第45話『たまには散歩しないと』
「行って来まーす!」
「行ってらっしゃい」
あちこちで分散登校が始まる中、美紀が通う学校はまだ登校出来ない。
「外出を自粛してほしい」と政府が宣言したのは皆知ってるが、ずっと外出しないのも問題だ。
そう思った美紀は、今日もまた散歩として外へ出る。
「神社にこもって生活なんてしてたら体が弱っちゃうよ。時々外を出て運動しないとね」
神社に運動器具が無いので、境内で出来る運動と言ったらサッカーや鬼ごっこくらい。
小夜の用事で遊べない時は、こうして一人で外へ出る。
「どこ行っても休んでるから、歩いてすぐ終わりだろうなぁ……」
映画もゲームも食事処も休んでる事を前提に市街地を歩いていると、トートバッグを持って歩く二人の少女が美紀の前で歩いている。
「おっ? あの子達は……」
美紀が通う学校の同級生だった。二人で楽しそうに会話しながら何処かへ向かっているところだ。
「おーい! かなえー! 希望ー!」
美紀の呼びかけに反応した二人は、美紀を見て手を振ってくれた。
「久しぶりだね〜、今日は二人揃ってお出かけかな?」
「うん。希望と一緒にちょっとお泊りにね。美紀は買い物…… じゃなさそうだね」
「うん、買い物は昨日したからね。私はね、意味のない散歩なんだよ。どうせ何処も開いてないから…」
そこへただ聞いていただけの希望がうなずきながら割って入る。
「だよね〜。私もアキバのゲーセンなら開いてるだろうと思って行ったら––––」
「閉まってた、とか?」
かなえが突然オチを予想する。
「いや、開いてたんだよ」
「開いてたんだ……」
かなえの予想は外れた。しかし、美紀は最近アキバのゲーセンに行ってたのでオチが分かっていた。
「でもね、高校生以下のお客様の入店制限がかけられてたから入れなかったんだよ。だからそのまま家に帰ったんだ…」
その後、希望は家にあるゲームで一日を過ごしたらしい。
「それじゃあ、私達そろそろ行くね。またね美紀」
「行ってらっしゃーい!」
「アイルビーバック!」
希望はキメ顔でそう言った。
美紀は手を振りながら、
“この時期に宿泊……? 大丈夫かな…?”
二人の行く末を見守った。
「さて、結構歩いたなぁ… そろそろお昼を食べようかな〜…」
辺りを見回して開いてる店を探す美紀。すると、まず一軒開いてる店を見つけた。
その後、あちこちで見つけたが休んでるお店もあった。
「よし、あそこでお昼を食べようっと!」
昼食を終えた美紀が次に行きたい場所を歩きながら考えている時、ふと小さな公園に行こうと考えた。
突然頭に出てきた場所なので、理由も分からないまま公園に向かった。
「とりあえず来てみたけど… まぁ、誰もいないよね…」
とりあえずブランコで遊んでみる。
『キーコキーコ…』
振り子の様に振りを大きくして、激しいブランコになってくる。
「そして、勢いを付けて…… とうっ!!」
ブランコが前に振られたタイミングで、ブランコから飛び出す様に手を離し、そのまま前へ飛び出し綺麗に着地した。
「ふふ〜ん」
「おぉ〜」
いきなり女の子の声が聞こえて、ビクッとして前を見る。
目の前には、幼稚園児または小学生低学年に見える女の子。
コロナが流行ってるのに外に出てるのは流石におかしい。
美紀はその子が心配になった。
「ちょっと、キミはこんな所にいて良いの?」
幼女は特に嫌な顔をせずに、美紀の質問に答えてくれた。
「だいじょうぶだよ。ツバサは元気だもん!」
元気。
マスクもしてないし、咳もしてない。
確かに元気だ。
「そっか… じゃあ、ここに遊びに来たの?」
「ううん、悪い人をやっつけにきたの!」
ヒーローアニメの影響だろうか。幼女はどうやら正義の味方になってる様だ。
「ん〜、その悪い人を見つけたらどうやってやっつけるの?」
「こーやって、『えいっ!』ってして大人しくさせる!!」
分かりづらい。
「おねーちゃん、悪い人いたら教えて。ツバサがやっつけるから!」
「分かった! 悪い人がいたら教えるね! …で、どうやって?」
すると幼女はスッと指を出し、近くに建つマンションに向けて指差した。
「ツバサの家あそこ! こんど会ったら教えるね!」
まさか家に入れるとは。
まだ決まった訳ではないが、ここまで疑いなく家の情報を教えてしまうのも、美紀にとってこの子の将来が不安になってきた。
「あ、あのー…… 私、この近くに住んでる人じゃないんだよ。もっと遠くにある神社の巫女なんだけど……」
「神社って、八王子でしょ? ツバサ知ってるよ」
“えっ…… 知ってるの!?”
