表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あやかし学園奇談  作者: 水瀬紫苑
★学校案内編★
16/16

貴女達は「何」なの?

大変お待たせ致しました!!


何故か何時もあやかしの更新を忘れてしまうという・・・

「大丈夫?美雨。……ごめんね……。」


真紅は美雨の手を取って立たせると、そっと睫毛を伏せ、俯いた。


そんな仕草も様になっていて、とても艶っぽい。思わず惚と見とれてしまう。


「大丈夫っ!!気にしてないよっ!!」


美雨は太陽のような笑顔を向け、元気いっぱいに応える。


そんな美雨の笑顔につられたように、真紅も花が綻ぶ様に、美しく笑んだ。


その仕草は優雅で気品に溢れ、何をしていても絵になってしまう。


同性だというのに、目を奪われ 見惚れてしまう。


「立てる?」


「ん~……まだちょっと残ってるかも。」


「マタタビね……。どうせ三尾が仕組んだのでしょう。」


困った人。そう言って、その美しい顔を顰める。


「も~~~っ!!三尾嫌いっっっ!!」


だんだんと地団太を踏む美雨に苦笑する。


「悪い人ではないのだけれどね……。」


困った人ではあるけれど、と付け加える。


「それより美雨、走れそう?」


「まだちょっと無理かも。ふらふらするや。」


「じゃあ、此処で待ってて。栞さんを守ってね?」


「――?終わったんじゃないの?」


不思議そうに問いかける美雨に、困ったように微笑んだ。


「いいえ。咄嗟に加減したから、吹き飛ばしただけよ。刹那様に引き渡さなければならないし、千歳さんにも報告しないとね。」


口の利ける状態じゃないと、刹那様に怒られてしまうし。そう言って深くため息をつくと、鋭い視線を森の中――男たちの方へと向ける。


「それに、獣は体の頑丈さだけが取り柄でしょう?」


あの程度じゃたいしたダメージにはならないわ。その言葉に、美雨は悔しげに自分の手を見る。


む~っと唸る美雨を可笑しげに笑いながら見つめていたが、ふと栞に向き直る。


「貴女も……大丈夫?……怖い思いをしたでしょう?」


真紅は苦しげに眼を伏せた。


呆と2人の会話を聞いていた栞は、その問いかけに我に返った。


「あ……あの……。」


上手く言葉が出てこない。


怖い思いをしたのは本当だ。恐ろしいと――死を覚悟したのも1度や2度ではない。


しかし、頭がついていかないのだ。


まだ、変質者に刃を突き付けられた方が、怖かったと泣くことが出来る。



――何故ならば、自分が今まで見てきた光景は、栞の理解の範疇を軽く飛び越えたもので。


そして、今現在見ている光景は――


茶色い物体が、栞の視界を過ぎる。


眼を逸らそうとしても、どうしても視界に入ってしまうそれは多分――


上手く頭が整理できない。それでも無理やり声を絞り出す。


問いかける言葉は、1つしか思い浮かばなかった

「これは……貴女達は……何……なの?」


真紅と美雨の瞳が怪しく光った。



 ※ ※ ※


美雨と真紅は眼を合わせる。


美雨の瞳は「どうする?」と問いかけていた。


一瞬の逡巡の後、真紅は首肯する。


――こうなってしまっては、話してしまうしかない。


どうせ、後で話さなければならないのだ。



栞は、そんな2人のやり取りをただ見つめていた。


――どうして、何も言わないの――?



学園に向かう途中から起きた、様々な出来事。


一瞬で消えた人。


変わった風景。


幻のように姿が変化した男たち。


人を、片手で吹き飛ばせる怪力。



――そして何より、今 目の前にあるあの茶色い物体は――



何故、何も言わないのだろう。真紅も――美雨も。


眼の前で揺れる、細長く、茶色い物体。


それと同様の色彩を放つものが、美雨の頭部にもあった。


それは何処から見ても――



「……それは、なに?」


つい問いかけてしまった。


でも、どうしても気になってしまう。


見間違いとは思えない。



「何って……?」


真紅は不思議そうに首を傾げる。


(気付いていないの?)


矢張り見間違いなのだろうか?


