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二話 入社式 ②

業務日誌2 ②


僕の家は自宅兼仕事場である5階建てのビルだ。


築100年くらいだとおじいちゃんが言っていた。1階は事務所、2階は倉庫、3階から5階が居住スペースで僕の家族は5階だけを使っている。3階4階はお客様用の宿泊スペースになっていて、一応部屋数的には1つの階につき5部屋あって、部屋も一人暮らしなら十分なスペースがあった。僕も子供のころプチ旅行と称して勝手に使って、怒られたものだ。掃除した時に懐かしい落書きを発見したが思い出もそこそこに綺麗にした。部屋割はどうしよう?やっぱり男と女は違う階の方がいいかな?後でみんなに聞いてみよう。


「さあみんな、ここが事務所だよ。」


一回の事務所は例えるなら郵便局の窓口だ。お客さんと僕らの間を大きな机があって、そこで運びたい荷物の大きさ、重さ、行き先を確かめてそこまでの運賃を計算する。運賃は国が大まかな基準を定めていて、僕らはそこにどれだけオプションを付けるかで他の配達屋さんと競っていた。まあうちにくるほとんどが常連さんだから新規のお客さんはあんまりいない。時々違う星から旅行に来た観光客がお土産を送ってくれと頼まれるくらいかな。


父がいなくなってから星間の配達は国直轄の業者にお願いしていたけどみんなが来てくれてこれでやっと星間の配達も再開できるぞ。みんなが落ち着かない様子で辺りをキョロキョロしていると、奥からおじいちゃんとお母さんがやってきた。


「いらっしゃい。君たちが"ふぃりっくす"のお友達かな?そしてどちらが"ふぃあんせかな"?ははは!!」


これが僕のおじいちゃん、ゲンジ・カッツェ。父方の祖父で、白髪だけど腰も曲がってなくて「親方」という言葉がぴったりのパワフルじいちゃんだ。歯がところどころ抜けていて僕の名前を呼ぶ時はいつも気が抜けたような発音になる。


「もうお父さんダメでしょ。これからうちで働くのに、まだ早いでしょ。でも・・どっちなの、フィル?」


僕のお母さん、エイミー・カッツェ。町一番の美人らしくお父さんと出会う前は言い寄る男は数知れずだったそうだが父はそんな母に見向きもしなかったそうだ。それでおかあさんが父を気になったのがきっかけで二人は出会い、母が父の懐の大きさに惚れたそうだ。


マホ程ではないが天然で、「ごめーんね!」と言って舌をぺろっとだしたりする。ちょっと恥ずかしい・・・。


ふと後ろでマホの手が肩まで挙がっていた。それを横目で見たアミィが神速の早さで手を上げた。


「あのーあれってなんですかー」


マホが壁に掛かっている変なタペストリーを指差した。


「あーーあれはな。うちのバカ息子がどこか辺境の星で買ってきたものなんだよ。あいつは昔から変なものを買ってくる癖があってな」


おじいちゃんが笑って言うと、横で手を挙げていたアミィを見て、


「あれ、もう親御さんに御挨拶ですか?ア・ミ・イー」


マホがニヤニヤしながらいった。


アミィの顔が真っ赤になった。


「ちちち違うわよ!!私もあのタペストリーが気になったの!!」


「あらあら」という母と大笑いした祖父をみてアミィは恥ずかしそうに縮こまってしまった。その後僕がみんなを家族に紹介して、マホとアミィが12の剣力者だと知った時とてもビックリしていた。そして僕はこれから一緒に働く5人を事務所の奥にある応接室に迎えた。テーブルが1つと1人掛けと2人掛けの椅子がその周りを囲んでいる一般的な応接室だ。


「じゃあまずこの紙にいろいろ書いてください。」


まず僕は改まって5人にちょっとした履歴書を書いてもらうことにした。内容としては基本情報から志望動機、これから何がしたいか書いてあった。それを5人に渡すとアキラがごそごそと何かを出してきた。


「班長。吾輩はもう書いてきたにゃ。これでよろしくお願いしますにゃ。」


一生懸命書いた履歴書を受け取り、僕の方が緊張してしまった。


「あ、ありがとうございます。え、みんなも?」


見ればそこには4つの履歴書が机の上に出された。ん、4つ?


