第69話 取り出し方
改訂2023/04/14
「出てくるときは?まさか、ボロンって出るんですか?」
「それとも、ゲートに手を突っ込んでヌルっと取り出すとか?」
「あるいは、ゲートから勢い良くギャーンッて発射される感じですか?」
「そうね、基本的には、入れた時と同様に出す感じになるわ。」
「んーっと、どういうことですか?」
「自分に向かって飛んできた投石は、ゲートから投石として出てくるって言ったらわかるかしら?」
「なるほど、出したいように出せるわけじゃないんですね。」
「出したいように出せるって……例えば、置いてある石を吸収した後、ゲートから石を発射することはできないって事ですよね。」
「まぁ……そうね。」
「うーん、そうですか。」
「何か不満?」
「そんなことは無いですよ。」
「あら、そう。」
あれ……?
いろいろな種類を吸収して来いって言った割に、随分と淡白だな……
あの指示は何だったんだろう……
まさか……
「例えばですけど!」
「うわっ、ビックリした!突然大きい声出さないでよ!!」
いけね。
思い付いた事にテンションが高まって、思いの外大きい声が出てしまった。
「あ、すいません……」
「良いから!続けて!」
「はい。今この空間に、龐徳の投げた投石と、焚火の火があるじゃないですか」
「あるわね。」
「この二つを合成して、ゲートから“火の玉シュート”……なんて発射できますか?」
「アツアツの投石ってこと……?できるでしょうね。」
「それって、吸収した物同士を、組み合わせて取り出せるって事ですか……?」
「ん?」
「例えば、龐徳の打ち込みの木刀みたいな枝から、運動エネルギーを付け替えて……、そう!帰宅中に集めた風も使って、木刀を矢のように発射することは……?」
「ちょっと難しいわね。それ、合成じゃなくて、組み換えてるじゃない。」
「という事は……置いてある剣と、飛んできた弓を吸収したら、ゲートを開いて剣を発射しつつ、弓を手で取り出すことはできないってことですよね。」
「くどい!できないわよ!」
「そうでしたか……」
「何よ、不満?」
「最強なら、そういうこともできるかなって……」
「くっ……そこの腑抜けた寝顔のクソジジイ、叩き起こしなさいッ!!」
「え……?ちょっと待ってください。どういうことですか……?」
「いいから早くっ!!」
次の瞬間、黒一色だった世界が、始めの白と黒の世界に変わった。
白い方では、相変わらず、涅槃像のように、ゴロ寝しているおじいさんが居た。
まだ寝てたんか……
俺なんて、昼寝でここに来て、怒られてるってのに、相変わらず気持ち良さそうに寝てるよな~。
自分で目を覚ますまで寝かしておいてあげたいけど……ごめん、先生の希望なんだ。
「出番ですよ~、起きて下さーい!おじいさーんっ、起きて―っ!」
俺は、おじいさんの体を揺らしてみた。
「わ……、儂のハーレムッ!!」
突然上げたおじいさんの叫びが、沈黙と不穏な空気を呼び込んだ。
そーっと先生の顔色を窺うと、眉間に深い皺を寄せ、わなわなと唇を震わせている。
「せんせ、穏便に行きましょ。男って本当にバカな生き物で……」
「特にこの人、そういうとこが、昔っからあるんです……」
「お前さん、何をバカなこと言っとるんじゃ!儂との付き合いは、つい先日始まったばかりじゃろうが!」
俺の咄嗟のボケたフォローは、導火線に火をつけた本人に排撃された。
そして、その直後、ビシーーーッと音を立てて、戦慄が走り、視界がチカチカした。




