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降る星に読む物語  作者: 紫木
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黒き少年と革命者

篝火の前に立ち、青年は手に持った薪に火を灯す。

目の前に広がる藁葺き屋根ばかりの小さな村。

それは彼等革命軍の本拠地であり、唯一の彼等の帰れる場所。

おもむろに青年は村に火を灯す。

炎は家を焼き、火の粉が辺り一面に降り注ぐ。

その中で青年は振り返り、100人にものぼる同士を前にして声高に叫ぶ。


「これで俺達に守るべき物は何も無くなった。帰る場所が無くなれば帰る必要もない。我らが悲願である革命の道は先の戦いで潰えた。しかしこのままこの場所で安穏に生を全うしても、我々は己の墓場に名を刻む事も出来ぬ。忘れてはならない事がある、我々をここまで先導してくれた友のことを。皆に問う、彼は我々の為に囮になり、我々のために処刑されようとしている。これを指を咥えて見ているだけで良いのか。同じ志を持った仲間の窮地に、助けに走らぬ者をどうして友と呼べようか。再び皆に問う、敵は大きく我々では太刀打ち出来ないだろう。それでも己の信念と誇りを持ち、我に賛同してくれる友はここに如何程いるだろうか」


青年の前に立ち並ぶ群衆は、我先にと己が得物を天に掲げて咆哮する。

背を向けて逃げ出す者は一人としてその場には存在しなかった。

それを見た青年は一度言葉に詰まり、それでも気丈に声を上げる。


「感謝する、我が生涯誇りの友よ。いざ行かん、我らが友を助ける為に」


我先にと戦士達は戦の場へと向かう。

その中で青年は、今までの戦いで見た事の無い少年を見つける。

この時世、少年兵というのは珍しい物ではない、しかしそれ以上に少年には特筆すべき気配があった。

全身を黒ずくめでコーディネイトされた少年は散開する兵士達に賛同する事なく青年を見据える。


「君は誰だ?今までの戦では姿を見た覚えがないが」


青年の問い掛けに少年は至極真面目な顔をして答える。


「アンタがアイツが友と呼んだ男か。成程、オレとしてはアイツとアンタが羨ましい。死の間際に思い出を美化しただけの愚か者ならどうしようかと思ってたけど、これはオレが浅はか過ぎたみたいだな」


少年は己を恥じるように言葉を紡ぐ。

青年にとってその態度こそ意味が分からなかったが、聞き逃せない言葉がそこはあった。


「君は我が友の事を知っているのか?それに死の間際とはどういう事だ?彼の死刑執行は未だ先の筈だ」


少年は青年の問いに答える。


「アンタの友は自戒の意味も込めて幽閉されている。飲まず食わずでこのままじゃ死刑執行の日までは保たないだろう。オレにはアイツが最期に思い浮かべたアンタにどうしても確認したい事があったんだが、それも先の演説で充分過ぎるほど確認できた。それにオマエの友もオマエを信じるならばまだ生きてるだろうさ」


少年は先ほど、革命者たる彼に一足早く出会いこう告げていた。

「オマエの友を最期まで本物だと信じるなら、あと数日生き延びろ。必ず友はオマエを助けに来る」


青年は少年の言葉の意味がまる理解出来なかった。

理解出来なかったが、もしもその言葉が事実なら成すべき事はひとつしかなかった。


「少年よ、君が何者かは分からないが礼を言う。例え全てが嘘だとしても、俺が命を賭けるには充分すぎる希望を得た」


青年は少年にそう言い残し、戦場への道を駆け出した。

少年はその背中を羨望の眼差しで見つめる。


「こんなご時世だからこそ生まれた友情か。よくもまあこんな物語を描けたもんだ」


そして少年はその眼差しを新たに天を見据える。


「少しイレギュラーが過ぎるが、なんとかなるだろう。見せてやるよ、天にある星のような力と言うやつを」


少年はあたかもそこにいるだろう誰かに向かってそう言い残し戦場へと翔ける。


そして世界を改変する。

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