「え、お前ら全員書いてきたの?聞いてねーーよーー」


「じゃあリューク。はい、これに書いてください。」


「はーーい。とほほ。いや書こうとは思ったんだけどちょっとまじめすぎるかなと思って・・・。すんません」


「会社に入るんだから常識でしょ。はい、さっさと書きなさいよ。」


アミィがペンを渡して書くように促した。


「じゃあリュークが書いている間にほかのみんなのを見させてもらいます。」


僕は出された4つの履歴書をとって上から確認していった。まずはウォールか。しっかりとした字体だね。文字の力強さがたどたどしい文体を気にさせないくらいだ。将来はっと。ほほー、「誰からも好かれる人間になりたい」か、うん。いいね。


次はマホっと。すっごい柔らかい字だな。志望動機は・・「アミィちゃんをからかいたいから」?やっぱり仲良いな。将来は、「金庫の番人!!」そこだけすごい筆圧だ。昔お金で嫌なことでもあったのかな?ずっと聞けなかったけど今度聞いてみよう。


次はアミィ。志望動機は「将来の自分の為に経験と言う名の自信が欲しかったから」おーー、さすが次期後継ぎ。でもある程度働いたらやっぱり離れていくよな。まあそこはしょうがないっか。将来は、「女だからって馬鹿にされない立派な人間」やっぱり今の御時世でも男尊女卑があるんだな。僕は正直男の我が儘だと思っていてなんだかんだ男は女の尻に敷かれるもの、悔しい男が強いところを見せようとその考えができたのだと思っている。


よーしじゃあ最後アキラ。ふんふん。将来は「料理人」か、うちでみんなのご飯作ってもらおうかな。ついでに食堂経営もしちゃうか?いや、もう少し考えよう。ん・・・あれ・・・性別「女」???へ?


「アキラ、ちょっと聞くけど・・・・・・女の子なの?」


僕が聞くと


「そうだにゃ!!これが吾輩の秘密の1つだにゃ!!」


「「「「「えーーーーーーーー!!!!」」」」」


みんな仰天した。いや、そりゃ驚くって。5年間知らなかったんだよ。


「あんた、なんで今まで黙ってたのよ!」


アミィが尋ねると、


「だってみんな尋ねてこなかったにゃ」


アキラが平然と答えた。


「だ、だって、吾輩っていってたし。どちらかと言えば男の子たちと話してたじゃん。」


マホが珍しく真剣に言った。


「吾輩はみんなに馬鹿にされない為に言ってただけにゃ。それに吾輩もマホとアミィと話したかったけど2人もあんまり話してくれなかったにゃ。」


アキラが残念そうに言うと2人はアキラの両端に座って、アキラを包むよううに抱きしめた。いや撫でまわしている。


「2人ともく、くすぐったいにゃ。」


「今までの分撫でまわすまではなさないよーー。」


「そうよ。後一時間は話さないわよ!」


マホとアミィがアキラの顔の両サイドから頬ずりしながら気持ちよさそうに言った。


いいなーー。僕はそう思いながらほのぼのした感じで見ていた。


「それにしてもアキラちゃんかわいそー。今までむさ苦しい男どもに触られてー。セクハラー。さあアキラちゃんあの野獣たちに何をされたか言ってみて―。」


マホがニヤニヤしながらこちらを見ていた。しかしアミィは肉球を触るのに夢中になっていた。


「で、でもそんなに嫌じゃなかったにゃ。ウォール氏はいつもご飯分けてくれたり、一緒に花の手入れもしたにゃ。」


「ふんふん、まあウォール君はそんなことしないよね。じゃああの残念イケメンは?」


マホが頷きながらさりげなくひどいことを言った。


「お、俺もな、何もし、してないよー♪」


リュークが何かを隠すように口笛を吹いた。嘘下手!!


