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魔道焜炉

遅くなりましたが、楽しんで頂けたなら幸いです。

 まだ時間には余裕が有るのだが昨日は遅くなったので、今日は早めに食卓に向う事にした。

 しかし、流石に早過ぎた様でまだ誰も来ていなかった。


 仕方が無いので台所を覗くと秋穂母上と、結婚後は実際には料理はしないだろうが、一応花嫁修行の一つとして料理を習っている二刃姉上が朝食の準備をしていた。

 二人は調理中というのも有って、髪が落ちない様に長い髪に布を巻き付け、棒状にしている。その髪を揺らしながら二人は手際良く朝食の準備をしていく。

 どうやら今日の朝食は卵焼きの様だ。魔道焜炉は呪力消費が激しいそうなので、魔石の補助を受けながら二人で交代しながら焼いている。

 消費呪力が多い魔道焜炉で一時間近くも火を出し続ける必要の有るご飯を炊くのは大変なので、未だに薪を使った竈だったりするのだが、そちらの状態も確認しながらの作業は大変そうだった。

 ふと、ただの火を出す魔道具がどうしてそんなに呪力消費が多いのか気になったので、天照に知っているか聞いてみる。


『炎の魔道具って消費呪力が多いって聞いたんだけど、本当なの?』

『はい、大抵の方の炎系の術は炎の仕組みが分かっていない為、非効率になってしまい、消費呪力も増えている様です』

『炎の仕組み?』

『火が燃えるには何が必要かを知らないのですよ』

『地球の知識をお持ちのご主人様には常識かもしれませんが、火が燃えるには、可燃物、酸素、熱が必要になりますが、漠然と炎を出そうとすると、それらの三つを生成する為、一つの要素で済む術に比べて効率が悪くなります』

『特にずっと熱をずっと加え続けるのが非効率なのですよ。酸素も周囲から供給させれば消費呪力を減らせるのですよ』


 確かに、一度火が付いてしまえば後は可燃物と酸素だけで良い筈だし、生成させるより周囲から集めるだけの方が楽そうだ。


『ですので、この魔道具の仕組みも漠然と炎を出す。という物なので効率が悪くなっています。攻撃の術ならば短時間ですし、酸素の供給を考えるとそれでも良いのですが、ある程度の時間、炎を出し続ける調理用には向かないかと思います』

