プロローグ
初投稿です。
「はいよー、串焼き盛り合わせ上がり!ティナ、カルロスじいさんの所のテーブルに持って行って!」
「はーい!」
「ティナちゃーん、こっちに葡萄酒追加で頼むよ!」
「はいはーい、ちょっと待ってね」
「旦那ぁ、俺にはビールに合うつまみをくれ」
「う~ん、じゃあ角兎の肉が入ったから唐揚げにでもしてやるよ」
「おっ、いいねぇ!それで頼むよ」
「いいなぁ、それ自分にも頂けますか?」
「マスター!私達にもお願いします」
「はいはい、喜んで」
ここは女神シャーロットの加護に護られた小くも豊かなとある島国。
その王都にある商業区の一角に、若い異国の男と美しい娘の二人で営む小さな飲み屋がある。
この国では珍しい黒髪を汗で湿らせ、客と笑い合い、我が儘な注文を受けても尚、楽しそうに料理を次々仕上げていく青年。
真っ赤で流れる様な髪をポニーテールにした娘は、雑多な店内で軽やかな身のこなしで注文を取り、空いた器を片し、時には尻を触ろうとする客をお盆でひっぱたき、出来上がった料理をテーブルへと運んでゆく。
低収入な人々でも無理をすれば一月に一度は来れる程度の値段設定のこの店には漁師、農民から商人や兵士、果てはこの都の中心にある一番大きなお家に住んでる方やら、様々な客が来る。
この店がここまでの人気店になったのには理由がある。
この島国においての料理とは食材に"塩味"を付けて熱を加える程度(少々大袈裟だが)の認識しかなかったが、それを大きく変えたのがこの店だった。
先代の店主が経営していた頃は簡単なつまみと酒しかなかったが、彼の娘とともに店を引き継いだ青年がこの国のものではない様々な料理を作り出し始めたからだ。
客達は物珍しい料理を肴に酒を飲み、店主や店員、たまたま居合わせた他の客との会話を楽しんでいる。
カランッ…
喧騒の中、入り口の扉の開く音が響き…
「おうっ!また来たぜ、今から二人大丈夫か?」
また新たな客が入った。
「いらっしゃいませ!」
「いらっしゃ~い!」
そして黒髪の若者と赤髪の娘の声が重なる。
「「ほろ酔い亭へようこそ!」」