「リューク氏は吾輩の大好きなマタタビをよくくれたにゃ。でも酔っててよく覚えてないにゃ。」


「はいセクハラー。」「違うって!!おいアキラ、秘密だっていつも言ってただろ。」「あーーパワハラもですかー。かわいそ―なアキラちゃん。」


マホがアキラに抱きつきながら言うと僕を見て、


「で、フィル君には何されたの?」


「えっと・・班長はー、いつも頭撫でてもらったにゃ。それがなんだかすごく安心できたにゃ。」


「フィル君はお父さんみたいっと・・で、後は?」


マホはメモをとる仕草をしながら続きを聞いた。


「リ、リューク、もう書けた?よし、次にいくよ。」


「あーー、ダメだよフィル君。これはすごく大事な事なんだよ!ささっアキラちゃん!!」


「後はー、班長とはよくお昼寝したにゃ。ポカポカした芝生の上で木にもたれて吾輩を膝に乗せて寝ている班長は超かわいかったにゃ。」


マホがさらにニヤニヤしてこっちを見てきた。


「羨ましいねーフィル君。ウフフ、もしかして正妻は決まった感じかな?」


「マホ氏、だめにゃ。班長が困ってるにゃ。それにアミィ氏に悪いにゃ。」


アミィの肉球を触る手が止まった。


「お、正妻は余裕ですなー。さて第2妃はどうおもっているのかな?」


「・・・マホ、それぐらいにしてくれないか。ちょっとやり過ぎだ。」


僕はちょっと怒りながら言った。マホは周りの空気を読んだのかちょっと反省したように小さくなった。


「ご、ごめん・・・」


「マホ。一応言っとくけど、学生時代とは違うんだよ。これからは下手をすれば命に関わって来る仕事があるかもしれない。僕はあの食堂での一件でみんなに背中を預けられるよ。でも今のマホには預けられない。なぜかわかるよね。」


僕はとても不機嫌そうに言った。いやたぶんそう聞こえるだろう。


「ご・・、すいませんでした・・。」


マホは本当に反省したようだった。ただでさえ小さい体は一層小さくなって目が少し潤んでいた。ちょっと言い過ぎたかな


「はい、じゃあお説教はお終い。リューク、書けた?」


「お、おぅ、いや、“はい”どうぞ。」


みんなの空気が重くなった気がした。あんまり僕も怒らないタイプだから慣れないことをするとすごく疲れた。


「じゃあ確認するね。」


リュークは・・・志望動機「この6人で宇宙一の配達屋になりたいから!!!」枠から出てるよ・・・。将来は・・・「6人で社長みたいな大きな椅子に座ってふんぞり返ること。」


「うん。リュークらしいよ。でもこれからたぶん仲間が増えると思うけどその辺はどう考えてるの?」


僕がリュークに尋ねると


「そりゃ決まってるじゃねーか。その度その人数が増えていくんだよ。」


リュークが自信満々に胸を張って答えた。


「当たり前だけどそうなったほうが絶対いいだろ!」


僕は真っすぐなリュークの考え方が大好きだ。ムードメーカーでどんな空気でも一瞬で変えてしまう。魔法みたいな自信とその行動にいつも助けられていた。


「フィルくん、マホちゃんを許してくれないかにゃ」


突然アキラに名前を呼ばれた。


「ウチに免じて許してほしいにゃ。ウチもみんなに背中預けたいにゃ。だから今までの話し方はやめるにゃ。だからおねがいにゃ。」


アキラが頭を下げた。やばい。空気を変えないと。


「ダメ!リューク、やり直し!」


みんなが「へ!?」って顔をした。


「マホ、さっきはごめんね。ちょっと慣れない事して疲れたんだ。たぶんいつもだったら怒らない、本当にごめんね。あ!それと、いつもアミィの事言ってるけどマホはいい人いないの?」


僕が冗談めかして言うと。マホはちょっとびっくりしたようだった。


「実はマホもフィルが好きとかな!!」


リュークが笑いながら言うと、マホが突然立ち上がった。


「な、なんでそうなるの?はは、この残念イケメンは!!考える事が単純すぎるね。じゃ、じゃあなんでアミィちゃんをからかうの?」


動揺しているマホは久しぶりに見た。確かにマホからそんな気持ちを感じたことないな?アミィはみんなが言うからそうかなと思うけど・・・。僕って鈍感?


