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【連載版】悪女の優雅で素晴らしい贅沢生活 〜過労死した私、社畜スキルで稼ぎます〜  作者: 海城あおの
第二章 悪女はお金を稼ぎます

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15. 最強の広告塔

 

 ベリルは膝をついたレオンハルトを一瞥すると、観衆ではなく、何故かまっすぐ私の方へ歩いてきた。人垣が自然と左右へ割れていく。

 私の前まで来たベリルは、完璧に整えられた微笑を浮かべた。


「ありがとうございます、エスメラルダ様。貴方のおかげで勝利を手にできました」


 いつもの軽い口調ではない。

 丁寧で、優雅で、周囲の視線をすべて計算しているような完璧な物腰。まるで王子のようだった。

 彼には近づかないと決めていた私でさえ、思わず見惚れてしまう笑みだ。

 だがここで浮かれた顔を見せるわけにはいかない。私はどうにか表情を引き締める。

 すると、ベリルはふわりと笑った。


「今度、何かお礼をさせてください」

「お礼、ですか?」

「えぇ」


 彼は自然な仕草で、私の手を取る。

 そして──手の甲に小さく口づけを落とした。

 周囲から悲鳴のような歓声が上がり、私は石のように固まった。唇が触れた場所だけが妙に熱を持つ。

 ベリルはゆっくり顔を上げ、濃紺の瞳で私を見つめた。


「貴方の願いを、何でも一つ叶えます」


 その表情があまりに完成されすぎていて、私は目が離せなくなった。頭が真っ白になりながらも、どうにか強気な表情を作る。


「……後悔しても知りませんわよ」

「しませんよ」


 ベリルは迷いなく答える。

 その声の糖度の高さに、私はますます何も言えなくなった。



 *



「売上はどうですか?」

「上々よ!」


 私はほくほく顔で答えた。

 ベリルとレオンハルトの決闘以来、私は目が回るような忙しさの中にいた。学園の生徒たちからアーティファクトの買付依頼が殺到したのだ。

 決闘の翌日には、半月売れ残っていた在庫がすべて完売。その三日後には、次回生産分まで予約で埋まった。

 ベリルが実際に使い、しかもあのレオンハルトの魔法を防いだ効果は絶大だった。

 あれほど売れなかった商品が、今では順番待ちである。飛ぶ鳥を落とす勢いとはまさにこのことだろう。


「流石ベリル・ランフォードだわ。人気の彼が性能を示してくれたおかげで、大きな宣伝になったわ」

「そうでしょう、そうでしょう」

「? 何でオーナーが自慢げなのよ」


 思わず突っ込むと、オーナーはぎくりと肩を揺らした。

 それから、こほんと一つ咳払いをする。


「それで、大分稼げたのではないですか?」

「まぁね」


 私は頷いた。

 売上は悪くないが一千億ゴールドにはまだ程遠い。黒薔薇病を治すためには満足するわけにはいかなかった。

 また別の商品を考え、稼がなければならない。


(それでも、手元にまとまったお金があるというのは素晴らしいわね……!)


 私は一人うんうんと頷く。前世では給料日前になるたび、口座残高を見て胃を痛めていたのだ。

 だが今は見たこともない大金を手にしている。

 お金があれば選択肢が増える。できることが増える。

 何より、心に余裕が生まれることを知った。


(次の事業は何にしようかしら?)


 相談しようかと思い、ちらりとオーナーを見る。だが、すぐに考えを却下した。

 アーティファクトの件では感謝しているが、この男は売上の三割を持っていった。

 最初から相談すれば、また高い取り分を要求されるだろう。できればこちらである程度形にしてから持ち込みたい。

 私は話を変えるように口を開いた。


「ベリル様を宣伝役に選んだのは、貴方だったの?」

「えぇ、そうですそうです」


 オーナーはあっさり頷いた。


「顔も良く、性格も素晴らしく、学園中から絶大な人気を得ている彼が使えば、アーティファクトの悪い印象も覆せると思ったのです」

「……随分とベリル様のことを買っているのね」


 私はじっとオーナーを見つめた。随分な褒めようである。

 確かに顔は良い。性格についてはまだ判断しかねるが、学園で人気なのも事実だ。

 それでも、オーナーがここまで手放しに褒めるのは少し意外だった。


(もしかして、オーナーって……ベリル様のこと好きなのかしら?)


 そう考えれば、この手放しの褒め方にも納得がいく。私は生温かい目でオーナーを見つめた。

 彼は微妙に眉をひそめる。


「何だか、とても失礼なことを考えていませんか?」

「いいえ」


 私はにっこり笑って誤魔化した。

 オーナーはしばらく私の顔を見ていたが、やがて諦めたように視線を逸らした。


 私は机の上の売上報告書を手に取る。

 半月前まで一つも売れずに積み上がっていたアーティファクト。それが今では完売し、次回分まで予約で埋まっている。


(私が考えた商品で、お金を稼げた)


 前世ではどれだけ働いても成果は上司のものだった。

 だがここに記された利益は誰でもない、私が生み出したものだ。そう思うと、胸の奥がじんわりと熱くなる。

 私は売上報告書を閉じ、頷いた。


「とりあえず一歩前進ね」


 一千億ゴールドには、まだまだ足りない。それならまた別の方法で稼げばいいだけだ。

 アーティファクトが売れたのだから、次だってきっとうまくいく。


(美味しい食事も、ふかふかのベッドも、美しい宝石も。全部、諦めるつもりはないわ!)


 私は新しい紙を一枚取り出し、羽ペンを握った。


「さあ、次は何で稼ごうかしら!」







お読みいただきありがとうございます!


今回でアーティファクトを使ったお金稼ぎは完結です。

明日からは、エスメラルダが新しいお金稼ぎに挑戦します!


「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、

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― 新着の感想 ―
今のところ悪役評価よりパピーに怒られない事の方が重要w
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