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転生、転生、転生、転生……って、もううんざり  作者: 白髪銀髪


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四歳 マニエール男爵家訪問 私の心配とロレーナの心配

 あとは、公爵令嬢とはいえ、四歳児の言っていることをどこまで信じるのかってところだね。

 普通の四歳児に宝石の目利きなんてできるはずがない。余程の権能でも授けられていればべつかもしれないけど、私はそんなもの受けてはいないし。

 

「戻ったら見せてあげるよ。欲しければ、あげてもいいけど……」


 お金はもちろん、あったほうがいいことは事実だけど、死んだら使えなくなるものだからね。

 とはいえ、ロレーナは父から給金をもらうことになっているんだろうし、私がそれ以外で勝手にっていうのは、理由がないと難しいだろうね。

 私がもらったものとはいえ、もとは、父か母か、買ってきたものなんだろうし。

 

「と、とんでもございません」


 ロレーナは恐縮した様子で背筋を伸ばした。

 べつに試したわけでも、脅したわけでもないんだけどな。


「それより、あの詐欺師だけど」


 あの様子じゃあ、持ってきた宝飾品だけじゃなくて、取り扱ってるほかの商品の質も心配になるよ。というか、確実に、紛い物、贋作だろうね。

 もうすこし、確実な証拠を掴んでから、あるいは、完全に言い逃れできない状況で問い詰めたほうが効果的だっただろうけど、これ以上は無理かもしれない。住んでるところなんかを知っているわけではないんだから、顔を合わせなければ、どうしようもないからね。わざわざ調べる気にはならないし、それに、ああいう輩は、一つの場所に留まるってことをしない。手に入れたものだって、分散させて所持するだろう。

 多分、私がいる間に再びここへ来ることはないと思いたいけど、いなくなってから、手を変え品を変え、あるいは、顔や名前まで変えて、またここに来ないとも限らない。

 

「そうですね。ほかの家にも行くのかと思うと」


「え?」


 そんなことを心配してたの?


「アリアお嬢様?」


「あ、あー、うん、そうそう、私もそれを心配してた」


 いや、自分の商売を邪魔した私とかロレーナとかに報復(あるいは、逆恨みともいうけど)を仕掛けてくるんじゃないかってことを心配してたんだけどな。

 まあ、ひと目で、しかも、簡単に見破ったように見える私のところには、ああいった手合いは再び近付いてくることはないと思うけどね。 

 自分の利益というか、保身には敏感だから。

 自分の実力に絶対の自信なんてものがあっても、しばらくは慎重になるはずだよ。あるいは、私たちに報復して、尊厳なんかを回復したら、すぐに行動を再開するかもしれないけど。

 

「旦那様へ報告いたしましょうか?」


「必要ないよ。報告なら、戻ってからすればいいし」


 明日か明後日くらいには、私たちも帰るし。それほど急ぐべき案件ってほどでもないでしょ。


「では、人相描きなどなさいますか?」


「うーん。詐欺師だからね。顔くらい変えられるんじゃないかと思うんだけど……」


 そもそも、二度と同じ手口を使うのかってことも怪しい。

 あの男の行動を完全に追跡したりはできない以上、すでに逃げられた後であり、先回りするというのは不可能に近いからね。

 さすがに、他国まで逃れたとすれば、それは、一介の公爵令嬢がどうこう注意するようなものでもないだろうし。

 べつに、面倒だと思ってるとかってことじゃなく……まあ、それもあるけど。八割くらい。

 

「もし、仕事の成功とか危機感よりも、自分の感情とか、プライドとかを優先するようなら、私への報復に来るだろうから、簡単なんだけどね」


 向こうから向かってきてくれるんだから、捜索も追跡も必要ない。

 それこそ、ベッドで寝転んで待っていればいい。いや、もうすぐ帰るわけだから、時間的には、馬車に揺られて、かな。さすがに、今夜すぐにってことはないでしょ。


「……お嬢様への報復に来るほどの考えなしでしょうか?」


「まあね。でも、人の感情なんてわからないものだから」


 父は城の騎士団長で、母は魔塔の魔法師。ユーイン邸へと侵入するのは、余程の熟練者でも難しいだろうね。あるいは、馬車への襲撃ということでも、まともな感覚ならリスクのほうが大きすぎるとわかるはず。