『つまり、常に熱を加えずに、酸素を生成でなく、集める方法の炎の術を付与させれば効率は上がるって事なの?』

『効率の良い術を使えば効率が上がるのは当然なのですよ。主様が今言った方法だけでも今までの半分以下の呪力で済むのですよ』

『調理用でしたらもっと効果の高い方法が有ります。ご主人様の前世にも有った電気を使う方法です』

『こちらは電気を発生させるだけなので、更に半分程の呪力で済むのですよ』

『確かに効率は良さそうだけど、電気って電熱線を使うって事じゃないよね? IHの仕組みなんて知らないよ』

『無限倉庫内に現物が御座いますし、仕組みを説明した書物も収納されています。それをお読み頂き、現物を錬成空間にて解析する事で作成は可能です』


 無限倉庫には本も色んな種類が入っているみたいだが、助かる反面読み切れない程有っても勿体ないとも思う。

 まあ、今回の様に必要な物は天照が教えてくれるだろうから、あまり気にしなくても良いのだろう。


 食卓に戻り、天照が教えてくれた本を無限倉庫に入れたまま拡張視覚を使って粗方読み終わった頃に、丁度皆が集まり始めたので読書を終了し朝の挨拶をする。


「兄上方、おはようございます」

「ああ四狼、おはよう。今日は早いな」

「昨日は遅くなりましたので、今日は早めに来ました」


 偶然早く起きただけなのだが、折角なので便乗しておく。


「おはようございます。四狼兄上、術の修行は朝食後直ぐで良いでしょうか?」

「いや、食後は頭に血が回らないから、少し食休みをした方が良いよ」


 食後は直ぐだと消化に良くない気がするので、適当に理由を付けて少し時間を置いた方が良い事にしておく。

 どんな修行にするかもまだ決めていないし、先程の本の内容が気になっている。

 上手く出来れば色々な電化製品を魔道具化出来そうなのだ。

 つまり、桜花様が言っていた電気的な魔道具が作れそうなので楽しくなってきていた。

 五狼には悪いがそちらを優先させる事にして、まずは朝食だ。


 今日の朝食は先程台所を覗いた時に確認したが、細かく刻んだ肉と野菜に下味を付けた物を混ぜて焼いた卵焼きと、ほうれん草のおひたし、野菜たっぷりの味噌汁とご飯だ。卵の甘みの中に味を付けた肉や野菜が絶妙に絡み合ってとても美味しく、今日の朝食も最高だった。

 朝食を食べ終わり、お茶で一服していると父上が皆に向かって話し出した。


「皆、食べ終わった様なので言っておく事が有る。明日から久し振りの大規模討伐が急遽決まった。次郎と共に暫く留守にするので一狼、家の事は任せたぞ」

「はい、父上、お任せ下さい」

「四狼も五狼と三刃に修行を付けるそうだが、しっかり頼むぞ」

「はい、父上。それで、今回は何方へ向かうのでしょうか?」

「ああ、北に向かった後、東に抜けて東北を経由して戻る予定だ」


 北から北東に回るとなると、本島の北半分を走破する事になるから結構な時間が掛かりそうだ。


「それは、結構な遠征になりますね」

「そうだな、移動には自走車を使うが、要所毎に討伐任務が入る予定だから一月位掛かるだろう。五狼、三刃、その間しっかり修行するのだぞ」

「「はい、父上」」

「では、帰ったら修行の成果を見せて貰おう」


 そう言って父上は席を立ち、出勤の準備をする為自室に戻っていった。


「それでは一時間程したら始めるから、時間になったら屋外修練場に来てくれ」

「はい、四狼兄上」

「はい…」


 やはり三刃は乗り気ではない様だが、安全の為にも参加して貰わなければならない。


「三刃は今後も小太刀を主武装にするんだよな?」

「はい、四狼兄上、速度重視の私には太刀はまだ重いですから」

「分かったよ、それに合わせた武器を用意するよ」

「はい、四狼兄上、楽しみです」


 三刃は新しい小太刀が貰えるとなると急に元気になった。我が妹ながら単純な奴だ。

 二人に準備をすると言って僕も一旦自室に戻る。


 自室に戻った僕は留守番の為に分体を一人出し、ついでに五狼達の修行方法を考えて貰う事にして僕は複製世界に転移した。


 さて、まずは魔石の充電池を作ってみよう。

 昨日、天照に聞いた様に魔石を加工する為に錬成空間を展開し、白魔石を直径九ミリ、高さ二十七ミリの八角柱に形成し、辺の一つの下側の中央に、二ミリの正方形に窪みを作り目印にする。


 更に一つの角と対面の角に溝を作り、その溝に聖銀で形成した直径三ミリ、高さ一ミリの円柱で左右に細い糸状に伸ばした物を作り、白魔石の溝に糸を巻いて八角形の窪みの無い面の中心に固定し、接点の面の部分以外を銀で薄く覆う事で外形は完成だ。見た目は八角柱の単五電池の様な物にした。


 次は能力の付与だが、外殻の銀に魔力障壁を付与し周りに呪力が漏れない様にし、基点の聖銀に呪力制御を付与する事で、使用目的毎に必要な呪力を自動で供給する事が出来る様する。


 更に内包呪力を視覚化する為、先程付けた目印の反対側に呪力量が使用中に表示するよう幻術を付与する。赤い四角が最大値の時は八つ表示され、残量が減る度に数も減っていき、表示が完全に消えると残量が0だ。


 最後に使用済みの物は回収して再利用させる為、保護の術も付与し完成だ。ちなみにこの保護の術は強化と防汚の効果が有る。別々に付与するより効果は落ちるが、武器や防具でも無いので過剰な強化は必要が無いし、対象の負荷も減るらしいのでこちらにした。


