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救助活動

ブックマーク有難う御座います。

今後も頑張りますので、宜しくお願いします。

 さて、最初の救助活動は他の要救助者より時間的に余裕が無さそうだったので、異世界のお約束、盗賊退治にしてみた。

 目的の場所上空に転移し、重力制御で地上から三〇メートル程上空に浮かびながら前方の地上を見ると、荷物を積んだ馬車四台を守る様に展開して盗賊らしき者達を撃退しようとしている護衛らしき者が八人と、それを取り囲む盗賊二十三人との戦闘が始まっていた。

 護衛側に魔術師が一人いるおかげで護衛側も善戦し二人倒した様だが、数が違い過ぎるので一人当たりの負担が大きい。お互いの技量的にも直に抵抗出来なくなるだろう。その護衛の中に背が低いが素早く動く女の子を見つける。この娘が僕好みと判断されたのだろうか? 確かに可愛いとは思うが桜花様には程遠いな。そう考えているうちに魔術師の肩に矢が刺さり、一気に不利になってしまう。悠長に見学している時間も無さそうなのでさっさと介入した方が良さそうだが、さてどう対応しようか。


『殺さずに無力化させる良い術って何か無いかな?』

『全体を無力化させるのでしたら、睡眠霧等ですが、その場合は護衛の方も眠ってしまうので、雷系の魔術を弱めに上から落とすのが宜しいかと思います』

『急に盗賊が倒れても理由が分からないと防衛側も不安なので、見た目は派手にした方が良いのですよ』


 成程、確かに襲ってきた者とはいえ、理由も分からずに急に目の前の人間が倒れたら吃驚するだろう。月詠の案を取り入れ術を使う為に呪力を集中させ呪力の大半を光にした雷が落ちる様子を想像して手早くこの場に居る盗賊全員に弱い雷魔術を打ち込んで麻痺させた。やはり天照の補助のおかげか呪力を籠めて願うだけで狙い通りの術が発動する様だ。その場に居た盗賊以外の者達が突然盗賊に降り注いだ雷に唖然としている。その隙に怪我をしている人達を治療しようと思ったが、先程の魔術師に刺さった矢が邪魔で治癒が出来ないので対策を相談する。


『この場合は不可視の手がお勧めです』

『どういう術のなの?』

『はい、空間に満ちている魔素を呪力で固定し、手や触手の様に扱う術です』

『この手で触れた物は主様が直接触れているのと同じ事が出来るのですよ。掴んだり殴ったりは勿論、無限倉庫に収納したり、触れていないと効果が無い各種魔術を離れた場所から掛けたり、触感を主様に伝える事も出来るので、精密操作や離れた場所から身体を弄って感触を楽しむ事も出来るのですよ』


 月詠の妄言は無視だ。それよりも。


『その魔素っていうのは何?』

『はい、大気中は勿論、水中や宇宙に至るまで、世界中に満ちている要素で、各魔術を使う時に効果の上昇や発動の補助をしてくれる触媒の様な物と考えて頂いて問題ありません。魔導金属は魔素を取り込んで魔力を発生させていますし、何もない空間に水等を発生させる事が出来るのは、この魔素が水等に変換されているからです』


 詳しい仕組みは良く分からないが、空間に見えない手を創造して動かせるって事なので試してみると、確かに見えないけど手の様な物が出来たのが分かる。その手を動かして矢を受けた魔術師から矢を抜いてやり、治癒するよう呪力を籠めてみるとあっという間に傷が塞がった。突然矢が抜けて傷が治っていったので呆然としている魔術師の気持ちが分からなくもない。後は動けなくなっている盗賊だが、この国の法律が判らないので、襲われていた人達に丸投げする事にした。護衛の人達がこの国の法に則って処理するだろう。この場所はこれで大丈夫だと判断し、次の襲撃場所に転移する。


 次の場所も概ね先程と変わらなかった。先程のは商隊の様だったが、こちらは貴族か何かなのだろう。高級そうな華美な馬車を中心に騎兵が六騎と歩兵が四人で馬車を守って戦っている。まだ死んでいない様だが二人ほど歩兵が負傷している様だ。襲撃者の方は既に八人程返り討ちにあっているが、まだ四十六人もいる。襲撃者の人数が妙に多いが標的は余程の大物なのだろうか? その標的らしき救助対象の女の子は馬車の中の銀髪の娘の様だが、桜花様に迫る程のかなりの美人だった。

