また会ったな」
高校を卒業したばかりの来宮 めぐみ。
ハンカチを口に当てたまま喋り始めた。
「長く苦しい人生を耐え抜く為にも、沢山の命綱を張ろうと思ってな……」
「なるほど… それでここの神社の御守をですか……」
美紀はチラッと無病息災御守りを見て、来宮を見る。
「なぁ美紀、仕事関係の御守りはあるか? 私は一昨日、仕事の内定を取り消されて無職なんだ……」
来宮はどうやら次の職場に採用出来る様、神様のお力を借りに来たらしい。美紀は来宮のお納め料を受け取り、就職成就御守りを配布した。
「ありがとう美紀。これで次の採用を頑張るよ」
来宮は深くお辞儀して神社を後にした。さっきの来宮を見て美紀は、
“なんか厨二が少し抜けてる…… 変わったなぁ〜……”
卒業した来宮のちょっとした成長ぶりを感じていた。
夕方、美紀は御守りを置いている場所にやって来た。
そこに新しく作った御守りを置いて、立ち去った。
「お疲れ様、美紀」
小夜がねぎらいの言葉をかけてくれた。美紀も小夜にねぎらいの言葉をかける。
「一緒にお風呂に入るよ」
「うん、入ろう」
今日の疲れを癒す為に、小夜と美紀はお風呂へ向かった。
美紀「神様お願いします‼︎ いつでも色んな事が出来る許可証を下さい!!」
小夜「それは出来ん」
美紀「何故ですか!?」
小夜「著作権に引っかかるからだ」
美紀「うわぁ、メタ〜い……」