この子は予想よりも詳しく、しかも美紀のいる神社の場所を的確に当てた。
「だってツバサね、この前おねーちゃんと遊んだもん」
「私と……? 遊んだ?」
今一度思い出してみる…
この前… となると、幼稚園児が神社に訪れた日だろうか。
美紀の事を呼び捨てにされた事を思い出すが……
「あぁ〜、ハイハイ」
確かにいた。
「ね? いたでしょ?」
「うん、いたね」
美紀は色々考えたが、
「あ、ほら。そろそろお昼が終わるよ。そろそろ家に帰った方が良いよ。ヒーローだってご飯を食べないと体が動かなくなるんだよ?」
「うん! じゃあもう帰る! 美紀おねーちゃん、またねー!」
「またねー」
家に帰って行く幼女を見送りながら、美紀はさっきのセリフに「ん?」となった。
「あれ? 今あの子、私の名前呼ばなかった!?」
「おかしい……」
美紀は今までの出来事を整理する。プライベートであまり会わない人と会うし、一回限りの出会いを覚えてる幼女と再会したり。
何かの伏線なのかと疑う程にやたらレアな出会いが起きた。
“あれ? 私、別の世界線に来てたりする…!?”
それはそれで、事実上美紀の知らない世界なのは少し嬉しくなった。
“いや、やっぱり元の世界に戻りたい……”
しかし、何か自身に不幸がやって来た訳でもないのに別の世界に来る事はあるのか?
だとすると、やはりここは普段からいる世界。ザ・ワールドだろう。
「そうそう、あまり会わない人に沢山会ったから混乱しただけでしょ。何かしらの奇跡が合わさって出来た偶然なんだよ!」
散歩を続ける美紀。出来ればもう誰にも会わない事を願って……
神社へ帰りながら美紀は考える…
“いつもは会わない、かなえや希望に会うなんて… 私、なんかヘンな感じがするんだけど…!?”
流石におかしいと感じた美紀だったが、帰りは特に誰にも会わずに神社に帰って来た。
「ただいま〜」
「おかえり美紀」
小夜の声だ。
どうやらここには小夜に用があるお客様はいない様だ。
「いや〜小夜ちゃん、今日はスゴかったよ。友達に会ったんだよ」
「この時期に? 急用かな…?」
「多分違うね。ここからは私の予想なんだけど……」
美紀は真剣な顔で言う。
「私、魔法少女に会ったかもしれない」
「…………」
小夜は美紀の予想で状況を理解して、ある答えに行き着いた。
「そう… だとすると、美紀はラッキーだね」
「そうだね。現役魔法少女に会うなんて、都市伝説の真実を見つけるくらいスゴイからね」
小夜と美紀でワイワイ話し、魔法少女っぽい子の話もして、美紀は答えを出した。
「…つまり今回、宣伝回!?」
かなえ「私達魔法少女が悪と戦うアクションWEB小説『魔法少女は夢をみる』は隔月午後9時に掲載!」
希望「私の魔法で、悪者はみーんな傷一つつけずやっつけてやるよ!!」
美紀「ちょっと!! ラストコールを取られたんだけど!?」