 この場所もゆっくり見学してる場合でも無いので、先程と同じ様に襲撃者に雷を落とし行動不能にした後、負傷者の怪我にも治癒魔術を掛けてやりこの場を去る。まだまだ襲撃されている者は多い。急がないと。


 その後、四ヶ所で襲撃者を行動不能にしたが盗賊は初めの一件だけと意外と少なかった。天照に聞いてみると、物語では多くの盗賊が出て来るが実際にそんな輩が大勢いては国が回らないので、発見され次第兵士によって速やかに退治されるとの事だ。中には予算が勿体ないと被害が多くなるまで放置する国もあるらしいが、そんな国は国としての力が足りなかったり、物流が滞り国力が低下するので長くは続かず、暴動等で自壊したり、盗賊が力を付けて国の一部を乗っ取ったり、他国に侵略されたりして滅ぶのだそうだ。考えてみれば当然だ。盗賊がある程度放置されるのならば、盗賊に扮して少しずつ侵略していけば良いのだから。異世界のお約束だと思ってた盗賊退治はこの世界では偶にしか発生しない事件の様だ。

 後は遠くで襲撃を受けている者達だけになったので、残りは現場近くに転移した分体に任せる事にした。


     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 次は遭難者の救助だ。

 まずは海を漂流している人達が三ヶ所で、二十四人いたので地図上の検索で見つけた者二十三人を近くの陸地に転移させ、一人は山奥に転移させた。一人離したのは称号に[色欲の襲撃者]が有ったからだ。女性も半数近くいるのだから危険人物を他の要救助者と一緒にする訳にはいかないと思ったのだ。運が良ければ生き残るだろう。

 転移させた人達は海を漂流していた筈が、突然陸地に居る自分に混乱している様で「あれ、海じゃない?」「ここ、何処?」「何?何が起きたの?」「天国って意外と普通なのねー」等多少混乱気味だ。

 このまま放置しても助けた意味がなさそうだと思い。皆の前に出て行く。


「皆さんお怪我は有りませんか?」

「あんたは誰なんだ?」


 混乱している所に突然知らない人間が声を掛けたので警戒している様だ。仕方ないので言い直す。


「海に流されている皆さんを発見しましたので、魔術で陸地に引き上げたのですが、お怪我は有りませんか?」


 まだ成人前にしか見えない子供が魔術を使えると言っている事に始めは信じきれない様子だったが、実際海から引き上げられているので本当なのだろうと半分位の人は納得してくれたが、残りの内四分の一は警戒を緩めず、残りの人は未だ混乱しているのか放心している。

 とりあえず殆どの者が就寝用の薄めの服しか着ておらず、漂流していてずぶ濡れだったので女性陣の格好は僕には目の毒だ。男女を少し離して立って貰い、適当な言葉を魔術名として口にする。


「土壁」


 土を盛り上げて壁を作り、一応、お互いが見えない様に仕切りをしておいて、洗浄と治癒の効果を想像して呪力を放つ。


「癒しの雨よ」


 すると温水の雨が皆の頭上から降り注ぎ、海水や汚れを落としながら傷等の負傷を回復させる。


「傷が消えていく!?」「痛みが消えた?」


 皆が驚いている内に続いて次の魔術を発動させた。

 

「天使の息吹よ」


 今度は斜め頭上から温風が発生し、濡れた身体や服を乾かしてあげると同時に疲労回復も行う。


「なんだか身体が楽になってきたぞ」「身体が軽い?」「服が乾いたぞ」


 実際に体験したおかげで僕が魔術を使えるのを皆が納得してくれた様だ。

 落ち着いてくると今度は知人や家族がいない事に気付き始めたが、周辺で生きていたのはここに居る人だけだと伝えると泣き崩れる者や座り込む者、助かった事に感謝する者等様々だった。