 これで完成だが、未加工の魔石に比べて使用可能時間も能力も百倍以上になるらしい。

 一応の名前として、仮に魔石柱としておこう。


 次は魔石柱を簡単に交換出来る様に電池ボックスの様な物を作る。

 素材は何でも良いので、とりあえず今は軽銀で良いだろう。


 魔石柱が入る形と大きさに合わせた箱を作り、手前側の下に目印用の突起を付け、箱の奥側中央に呪力を流す為の接点として聖銀を逆V字型の板バネにして取付ける。


 最後に箱の中央を横に深さ一ミリ幅一センチ程削っておく。その片側の上に同じ大きさの孔を開け大きさを合わせた布を通す。この布の上に魔石柱を入れるので、布を引く事で魔石柱が簡単に取り外しが出来る。正に電池ボックスの様な物だが仮の名前として魔石柱設置装置、略して設置装置としておく。


 正常に使用出来るか試す為、魔石柱の接点と底を人差し指と親指で摘み、人差し指から呪力を流して充填していくと直ぐに呪力量表示が最大値になった。

 充填試験は成功したので、今度は充填した呪力を使用出来るかの試験の為、二ミリ程の金の玉から十センチ程糸状に伸ばし、玉の方に呪力を流すと光る様に術を付与する。

 試しに直接呪力を流してみると金の玉が光り出したので今度は設置装置に繋いでみると、こちらも問題無く光りを放ったので、これで魔石柱は完成だ。


 次はIHクッキングヒーターだが、概要は本で読んだので詳細を調べる為、無限倉庫から出したヒーターを錬成空間で解析していく。

 なんとなく構造が解ったので早速作ってみよう。細かい調整は天照がやってくれるだろう。


 素材は無限倉庫に入っていた耐熱性の高い樹脂を使い、横三十センチ、奥行き三十三センチ、高さ二センチの箱を作り、手前三センチで仕切りを付け、奥の正方形の中心に見本を真似た直径二十六センチのコイルを設置し、電極の先に直径二ミリの金の玉を付け、高周波交流電流を発生させる電撃の術を付与し右の電極から電流が流れ左に戻る様にする。


 更に玉の手前側から銀糸を伸ばし、スイッチに繋いでいく。スイッチの反対側には設置装置を繋いで内部は完了したので、最後に裏面に中央と過熱範囲に線を引いた樹脂を塗ったガラスをヒーターの上に固定し天板にする。


 スイッチはスライド式で、一番左で切。右に動かす度に火力を上げ、八段階で最大だ。

 設置装置にはガラスの蓋を付けて呪力残量も見える様にして、IH型魔道焜炉の完成だ。


 鍋に水を入れて試してみたが、問題無くお湯が沸いたので成功の様だ。

 後で秋穂母上にも試して貰い、感想を聞く事にしよう。普段使う人の感想は大事だからね。


 折角なのでフライパンの下に直接IHヒーターをくっつけた物も作ってみた。

 持ち手の手前側に設置装置を付け、その奥にスイッチも付ける。

 更にこちらは持ち手から直接呪力を供給出来るハイブリッド仕様だ。

 こちらも問題無くお湯を沸かせたので、最後に炊飯器の制作に取り掛かった。


 窯部分も自作し、米の量に合わせた水量の印を内側に付け、ヒーター部は窯に合わせて立体的にコイルを設置する。

 制御部は火力や加熱時間等、何度か試す必要が有るので、ここで作業は一旦終了だ。


 炊飯器以外の出来た試作品を八個ずつ錬成空間の複製機能で複製し、設置装置を三十二個、魔石柱も百二十八個複製する。

 一度作った物は材料を用意するだけで複製出来るのでとても楽だ。


 色々作っている内に予定の時間が近づいたので、元世界の自室に分体しかいない事を確認し、転移する。

 さて、次は五狼達の修行を始めるか。




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