 そんな相手へ依頼するとかってことが、ないとは言い切れないけど、あの男個人にそこまでの技能はないと思うよ。身体能力とか、剣技、武術、魔法に優れているってことでもなさそうったし。まあ、四歳女児を襲うのにそこまでの力は必要ないけど。

 だから、報復を考えるとしたら、マニエール邸からユーイン邸への帰り道とかだろうね。

 あとは、そうだね、そこまでするかとは思うけど、ユーイン家の予定とかを調べて、父や母が忙しいときに襲撃するとか? でも、私は基本的に母とは一緒にいるし、最近はロレーナもついていてくれる。完全に一人になることなんて、それこそ、風呂とか、手洗いとかしか、ありえない。それにしたって、公爵家邸宅の中の話だし。

 武力行使か、別の詐欺にかけようとしてくるのかは、わからないけど、リスクに見合ったリターンが……まあ、そんなことを考える人は、そもそも、報復なんて考えないか。報復って、基本的には理性じゃなくて感情の産物だし。

 それに、詐欺師って、基本的には金儲けのために生きてるから、わざわざ、金を払って誰かを雇ってってこともしないと思うんだよね。協力者もほとんどない。そこから足がつく可能性がある以上は。


「まあ、自分の仕事を邪魔した小娘に、ちょっと痛い目を見せてやろうってくらいは考えるかもしれないね」


 とはいえ、所詮、できる嫌がらせなんて限られてる。 

 

「お嬢様。笑いごとではないと思いますが」


 ロレーナは心配性だな。

 あの男に人を殺すまでの度胸と覚悟はないよ。

 それがあるなら、もっと、まともな詐欺を――まともな詐欺とはってつっこみはさておき――働くはずだからね。

 

「わかったよ。じゃあ、帰り道にはせいぜい気をつけることにするよ」


 気をつけるといっても、私ができることなんてほとんどないから、普段と変わらないけど。

 

「お嬢様のことは私が必ずお守りいたしますから」


「頼りにはしてるけど、命までは懸けないでね」


 私のために命を懸けるなんて馬鹿な真似はしないでほしいよ。

 そもそも、ロレーナが命を懸けなければならないような事態って、ロレーナが命を懸けてもどうにもならないことが多いだろうし。

 べつに、ロレーナの能力を疑っているとか、忠誠を疑っているとかってことじゃないよ?

 ただ、ロレーナもまだ十歳の女の子なんだし、いくら、メイドとして能力が高くて、同年代よりは大人びて見えるとはいっても、無理をすればできることと、無理してもどうにもならないことはある。

 今はまだ。

 

「はい。わかっています」


 ロレーナはそう答えたけど、本心は手に取るようにわかる。

 私だって、主人がいたなら、その相手のことを優先するし。

 重要なのは、そもそも、そういう状況に陥らないように立ち回ることだ。だから、できる限り、穏便に済ませようとしたんだけど……したんだよ。

 だって、私がしたことって、詐欺にあいそうになっている相手に忠告して、詐欺師相手にも、いきなり騎士団とかに突き出すんじゃなくて、アドバイスだってしたんだよ? アドバイスというよりは、皮肉だったかもしれないけどさ。

 少なくとも、彼に不利益は出してないでしょ。叩き潰して、破滅させて、騎士団に突き出して、なんてことまではしなかったんだから。十分有情だと思うよ。


「ロレーナが許せないっていうなら、今からでも見つけ出して叩き潰しに行こうか?」


「冗談ですよね。お嬢様がそんな面倒なことをされるとは思えません」

 

 そうだね。

 降りかかる火の粉は振り払おうと努力するかもしれないけど、火種まで見つけ出して消火活動に勤しむ、なんて真似は、まあ、ほとんどしようと思わないかな。

 

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