 漂流していた理由を聞いてみたが、船で移動中だったり、漁で目的の海域に向かう途中だったが、暗くなってきたので交代で寝ていたら突然海に放り出されたらしく、また船の操船をしていた者はこの場には居ないそうなので、原因が分からないらしい。それ以外の二人もやはり自宅で寝ていたら突然海の中だったらしく、他の者以上に混乱していたので、一応住んでいた町の名前を聞いておいた。

 どうでも良いがこの国の人、寝るの早くない? それに暗くなってきたといっても、今日は五つの月が出ているので、こうして外で会話も出来ている位には明るい。


 他にも要救助者がいるので救助に行く事を伝え、皆には見えない少し離れた位置に複製世界で無限倉庫に回収した街の中から適当な宿屋の建物を配置し、今日はもう遅いのでこの建物で休んで詳しい話は明日にしましょうと言うと、何人かの人が身分云々で文句を言っていたが、嫌なら元の場所に戻しますよと言うと渋々従ってくれた。また海に放り出されては助からない事位は分かった様だ。僕にとっては身分等関係なく全員要救助者でしかないのだから、下手に出る必要も無い。一応部屋割りとして家族と女性は三階の奥から、男性は二階の奥から使って貰った。他にも要救助者を連れて来るからね。


 次は陸地の遭難者を救助だ。

 魔物に襲われたが辛うじて命は助かった者や、崖から転落して動けない者、森で迷って怪我をしていた者等、六ヶ所で三十五人いたので、この人達も地図上で検索に掛かった者をそのまま転移させ、怪我を治療してあげると、突然周りの景色が変わった事や、意識のある者達は治癒魔術の効果に戸惑いながらも感謝の言葉をくれた。


 話を聞いてみると、魔物に襲われて怪我をしていた者、四ヶ所十三人中六人が狩人で普段から動物や魔物を狩って生活していたそうだが、今回は普段は単体で行動している魔物が群れており、逃げながら戦って何とか追って来る魔物は撃退出来たが、大怪我をして動けなくなっていたそうだ。まだ死んではいなかったが腕とか足が半分千切れていた人もいたので、僕が救助しなければ時間の問題だっただろう。実際間に合わなかった者もいた様だ。

 残りの七人は森での採取をしていた所、魔物に出会って必死に逃げて何とか助かった者達だ。三人行方不明らしいが、ここに居ない以上、既に死亡しているか、無傷で帰宅しているかの何方かだが、こちらも望みは薄いだろう。


 崖から転落した人達は十四人いたが、それほどの高さでは無かったのか死人はいなかったが、二人が大怪我を、残りの者も全員が骨折等の怪我をしていたので既に治療済みだ。引っ越しや旅で馬車で移動中、馬車の足場が崩れて転落した様だが、馬車は使用不能な程壊れていて、馬車の下敷きになった馬は全て死亡していた。おそらくこの馬がクッションになったおかげで中の人は助かったのだろう。助けた人達にはそう答えておいた。当然、馬は放置したが馬車の方は回収済みだ。


 最後の八人は家で寝ていたら突然放り出されて怪我をしていたらしい。先程海で漂流していた人と同じ事を言っていたので住んでいた町の名前を聞いてみると同じ町だった。その町で何かが有ったのは確実の様なので地図で検索したが見つからなかった。何処か遠くから誰かに転移でもさせられたのだろうか?

 そしてこの人達にももう遅い時間だからと、詳しい話は明日にして先程の宿屋の部屋を提供し休んで貰い、次の救助に向かう前に海に漂っていた人達の荷物や船の残骸を可能な物だけ回収してみたが、二隻の船は片方が三割位、もう片方も二割強しか残っていなかった。投げ出された人達は本当に運が良かったのかもしれない。


     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 感染症等の病気になっている人が大勢いる地域には直接行かずに、地図上から検索で見付けた者に体調回復の術を掛けるだけにしておいた。

 これだけでも治る筈だが暫くは経過観察が必要だろう。


 最後に飢餓状態の人が多い地域に行って食糧支援なのだが、予定通り村長や町長の家の前や、村の中心に、人口に合わせて一月位持つだろうと思う量の食料を置いていくだけにする。