怖い思いをした所為で、きっと頭がおかしくなってしまったのだろう。


真紅は、栞の指が示す方向を見る。


その先にいたのは――


(――美雨?)


美雨がどうかしたのだろうかとまじまじと見つめる。


美雨もきょとんと首を傾げていた。


その愛らしい仕草に呼応するように、耳がぱたぱたと動き、尻尾もひらひらと揺れて――




―――ん?



―――耳 と 尻尾 ―――?



はっと気がつき、真紅は顔面蒼白になった。


「みっ……美雨っ!!人化っ!!解けてるっ!!」


「ふえ?」


きょとんと首を傾げていたが、真紅の言いたいことを理解した美雨は、慌てて頭に手をやる。


そこにはふかふかとした感触のものがあった。


「ふっ……ふにぁあ!!!」


慌ててそのふかふかとした物体――耳を隠そうとするが、もう遅い。


栞はすでにそれを視界に収めてしまっていた。


先程から栞の視界の端に映っていた細長い物体――美雨の尻尾が、美雨の動揺を表わすかの様に、びたんびたんと揺れていた。



(――え……ていうか、気付いてなかったの――?)


栞は、先程から視界の端で揺れている尻尾が、どうしても気になって仕方がなかった。


美雨と向かい合っている真紅には、その頭部にある耳の存在にも気付いていたはずなのに。


何故、何も言わないのかと不思議に思っていたのだが――。


(気付いて、いなかったのね――。)


それどころではないと知りながらも、思わず脱力してしまう栞だった。



 ※ ※ ※


――しまった。


後悔しても、もう遅い。見慣れているが故に、その異常に気が付かなかった。


――どうしよう……。


眼の前でふよふよと揺れている美雨の尻尾を見つめる。


――仕方が ない。


1つ溜息をつくと、真紅は栞に向き合った。


その真摯な瞳を見て真意に気づいた美雨は、不安そうに尋ねる。


「いいの?真紅ちゃん……。」


「ええ……。此処まで徹底的な証拠を見られてしまったら……ね。それに、何れは話すこと。それが速いか遅いか……それだけよ。」


「……でも、千歳さんが……。」


「千歳さんには私からお伝えしておくわ。……刹那様にも…………私が……怒られて、おくから……。」


前半とは打って変わり後半を何故か歯切れ悪く言うと、億劫そうに溜息をつき、改めて栞に向き直る。


「栞さん。この樫綾学園について、どう説明されましたか?」


「え……どう……て……。」


「実は、この学園には他とは違う秘密があります。……もうお分かりかとは思いますが、その秘密とは、先ほど……そして今、貴女が見ているものです。」


ちらりと美雨に視線を滑らせる。


「――この学園は―…」


言いかけた瞬間、鋭い視線を向け、口を噤む。


背筋が凍るほどの怜悧な視線。


――その、先にあるのは……。



「美雨。栞さんをお願いね。」


低く紡がれる声に、美雨はこくりと頷いた。


美雨の瞳も真摯なものに変わっていた。


「――さて、どうしましょう?あまり傷をつけると刹那様に叱られてしまうわ……。無傷で捉えなければ、ならないのかしら?」


真紅の視線を追う。


その先にいたのは、先程の男たち。


しかし今の彼らには、自分たちを嬲っていた時のような醜悪な、愉悦に歪んだ笑みはなく、代わりに浮かぶのは 恐怖。


彼等は一瞬にして、狩る側から狩られる側に立ってしまったのだ。


真紅がうっすらと嗤う。


「先ほどまでの威勢はどうされたのかしら?諦めたのなら、大人しく付いてきてくれると有り難いのだけれど?」


1歩。


真紅に気圧されて、彼等は後退する。


栞は驚愕と恐怖から言葉を失う。


――これは、誰?


先程まで柔らかく微笑んでいた美しい人はもう 居ない。


今の真紅はまるで 彼らに恐怖と絶望を運ぶ



――死の 女神。



うっすらと冷酷に笑む真紅。


彼女の美貌が冴えわたる。


栞は、真紅に恐怖を感じた。しかし それ以上に 魅せられる。


栞は、ただただ眼の前の美しい人に見惚れていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