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【題名変更しました】 『偽物』だと追放された元大聖女たちは、最強の相棒と運命の壁を乗り越える  作者: 柚木(ゆき)ゆきこ@書籍発売中
第四章 新たな地へと向かう聖女たち

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44、ミナを追え!

「……!」


 二人は息を呑んだ。小さく寝息を立てて安らかに寝ているレアの横は、何度見てもぽっかりと空いている。目を見開いて呆然とするベルドをよそに、ウルはレアへと近づいていく。そして彼女の肩へと手を置いて、身体を揺らした。


「レア、起きろ!」

「……ん……んんー? あれ、ウル?」

「ここは泉だ」


 いつの間にか二人が呼び捨てで呼んでいることにベルドは気がついた。二人の関係性がそこまで進んでいたことに驚きと、彼女(ミナ)とお互いを呼び捨てで呼び合う姿を思わず想像し……無意識に頬が緩む。しかし、今の状況を思い出し、その想像を頭から追い出すかのように頭を振った。今はそれどころではない。

 目を擦って上半身を起こしたレアに、ベルドは地の這うような声で告げた。


「ミナさんがいなくなった」


 ベルドはレアに告げたその言葉で、再度自分の落ち度を突きつけられていた。彼女たちは強い。だが、その強さも起きている時だけであることを忘れていたのだ。二人にして木の根元に寝かせ……最終的には連れ去られた。そんな呑気な自分に苛立つ。

 

「……え?」


 一方で、レアも現状を把握し始めていた。

 レアはベルドが指差した先を見ると、そこにはベルドの物らしきマントだけが転がっている。そのマントにはミナの神聖魔力がほんのりと残っているのが見てとれた。どうやらミナが連れ去られてから、まだ時間が経っていないようだ。


 ミナもレアも、ここの空気の清浄化のために大量の神聖魔力を使用していた。

 そのため、疲弊していたこともあり、周囲の気配すら気づかずに眠り込んでしまったのだ。

 

 レアは神経を研ぎ澄ます。確かに先ほどまでそこにミナがいたと思われる……理由はミナの神聖魔力の残滓があるからだ。それは来た道へと続いている。

 今なら彼女を追える! そう思って立ち上がったレアの身体から、ふわっと地面にマントが落ちた。それがウルのものであることに気がついたレアは、彼にマントを手渡す。その時の彼女の表情は、今までに見たことがないほど険しいものだった。

 

「ベルドさん、行きましょう」

「行くって……いや、レアさん。君はミナさんがどこに居るのか分かったりするのかな?」


 真剣な表情のレアを見たベルド。彼は疑うことなくレアに言葉を返す。彼女の瞳には有無を言わせぬ迫力があったからだ。レアはベルドの柔軟さに感謝する。今はどうのこうの話している暇はない。

 無言で頷いたあと、レアは二人に背を向けて走り出す。早くしなければ、彼女の神聖魔力の残滓が辿れなくなってしまうからだ。走り出したレアを見たベルドとウルは、顔を見合わせた後慌てて彼女の一歩後ろを走っていく。そして、走りながらベルドはレアへと声を掛けた。


「ひとつ聞いていいかい? どうして彼女の場所が分かるんだ?」

「ミナの神聖魔力の残滓が残っているから」

「神聖魔力……」


 ウルはレアの言葉に驚いているようだ。まさか()()が自分から聖女であることを言うなんて……。しかし、レアの話はそれだけではなかった。


「二人は気づいてると思うけれど、私とミナは聖女なの。ミナはランディアの元大聖女、私はグランテの元大聖女候補」

「……!」

 

 ベルドとウルは目を見張る。二人は聖女だろうと予想はしていた……けれども、まさか出身国が異なるなんて、考えもつかなかったのだろう。

 しかも普通の聖女ではない。『大聖女』と『大聖女候補』なのだ。それなら先ほどの強い光の意味も理解できる。あの腕輪は聖女の浄化の力を溜めるための物だけではない。その力を増幅できる仕組みになっている。