 例え分体を使っても、僕一人だけで数千万人もの人達に毎食食料を配るのは無理があるからだ。

 既に夜になっている場所も、まだ夕方位の場所も、無駄な体力を使わない為にか大半の人が寝てしまっている様だったので、誰にも気づかれずに作業を終える事が出来た。

 配った食料が無くなる一月後にもう一度確認して、一部の人が独占していた場所は次は配らず、ある程度公平に分配している場所にはまた配る事にしようと思う。

 大変な時に助け合えない人を、僕も助ける必要を感じないからだ。

 更に栄養状態が悪いせいか、体調を崩している者も多かったので、こちらにも検索から纏めて体調回復の術を掛けておいた。


『まさか”元気になーれ”が本当に効くなんて思わなかったけど、どれだけ簡単な世界なんだか』

『それで効果が有るのは主様だけなのですよ』

『結果が出るならそれで良いよ』


 慣れない事をしたせいか結構疲れたので、難しく考えるのも面倒だ。

 結果良ければ全て良しとしとこう。


     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 部屋に戻ると直ぐに月詠が話しかけてくる。


『主様、桜花様が緊急事態なのですよ』

『緊急!?』


 緊急だというので、急いで地図を確認すると城の一室に居る様だったが、何が緊急なのか分からなかったので月詠に確認する。


『緊急って何が有ったの?』

『千里眼で西側から直接見て確認すると良いのですよ』


 急いでいる時に新しい単語は止めて欲しいが、文句を言うより聞いた方が早い。


『千里眼って何?』

『遠く離れた場所に視点を飛ばして、離れた場所を見れる能力なのですよ。地図上から指定した場所を直接視認する事も出来るのですよ』


 月詠の言う通りに地図から桜花様の現在位置を千里眼で直接見てみたら、全裸の桜花様が見えた。実際の統計等は知らないが、年齢の割に育っている気がする胸や桜色のその先端、更に胸の中央に虫刺されの様な赤みを帯びた突起があったが、それよりも丁度湯船に入ろうと足を上げていたので、一番見てはいけない股間の付け根も丸見えだった。思っていた以上に綺麗な裸身に半ば思考停止した僕は、あの長い髪をどうやったらこんなに小さく纏められるのかな? っと現実逃避しながらも桜花様の綺麗な裸身に数秒見惚れてしまった。桜花様が完全に湯船に浸かって裸身が隠れた事で再起動した僕は、急いで千里眼を終了させ月詠を問い詰める。


『それで、どの辺りが緊急だったんだ!?』

『勿論、急がないと桜花様の入浴が見学出来ないからなのですよ』

『そんなの普通は見学出来ないし、したら犯罪だよ!』

『でも主様もしっかり見ていたのですよ?』

『緊急だって見たらいきなり裸だよ。突然過ぎて意味が分からなかっただけだよ!』


 全く悪びれていない月詠をこの後一時間程掛けて説教してやった。何とか今後は二度とやらないと約束を取り付けた後には随分疲れてしまったので、今日はもう布団を敷いてさっさと寝る事にする。

 疲れて眠い筈なのだが、先程の桜花様の裸が頭にちらついて中々寝付けない。結局その後一時間近く悶々としながらも、いつの間にか僕は眠りに落ちていた。


『やっと眠れた様なのですよ』

『月詠、あれは少し強引だったのではないですか?』

『主様にはあの位しておかないと駄目なのですよ。おかげで十分桜花様を意識してくれるのですよ』

『元から十分意識はしていたと思うのですが』

『覚醒で前世に引きずられ掛けていたせいか、今まで以上に身を引いていたのですよ。もっと強く意識して第一夫人にして貰わないと、次の嫁を探せないのですよ』

『まだ時間は有ります。焦らずに進めましょう』

『不確定要素が絡んでいるのですよ。慎重かつ急いで進めるのですよ』

『そうですね。ですがそちらの小物よりも、まずはあちら大物をどうするのか、だと思うのですが』

『そちらは主様なら問題無いのですよ』

『ご主人様が対処すれば問題は無いでしょうが、対処しなかった場合が問題なのです』

『そこはなる様にしかならないのですよ』

『それもそうですね。その都度考える事にしましょう』


 こうして四狼が眠った後も、二人の案内人の悪巧みは暫く続いた。


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