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巫女さんメモリーズ  作者: 華永夢倶楽部
第25話〜第36話
34/85

第32話『牛丼』

 「あぁ〜疲れたー! やっと今年の部活が終わったよ〜!」

学校帰りの道中で伸びをするのは高校一年生の美紀(みき)。隣には美紀の母親的存在の正統派巫女、小夜(さよ)

今日は小夜が学校の迎えに来てくれて、美紀はそれに対してとても嬉しくなっている。

 「それにしても、小夜ちゃんは今日どうして私の迎えに行こうと思ったの?」

 「それはね、たまには私から美紀を迎えに行こうかなって思って…」

 「え? じゃあつまり小夜ちゃんは部活を見に来たワケじゃないって事!?」

 「ごめんね… 部活は見てないんだよ……」

美紀は肩を落とした。

 「今日、ドリブルが上手く出来たのに… 小夜ちゃんに見てほしかったのに……」

小夜は美紀の肩をそっと撫でて、

 「ごめんね美紀。お詫びと言ったら何だけど、一緒に外食に行かない?」

美紀は目をキラーンと光らせて、ある店を指さした。

 「じゃあさ、あそこの牛丼が食べたい!」

小夜は場所を確認してから、財布に触った。

 「うん。じゃああそこで外食しよっか」

 「ぃやったー!」

二人とも、もうお腹ペコペコ。

牛丼で二人の夕食を楽しむ事にした。


席に座って、お互いがお互いを見合っている。

美紀は小夜の顔を見てはニヤニヤしている。

 「えへへ… 何だかデートみたいだね」

 「デートかぁ… まぁ、見えなくはないよ」

 「まぁさっきのは冗談だけどさ、そろそろ同性愛に対して世界はもっと本格的に取り組むべきだよ。本屋に行けばすぐに同性愛の本が売ってるくらいなんだから、子供達は知ってるんだよ? 小夜ちゃんだって怒ってるでしょ?」

美紀が熱演を始めた。今いる場所はやや狭いのに、美紀の声量は少し不安を感じる。

 「怒ってはいるけど… あの世界に対して、『気持ち悪い』とか『意味不明』って言ってる若者がいるからね… こういう現実を見ると、昭和の人より平成の人達の方が頭が固いんじゃないかな〜って思うんだよ」

美紀は少し控えめに小夜を指さし、

 「それは言えてるよ! 昭和の人は戦争を生き抜いた人達による工夫が目の前にゴマンとあったんだよ。それなのに平成の人達はそれを『前からあったモノ』としか見ないでさ〜! 何でもあるからこそ物の価値観が下がっちゃうんだよ!」

小夜は周りの視線を気にしながら美紀に、

 「あのさ、話題を変えない? 流石にここでこの話題はどうかと…」

美紀はすぐに落ち着き、

 「あ、そっか」

次の話題に入った。


 「牛丼は久しぶりに食べるね! 小夜ちゃんも久しぶりに食べるでしょ?」

小夜はメニューをパラパラめくりながら、

 「そうだね。もう二ヶ月は食べてないね」

すると美紀は財布をチラつかせる様に見せびらかし、ニヤッとした。

 「今日は私がおごろうか? 久しぶりのディナーだし…」

 「いや、私もお金を払うよ」

 「あ… そう…」

美紀は悲しそうな表情で財布をしまった。

 「なんか、ごめんね…」

 「ううん、平気だよ」

店員を呼んで、注文をする事に。小夜はメニューを見ながら、

 「うな牛丼を一つ。美紀は?」

美紀はメニューを見ずに、人差し指を天井に向けチョイキメ顔で、カッコつけた。

 「キング牛丼を一つ!」

注文する直前で顔を戻して、いつもの美紀で注文した。

小夜は周りの目を気にしながら美紀を心配した。

 「ちょっと美紀、キング牛丼なんて完食出来るの?」

 「大丈夫だよ! サッカーして疲れてるから食べ切れるよ。多分!」

 「多分って……」

小夜は美紀を不安な目で見た。爆盛りとまではいかないが、あの牛丼は完食が難しい料理の為、提供していない店舗もある程。

美紀はそんなキング牛丼を一人で食べるつもりの様だ。

 「いただきまーす!」

箸を構え、牛丼の中へ入っていった。一口分取ると、米と牛肉から綺麗な湯気がブワッと立ち上った。

 「あ〜んっと…」

口に入れてからフーフーして熱を冷ましつつ、久しぶりの牛肉をじっくりと味わった。

 「う〜ん… 美味しい!」

美紀が美味しそうに食べてる中、小夜の注文が届いた。

 「いただきます」

小夜も箸を手に取り、一口食べた。

 「……」

何も言わずに、心の中で「おいしい」と思っていると、

 「小夜ちゃん、美味しい?」

美紀がタイミングを見計らったのか、感想を求めてきた。

小夜は感想を全く盛らない様に、

 「うん、美味しいよ」

シンプルに答えた。

美紀は舌を火傷しない様に水を飲みながら、少しずつ牛肉と白米を食べる分だけ混ぜて、息を吹きかけてから口に入れて味わい、ほっぺを押さえた。

 「美味しいよ〜。こんなに美味しい牛丼が食べられて幸せだよ〜」

キング牛丼を一口、また一口と食べてはゆっくり噛んで、美味しく味わっていると、いつの間にか水が飲み干されていた。

 「あっ、おかわりしないとね。熱いのは食べられないからね〜」

次に食べる一口をフーフーしている間に店員が新しい水を注いでくれて、感謝を伝えてから水をクイッと飲んだ。

 「よしっ、また食べるよー!」

少し冷めたキング牛丼を相手に、美紀は少しずつ牛肉を食べている。

小夜は味噌汁を飲み終わっていて、美紀の「ごちそうさま」をずっとずっと待ってくれている。

 「ゴメン小夜ちゃん。まだ食べ終わらないから」

 「大丈夫だよ。私はちゃんと待つから」

 「あっ、でもトイレは行って良いんだよ? トイレは仕方ないからね」

 「じゃあ、早めに行っておこうかな」

 「行ってらっしゃい!」

 「う、うん… 行って来るね…」

小夜はトイレに向かいながら、

 “トイレに行くだけで大げさだよ…”


小夜がトイレから出て席に戻った頃には、美紀はもうほとんど残りが無くなっていた。

 「あっ、小夜ちゃん! もうそろそろ食べ終わるよ!」

 「早いね… じゃあそろそろお会計の準備をしておくね」

美紀は残り少ない牛丼を箸で食べて、食べて、食べて…

 「ごちそうさまでした!」

手を合わせて美紀は米粒一つ残さずに完食した。

 「さぁ! 急いで帰ろうよ!」

 「お会計は済んでるよ」

店を出て、身支度を済ませて帰る準備を終えた。

 「じゃあ、帰ろうか」

 「うん!」

次回掲載日  2019年12月29日 午後2時

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