第200話 ダリア・コンフォート①
200話突破記念SS
お陰様で200話突破することができました!
今日明日で新キャラのお話です♪
これからも異世界爆走をよろしくお願いします!
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ダリア視点
私がミルフィーユ王国に来たのは理由がある。
母国のイースト・パレスでコンフォート公爵家に生まれ、上に二人の兄がいる。
精魔大戦の英雄で、火の妖精と契約し、勇者ガンテツ様と戦ったドミニク・コンフォートの末裔である私の家族は、代々イースト・パレスに魔法使いとして仕えている。
もともと火の魔法に適性のある家系なので、父をはじめ上の兄二人はその才能を認められ、騎士団の魔法部隊として活躍している。
一方私はというと、家族には居ない者として育てられた。学校にも通わせてもらえず、使用人も私と接する時はよそよそしい態度をとる。
衣食住の心配はないし、虐待されているわけではないが、家の中では空気のような存在だった。
それもこれも私に魔力が少ないせいだ。魔法使いの大家として国を代表するコンフォート家において、魔法が使えない私は家の恥以外何者でもない。
子供の頃は魔力を増やすために色々な試みをされたが、結局、私の魔力が増えることは無かった。
それでもいつの日か魔力が増えた時の為に、魔導書を読みふけっている毎日。
そんな私をさらなる不幸が襲うことになる。ある時、国の中心にそびえる火の神殿から呼び出しがあり、使用人と一緒に訪れると衝撃の事実を告げられた。
神官に火の精霊フレイヤ様から神託があり、私に火の妖精と適性があると告げられたのだ。
こんな事はコンフォート家にとって初めての事であり、家族は対応に追われた。
コンフォート家はいくら火の魔法が使えても、伝説の魔法使いであるダミアンのように火の妖精と契約したものは居なかった。
それがお荷物でしかない私に適性があるのだ。
仮に私が火の妖精と契約してしまったら、家は面子を保てない事は明白だ。
魔法が使えない伝説の魔法使いとはお笑い草である。
そして家族がとった行動は私をミルフィーユ王国へ留学させること。つまり国外追放処分だ。
家族は私にいくら適性があっても、火の妖精と縁が薄いミルフィーユ王国に行かせてしまえば、火の妖精と契約はでないだろうと考えた訳だ。
「お前はミルフィーユ王国に留学して、縁を結んでほしい。分かってくれるなダリア」
「・・・はい」
久しぶりに顔をみた父からそんな事を言われた。要約すると私にミルフィーユ王国で夫を見つけ、大人しくしていてほしいと言うことだ。
悔しくて涙が出た。
そんなにも私が邪魔者だったのか。
ただ魔力が少ないだけなのに。
ミルフィーユ王国に旅立つ朝、馬車に乗り込むと、私と歳が同じくらいの男性がいた。
子供の頃に社交界で会ったことがある侯爵家のグレッグだ。
彼もミルフィーユ王国に留学するらしい。一人で異国の地に行かすのは心配だからと私の父に言われて留学する事にしたと語ったグレッグ。
・・・嘘だ。
どうせ私がミルフィーユ王国でおかしな事をしないようにお目付け役を任命されたのだろう。
「はぁ・・・」
またため息が出た。
その後、ミルフィーユ王立学園で通称ロイヤルクラスに入ることになった。グレッグも一緒である。
ここは、この国の第一王女のアドレーヌ様が所属している上位貴族向けのクラスらしい。
今はシップブリッジという街に行っているようだが、そんな高貴な方と一緒のクラスだと胃が痛くなる。
私はまともに学園に通ったことがない。
一箇所に大勢の人が集まって学ぶという経験がないのだ。
そんな私だからストレスが溜まり日に日に胃が痛くなって、ついにはロイヤルクラスに通えなくなってしまったのは当然の流れだった。
唯一の救いは、魔術妖精研究部に入れた事だろう。
この学園にきた当初、何気なく覗いた部屋が魔術妖精研究部だった。
顧問と思わしき先生に気に入られ、強引に部活に入ることになってしまった。部員が全員辞めてしまい廃部の危機だったが、私が加入することによって存続できると先生は喜んだ。
そこが今では私の癒しの場所になっている。
先生は滅多に来ないし、たくさんの魔導書や研究道具に囲まれた空間に一人でいる時間は最高だった。
ロイヤルクラスには行けないが、この部屋には毎日来ているから不登校ではない・・・と思う。
そんなある時一つの本を見つける。
棚の奥で埃を被っていたのでずいぶんと古い本のようだ。
そこには妖精の契約と魔法に関する内容が書かれていた。
どちらも私に関係する事なので、時を忘れて読みふけった。
「妖精の契約自体珍しいことだが、もし妖精と契約できれば、妖精が持つ魔力を使い魔法が使えるだろう」
その一文を見た時は思わず声を上げてしまった。
そんな事はコンフォート家の者は誰も知らない。妖精の契約はそれだけ謎に包まれたことなのだ。その答えの一部がこの本には載っていた。
私にも魔法が使えるかもしれない。私には妖精と契約できる適性があるのだ。
しかし、問題があることも事実だった。
そもそも妖精がどこにいるのか分からない。さらによほどの適性がなければ見ることさえできないらしい。滅多な事では人の前に姿を現さない妖精と契約すること自体奇跡に近いのだ。
途方に暮れていた私に転機が訪れる。
ロイヤルクラスに来れない私の様子を見にきたグレッグから社交界パーティの話を聞いた。
当初、グレッグがイースト・パレスを代表して参加する予定だったが、参加者の話を聞いて驚くことになる。
「噂だけど、妖精と契約した男が参加するらしいよ」
「えっ!」
私はそのパーティに参加を決めた瞬間だった。
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