 尋常ではない光は、ミナとレアの神聖魔力によるものだったのだ。改めて二人の神聖魔力の多さだけではなく、ミナは魔法を……レアは剣を極めている規格外聖女であることを理解した。

 ベルドは申し訳なさそうにレアに声を掛ける。

 

「……僕たちに言ってもよかったの?」


 まるで捨てられた子犬のような声に、レアは目を丸くする。けれど、それがベルドの気遣いだと理解して彼女は微笑んだ。


「緊急事態だし、ミナも許してくれると思う。それに……二人は無理矢理教会に連れて行こうとしなかったでしょ? 私たちの意思を尊重してくれたから」


 走りながら微笑むレアに、ベルドとウルはほっと胸を撫で下ろした。


「僕らはてっきり二人ともグランテの聖女かと思っていたよ。ミナさんがランディアの元大聖女とすると、彼女を攫ったのはランディアの刺客かな」

「そうだと思う」


 話しながらレアはミナの連れ去られた方向を確認する。どうやら街とは反対に向かっているようだ。それを告げると、ベルドは眉間に皺を寄せてからレアたちへと話しかけた。


「二人は追ってくれ。僕はこの件を辺境伯に伝えてこよう……あ、腕輪を貸してくれるかい?」


 レアは外した腕輪をベルドに向けて投げる。ベルドはお礼を告げながら掴みとると、詠唱を唱えた。


「じゃ、行ってくる」


 その声が聞こえたと思ったが、すでにベルドの姿はない。レアとウルは彼女の残滓を追って必死に走ったのだった。




「ねえ、ウル。聞いていい?」


 ミナを追って走っている時、レアはウルに声を掛けた。そろそろ山の麓に降りてきたからか、先ほどよりもミナの神聖魔力の残滓がハッキリと辿れるようになったのだ。

 彼女の魔力を近に感じ始めたレアは、歩調を緩めていく。歩きで余裕ができたレアは、ウルに訊ねたいことがあったのだ。


「なんだ?」

「ベルドさんは私たちと合流できるかな?」


 ベルドの速さであれば、二人を追いかけることができるだろう。けれども、そもそも二人の位置が分からなければ意味がない。

 そう思ってウルに確認すれば、彼は静かに「問題ない」と告げた。


「ベルドが持って行った聖女の腕輪には、もうひとつの腕輪の探知機能がついている。それを追ってくるはずだ」

「へえ、そんなのがあるんだねぇ。なら大丈夫そうだね。あ、後もうひとつ聞いていいかな?」

「ああ」


 ウルの言葉にお礼を告げてから、レアは言葉を紡ぐ。

 

「あとさっきベルドさんは、私たちグランテから来た聖女だと思っていたんでしょう? どうしてグランテだと思ったの?」


 ミナとレアは非常に仲睦まじい。だから同じ国出身であると判断するのは分かる。けれども、なぜグランテなのか……それが不思議だった。ウルは最初言い辛そうにしていた。皇帝の伝手で入手した情報を公開して良いのか、と悩んだのだ。

 しかし、そこでウルは思った。多分レアは何故自分が追い出されたのかを正しく理解していないであろうということに。それに当事者に話す分には問題ないだろう、と判断した。


「グランテは教会の力が強いのは知っているか……?」


 その言葉にレアは頷く。

 ランディアはどちらかと言えば王族が強く、王族の意見に教会が従っているのだとか。一方でグランテは、教会の力が王家よりも強い。国の裏の支配者とも言えるほど教会が力を持っていた。

 その理由は、彼の国の首都の教会に枢機卿がいるからである。


「レアが追い出される前に、枢機卿が病に倒れたと聞いた」

「うん、合ってる」


 レアはウルの言葉に頷く。彼女を可愛がってくれた枢機卿が病に倒れたのは、レアが追い出される一週間ほど前のこと。その時のことはよく覚えている。


「病に倒れたと聞いて、私はあの方が休まれているという部屋へと駆けつけたのだけれど……お会いすることができなかったの」

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