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転生、転生、転生、転生……って、もううんざり  作者: 白髪銀髪


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七歳 反乱の兆しがあるみたいですけど

「お父様。どうかなさったのですか?」


 その日の夕食でさっそく聞いてみた。

 こういうことは、早いに越したことはないからね。


「なんのことかな?」


 父は驚いたように瞬きを繰り返した。

 まだ私の質問は抽象的すぎて、はっきりとはわからなかったことにしようと判断しているのかもしれないけど。

 

「いつもよりも、難しいお顔をされていましたから」


 あくまでも、さらりとした感じで。イシスの口元にわずかについているソースを拭いながら。

 この程度なら、子供の勘、ということで誤魔化せるだろう。


「お母様も普段より緊張しているみたいですし」

 

 魔塔は超国家機関。

 基本的には、国家の問題には介入したりしないけど、母は父の妻でもあるからね。魔塔に所属するほど優秀な魔法師を、国が放っておくはずもない。

 もちろん、表向きは個々人の自由を尊重しているけど、国民であることには変わりがないからね。

 なにより、父が騎士団長を務めている、自分たちの暮らしている国の話だ。まったく耳に入れていないということはないだろう。

 父と母は顔を見合わせて。


「アリアちゃんには敵わないわね」


 もしかしたら、私が事前に誰かから――そんなことのできる相手なんて限られているけど――話を耳にしたということくらいは察されたかもしれない。

 なんでもかまわないけど。私がどこから情報を仕入れたのか、悟られたところで、私としては、痛くもかゆくもないわけだから。


「知らないなら知らないままでよかったんだけど、どうやら、うちの娘は誤魔化せないみたいだからね」


 私を誤魔化せないわけじゃなくて、情報提供者がいたってだけのことなんだけどね。それは明かせないけど。

 約束の反故になるから。

 父は一度私の頭を撫でてから。


「……このファルバニアの現国王、オルレイン陛下が王位を継承される際に起こった争いのことは知っているね?」


「ええ。たしか、腹違いの御兄弟との間のことだったかと」


 本当はもっといろいろあって。

 実際は、今の国王のほうが妾腹の子で、その争いに負けたほうの正妃の息子であった当時の第一王子(国王が崩御していたのに、正式に王位が継承されなかったから、その辺がややこしくなっているんだけど)のほうが、血筋的には正当性があったってことだったんだよね。

 ただ、国民とか家臣からの信奉は現国王のほうが強くて、その声が無視しきれなかったとか。

 でも、その兄王はたしか亡くなっていたはずだけど。

 納得して譲ったとか、身を引いたわけじゃなくて、政争に負けた、しかし、継承権の残る相手なんて、どう考えても厄介だし。


「ですが、その王兄殿下は亡くなっておいでなんですよね?」


「対外的にはね」


 なんでも、争いには負けたものの、結局、死体は上がらなくて、どこかに敗走しているのではないかと当時から噂されてはいたらしい。

 争い自体には負けていることは確実だし、姿を眩ませている――表舞台に口出しできる立場にいなくなったということも事実だから、その結果に国民からの反論はなかったみたいだけど。そもそも、国民からの人気は現国王のほうが強く、望んだ結果だったということも大きいんだろうね。


「ということは、まだご存命でいらっしゃると?」


「まだほんの幼くはあったんだけど、その時点で王兄殿下にお子がいらしたからね。子供に罪はないし、さすがにその年齢で父親と永遠に引き離してしまうのは酷だとお考えになられたんだ」


 つまり、マーク殿下の従兄って立場になるのかな。

 それで、情けをかけた結果、今、噛みつかれている、あるいは、噛みつかれかけているという情報があると。

 

「さすがに、他国の支援までは受けていないみたいだけど、当時でも王兄殿下のほうを支持していた貴族たちも、その王兄殿下のお子が成長されて判断のつくというようなお歳になられたことで、盛り上がっているみたいでね」


 それで反乱と。 

 

「そこまでわかっていらっしゃるのなら、なぜ、対処に動かれないのですか?」


 それこそ、叩き潰すでも、とっ捕まえるでも、追い出すでも、どうとでもできそうだけど。

 

「貴族の中でも彼らを支持している者がいると言っただろう? その彼らまでまとめて処断してしまうには、まだ後任への引継ぎ体制を整えられていないんだ」


 そういったことも学院では学ぶとはいえ、当たり前だけど、いきなり誰かを連れてきて、じゃあ今日からきみがここの領主だからあとよろしく、なんてわけにはいかないわけで。

 それに、実際には、表立っても、裏であっても、動き出してもいない相手を捕らえることはできない。

 それでは、ただの暴君になってしまう。

 

「その彼らへの説得などは……?」


 父は小さく首を横に振った。

 

「もちろん、国家反逆罪ととることもできる。しかし、確実な証拠がなければ世論は納得させられない。世論とは、つまり、国家そのものへの声ということだからね。それを無視できる国家は、国家ではなくなる」


 つまり、わかりやすい証拠が必要ということだ。

 人でも、物でも、事件でも。

 当然、事件なんて起こさせるわけにはいかないから、人を捕らえるか、証拠をあげるというのがいいんだろうけど。


「それで、私やイシスも危ないということですね」


 父は騎士団長で、母は魔塔の魔法師。

 そんな二人を直接どうにかするのは困難だけど、それなら、身内――子供を人質にとって無理やり言うことを聞かせよう、そんなところかな。

 短絡的すぎるけど、そもそも、思慮深かったら、私怨なんかで国家に対して喧嘩は売らないんだよね。


「ああ。私の側というのも危険だから、できるだけお母さんの側についていてほしいんだけどね」


 そりゃあ、王宮騎士団長なんて、争いの真っただ中もいいところだよね。

 政治に関しては、まったくわからないということはないんだろうけど、国家の最強クラスの戦力であることには変わりないわけだし。

 そして、革命に武力は必要だ。

 ならば、父が真ん中に巻き込まれることは避けられないだろう。それはつまり、ユーイン家がということにもなる。

 父や母の目の届く範囲で、私やイシスに手を出すのは無理だろうけど、さすがに――いや、しばらくは、毎日職場にまでついて行ったほうがいいのかな?

 子供というのは、親に対しての、明確な弱点になり得るだろうし。

 そして、この手のことをしでかす輩に、一般常識的なことを求めても無駄だということはわかっている。そんなことがわかるくらいなら、そもそも、革命なんて起こさないからね。少なくとも、最初は。

 言霊じゃないけど、人には言葉があるんだから。


「わかりました。母やロレーナの側から離れないようにします」


 そうすれば、ロレーナの安全も確保できるし。

 

「ところで、その反乱、コード伯爵家が関わっているということはありませんよね?」


 少なくとも、シャーロック自身は関わっていないだろう。

 今日も会って話したばかりだ。さすがに、そんな気配がすれば、わからないはずがない。


「アリアのお友達は関わっていないから安心していいよ」


 シャーロックは関わっていないってことは、調べているんだね。

 だけど、その言い方だと、コード伯爵家自体は、巻き込まれたとか、利用されたとか、もちろん、真ん中にいるとかってこともあるかもしれないけど、とにかく、なんらかの形では関わっているってことだよね。

 だから、知っている風だったのか。

 それなら――、いや、父も関わっていないと言っているんだから、そのとおりなんだろう。

 というか、普通は七歳児を反乱なんかに巻き込まないし。

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