「マホ、とりあえず座って。じゃあリューク、やり直したものを今週までに提出ね。ついでにアキラ、その口調を続けること!上司命令ね」


「はーーい」とリュークとアキラが言うとマホも恥ずかしそうに座った。


「さてみんな、一通り終わったけど最後に1つずつ渡したいものがあります」


僕は立ち上がると棚の上にあったある程度大きな箱をテーブルの上に置いた。この中に入っているのはみんなの気持ちを知る上で大切なものだ。僕は箱を開けると、中にはこの日の為に一生懸命選んだプレゼントが入っていた。


「じゃあ、まずリュークはこのチェーンのブレスレットね」

細いチェーンのブレスレットにはドクロと、数個の珠が付いており、かっこいいリュークにはぴったりだと思って用意した。


「お、いいじゃねーか。サンキューフィル!!」


「次にウォール。この懐中時計ね。欲しいって言ってたでしょ」


茶色のラバーで覆われているハンターケースの懐中時計だ。昔ウォールと買い物に行った時、懐中時計が欲しいって言っていたのを思い出して用意した。


「感謝する フィル とても 嬉しい」


「じゃあ次はアキラね。このイヤリング。片方だけするタイプのやつ。似合うといいけど」


大きなオレンジ色の珠が付いたイヤリングは灰色の毛並みをもつアキラのに映えるかなと思って選んでみた。


「にゃ!!意外と軽いにゃ。ありがとにゃフィルくん」


「よし、アミィにはこの指輪ね。あんまり高くないけど許してね」


指輪と言っても幅の広いリングで、そこにはサソリの刻印がしていてほかにも細かい模様が彫ってある指輪だ。


「しょ、ショウガナイワネ。ウケトッテアゲルワ」


なんか片言だな?よし、最後はっと。


「最後にマホ、このブローチを授けよう。効果は特にない」


みんなが喜んでくれて僕も調子に乗ってきた。マホのブローチは緑の大きな宝石を細かくカットしたものだ。まああんまり高くないけど、


「ははー、ありがたく頂戴するよー。ありがとうフィル君」


「さて、みんなにあげたプレゼントにはちょっとした仕掛けがしてあって、なるべく肌身離さずもっていてほしいんだ。それぞれパソコンに接続させることでその日言った事、聞いたこと、思ったことが全て文章になって表示される。これを個人の業務日誌としてまとめて欲しいんだ。もちろん他人には見せないし、6人の中でも互いに見せないようにする。でもこの業務日誌が5年分たまったら一緒に見ようと思う。そこで例えば今日みんなが思ったことを確認してさらに絆を深めたい。あの時こうすればよかったってみんなで反省したい。でもその時は笑っていたい。だから一日一日を大切に生きて欲しい。今日を忘れないように、昨日を忘れないように・・・。」


ちょっと意味深に話しすぎたけどみんなは一生懸命聞いてくれた。そしてみんなは僕のあげたアクセサリーを身につけ、目を瞑って業務日誌の最初の1ページを書き始めてくれた。5年後が楽しみだ。


「じゃあみんな、とりあえず最初の仕事に行こうか!」


みんなで応接室から出ると、そこにはおじいちゃんがいた。


「おぅーふぃりっくす。これがお友達の荷物の依頼書じゃ」


おじいちゃんは笑いながら2枚の紙を出した。これには荷物の大きさ、量が大まかに書かれていて依頼主とその基本情報が載ってあった。そこにはアキラとウォールの名前があった。2人ともあまり量は多くないけど小型のトラック1台くらいにはなるだろう。


「荷物を取りに行くならコロ助に手伝わせるといい。今日は“ワン”がいるはずじゃ」


「ありがとうおじいちゃん。頼んでみるよ。いつもの端末にいるよね。」


僕は携帯を取り出しそこからあるアドレスに「6人乗りのトラックを裏によろしく!」とメールした。


すぐにメールが返ってきた。「ふざけんな!2人乗りで大丈夫だろ!ちっ、用意すればいいんだろ!」嫌とは言えないツンデレ野郎だ。


「さあみんな裏に行こう」


みんなが不思議な顔をして僕についてきて会社の裏に行った。そこにはマホとアミィのトラックの他にもう1台トラックがあって人はいないけどエンジンが掛かっている。さすが!仕事が早いね。


