第70話 集めた素材の使い方
改訂2023/04/14
「なるほど。そういうことか……確かに、儂もフォローすれば、お前さんのやりたいことはできるぞ。」
「ありがとうございまーす!ご協力お願いします。」
「うむ。了解じゃ。」
腕を組んで神妙な面持ちのおじいさんが、協力を約束してくれた。
頬に先生お手製の紅葉が無ければ、話が締まるってのに。
無意識とは言え、起き抜けに笑えないボケをかますから……
さて、念のため確認するか。
分かったつもりで居るのと、確認するのでは、雲泥の差だし……
仕事するようになって、「念のための確認」でどれだけの失敗を回避できたことか。
「念のための確認」を拒否されたことは、仕事して10数年で一度も無い。
言われた側にとってもメリットが大きすぎるんだよな。
誤解されて、失敗して、それをリカバーする方が、念のための確認の比にならないくらいのコストと時間が掛かるから。
「念のための確認」というフレーズこそが、社会人の最強のツールだと思って、毎日利用してたな~。
「念のため確認ですけど……」
俺の現世から持ち込めた最強の武器は、おじいさんも先生に届き、真剣な顔で力強く頷いて返してくれた。
どうやら、こっちの世界でも通用しそうで良かった。
「今後は吸収した様々なものを、好きなように組み替えて、ゲートから排出ができるって事ですよね。」
「できるわよ。」
「例えば、龐徳の打ち込みの木刀みたいな枝を、8本に割って弓にして、横方向の運動エネルギーを縦方向に付け替えて……」
「更に、帰宅中に集めた風も加えて、ゲートから発射ッ!って事ができるんですよね?」
「楽勝じゃな。」
「おおおおお!!!」
喜びを抑えきれず思わず歓喜の声を上げてしまった。
試したい!
今すぐ試したい!!
「では、起きて素材を色々集めてから試してみますので、ちょっとお時間下さいね。」
「これができたら?」
俺は目を見開いて、おじいさんと先生の顔を交互に見た。
「ふぅ、しょうがないのう……☆1つずつ追加ででどうじゃ?」
俺の言いたいことを、おじいさんが先生に向けて横目で見ながら、代弁してくれた。
「そうね。」
先生は、やれやれと言わんばかりに小さく肩を上下に動かし、納得してくれた。
「という事じゃ。いいじゃろ?」
「勿論です。ありがとうございます。」
「儂の役目は終わったよね……?それじゃあ、後はよろしく。儂は待ち人に会いに行くので、多分まだ間に合うはず……」
そう言うと、おじいさんはまた座り、ゴロンと寝転がった。
夢の続きを見に、また涅槃像になるつもりだ。
「ちょっと、お昼寝待って!おじいさん」
「なんじゃ?儂、忙しいのに……手短に頼むぞ。」
姿勢を変えず、片目を開いて返事をするおじいさんから、昼寝の執念が滲み出ている。
昼寝にここまで気合が入っているお年寄り初めて見たかも。
それはそれとして……