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魔法が繋ぐ空の下で  作者: ウザリース
第1章 『魔法が繋ぐ夢と友情』
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第1章 1話 『日常的な非日常』




 俺は確か、何かを探していたはずだった。



 決して失っちゃいけない....大事な何かを探すため、俺はここに来ていたはずだ。

 

 

 夜になっても、凍える水が足を突き刺しても...決して忘れちゃいけない何かがあったから、俺はここにいるはずなんだ。




 なのに....なのに...........。




*      *      *




「んぐ......んぁ.......」


「あ、大丈夫ですか!見えますか!?僕の顔が見えますか!!」


「みぇ.....ます.....」



 夢すら見てないような暗い空間にいた彼を起こしたのはその声だった。

 重い瞼を開けて、入ってきた光景。目の前には自分の体を必死になって揺すっている彼と同じくらいの年齢の少年が1人いた。

 

 顔は少し幼い印象を受ける。青みかかった長く黒い前髪は目にかかっており、髪の毛の先は首元くらいまで伸びていた。



(ん....?この人は女性か.....?)



 そう最初は思っていた彼だが、声は少し高いが男のものであり、その服装からして彼が男性であるのは明確であった。



「大丈夫ですか!?自分の名前...わかりますか?」


「うぅ.....天野.....日向....」



 天野日向(あまのひなた)...と名乗った彼はゆっくりと起き上がり、あたりを見渡す。

 川の土手...大きな橋の下。気がつけば自分が知らないところにいることに気がついたようだ。

 なぜ自分がこんなところに...?

 確か自分は何か、探し物を求めて川に来ていたはずだが....。


 しかしそこまで考えて、彼の回想は途切れた。なぜかそこから先の記憶がないのである。記憶喪失...ってほどではないが、コーヒーが滲んで見えなくなった本のページのように、一部一部がぽつぽつと抜け落ちていた。



「あ、あの....大丈夫.....でしょうか?」


「君は....助けてくれたのか?」


「いや、自分はあなたが倒れてたのを発見してここまで駆けつけただけです。別に何もしてません.....」



 日向を助けた少年は気恥ずかしそうな様子でこちらを伺っていた。立ってみたら小柄な体型なのもますます女の子っぽさに拍車をかける。



「ありがとう、ところで....えっと.....君の名前は?」


「僕?僕は...橘星翔です」


「星翔っていうのか?星翔、ちょっと聞きたいんだけど、ここってどこか分かるか?どうも俺は自分の知らない場所まで来てしまったらしい....」



 日向は本当に見ず知らずの場所に来てしまったことに困惑するしかなかった。今自分の格好は全く濡れていない。つまり流されてきたわけではないのだが、だったらなぜ今自分がここにいるのか理由を探る必要があった。



「え....?」


「ん?分からないのか?もしかしてこの近くの人じゃないのか?」


「いや、そうじゃなくて.......





    魔法で探ってみればいいんじゃないですか?」




「.......は?」



 日向は今、自分の耳を疑った。彼は今、何で言った?

 魔法で探る....?魔法.....?

 彼は記憶の一部を欠如しているとは言ったが、何も魔法が当たり前の世界にいた記憶なんて全くない。目の前で起きていることが現実ではない可能性が急によぎり始め、日向は自分の頭がおかしくなったのかと思い、悩みだした。


 そして次に思い浮かんだのは、ただの聞き間違いの可能性だ。魔法と聞こえたのは、自分のただの勘違い。

 本当はそれに近しい言葉、もしくは自分が知らないだけで“魔法”っていう位置検索アプリがあるのかもしれない。

 そう思ったが



「あ、ごめんなさい!今ここで倒れてたばっかなのに、魔力操作とかすぐにできるわけありませんよね。代わりに僕がやります!」



 彼はそう言って、何やら妙な動きをしだした...が、諦めたのか手元からスマートフォンを取り出し、そちらで調べ始めた。


 彼は...星翔と名乗る少年は確かに口にした。魔力操作という言葉を。


 彼の手にはスマホがある。服装も高校の制服と言われればおかしな点はない。橋の下、川、頭の上を横切る車の走る音。

 何もかも、日向が知っていた日常の光景であった。それなのに



「すみません日向さん...。今日ちょっと授業で魔力を使いすぎたのかうまくできず....あの.....住んでた場所を教えてもらえませんか?」



 魔力......。申し訳なさそうに訪ねてくる星翔の目に冗談も偽りも感じられなかった。

 当たり前の日常の中に、同じ当たり前の顔をして紛れ込む非日常。たったそれ一つだけで、日向の当たり前という価値観は崩されていく。

 

 

「あの....日向....さん?」


「星翔.......」


「え、な、なんですか?」


「日本の東京....って都市を知ってるか....?」



 腕が痛む。さっきまで砂利の上でうつ伏せになっていたからだろうか。しかしそれと同じくらい、心臓がバクバクと鳴っている。そういえば昼ごはんをまだ食べていなかったからなのか、お腹も空いている。

 夢だと思いたいのに、このあまりに当たり前の感覚が、彼に彼自身が今いる場所を紛れもない現実だということを突きつけてくるかのようだった。


 しかし夢とは見ている間は夢とは疑えない。

 だからこれも夢っぽく思えないだけで、本当は夢なんじゃないのか?そう思いたかったが



「東京.....?日本はそりゃこの国ですけど.....東京って都市は知りません......」



 星翔が初めて、日向をおかしなものを見るかのような目で見た。それに対するこのグサっと突き刺さるようなズキズキするこの一瞬の痛みが、彼が立つこの場所が現実であるという決定的な事実を教え、さらにこの世界で異常なのは自分の方だということを気付かされた。



 日常的な非日常.....自分が今この世界にたった1人で取り残されているのだと気が付かされてしまった。


 

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