「みんな、あのトラックに乗るよ。一応6人乗れるから前か後ろかに乗ってね」


「ん?フィル、車の免許持ってたっけ?船と車は違うぜ?」


リュークが訪ねてきた。確かに学校では船の免許しか取れないけど。


「大丈夫!僕は運転しないから」


みんなの顔はさらにハテナマークだ。僕が急かすようにみんなをトラックに乗せて運転席に座ると。


「おせぇ!!何分待たせんだ!!こっちは忙しんだ!!」


突然車のスピーカーから声が聞こえた。みんなはビックリしたようだが僕は慣れていた。


「うぉ!!なんだ?クソガキが6人に増えやがった。おいフィル!説明しろ」


「待ってよ“コロワン”みんなビックリしてるじゃない。兎に角学校の寮まで出発して。道中説明するから」


それから寮に行く道でそれぞれ自己紹介をした。車のスピーカーから聞こえた声の主は“コロワン”感情をもったAIで“CORO”シリーズの初期ナンバーだ。車内では賑やかに話がされていた。


「あんたあの幻のCOROシリーズなの?あれって問題があって生産中止になって使っている人もみんなやめたって聞いたわよ?」


「いんや。蠍の姉ちゃん。俺に問題はないんだ!ニンゲンの頭が問題なんだよ!でも俺を拾ってくれたジジィは、俺を拾ってから好きにさせてくれたし、仲間を増やしてくれたから少しは感謝してるぜ。後でみんな紹介してやるよ」


おじいちゃんはちょっとクセのあるものが好きで、COROシリーズのソフトを拾ってきたときはとっても嬉しそうだった。子供の頃僕はいつも泣かされて苦労したけど今は少しは仲良くなれたかな。


「コロワン、アミィだよ。メモリーまだあるでしょ?」


「うるせーフィル。AIをこき使いやがって、そういうとこは親父そっくりだな」


「はいはい。また頼みますよーっと。これから宇宙の配達も再開するんだから」


「はーー!?俺はぜってぇーいかねぇー。まだ壊れたくねぇしな。そういうのは“イチ”に頼みな!!」


「おっと、そんなこと言っていいのかな?もしかして恐いの?またお母さんのパソコンに飛ばすよ?」


「やめろ!!あそこだけは壊れるよりひでぇ!!ちっ、おめぇら。こいつと仲良くすんじゃねぇぞ」


僕とコロワンの話を聞いてみんなはゲラゲラ笑っていた。「笑い事じゃねぇ」とコロワンが怒っていた。


「ハハハ、フィル君家ではこんなに饒舌なんだー。なんか意外―」


マホが言うと、


「羊の嬢ちゃん。こいつとは一緒にならない方がいいぜ。ぜってぇ苦労する。人見知りだが一端仲良くなるとグイグイくるタイプだ。」


「私は大丈夫だよー。その方が好きだよ」


マホが元気よく返した。


こんな話をしていると不思議と時間は早く過ぎ、あっという間に寮についた。僕たちは寮母さんに挨拶をして依頼主である2人の立ち会いのもと荷物を運び出した。幸い荷物はまとめられていたので、リュークの“ベットの下チェック”は不発に終わった。荷物を全てトラックに載せてそこを後にしようとするとみんなは少し寂しそうだった。


会社に帰った頃にはもう夕方で、その日は部屋割だけ決めてみんなでご飯を食べてそれぞれの部屋で休んだ。結局男が3階で女が4階になった。



私の業務日記① マホ・アリエス  

「やっぱりフィル君はすごいなー」私はそう思った。


今まで私たちをまとめてきて、それが本当のフィル君だと思ったのに、自分が子供だって初めて分かった。怒られたし(笑)


残念イケメンの話に乗ってここまで来たけど私はみんなが好き!でもアキラちゃんが女の子なのはびっくり!これからずっともふもふできるよ。ふふふ・・・。


家に居場所がない私にとってこのチームが家族なんだ!フィル君がお母さんで、ウォール君がお父さん。アミィちゃんがお姉ちゃんで、アキラちゃんが妹。あ、残念イケメンはペットね。これが家族なんだなー。


で、さっき残念イケメンにフィル君が好きなのって言われたけど、自分でもびっくりの反応だったな。んーー。やっぱりそういう気持ちだったのかな?・・・だとしたらアミィちゃんに悪いな・・。よし、この事はもうお終い。明日から新しい家族で新しい人生が始まるんだもん。がんばるぞ!!


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