お菓子の家攻城戦3
お久しぶりです。体調思いっきり崩してました。
一度車まで戻ってきた。そのまま乗り込み天神先生と今後どうするのかを話し合う。
「こっからどうします?事件もありますけど、三木優斗さんも探さないといけないですし。」
「射殺事件のことは置いといて、マンションのことを調べましょう。男性専用を謳っていることも気になります。近くの不動産屋にでも行きますか。」
「わかりました。でももういい時間な気もしますけど…。」
なんだかんだあったからかすっかり日も落ちてしまっている。不動産屋ももう閉店する時間帯だろう。
「うー、しょうがないですね。一度事務所まで帰りますか。」
「はーい。」
車を動かす。しばらくして高速道路に乗ると、さすがに都内なこともありそれなりの通行量があった。昼間のように道路は照らされており、視界の明るさには困らない。その代わり空は塗りつぶされたように黒に染まっていた。もちろん星などは見えない。
「…先生は星とか好きですか?」
「星ですか?あんまり考えたことがないですね。まあどちらかというと嫌いですけど。」
「嫌いなんですか?」
「あいつら詩的表現の塊みたいなものじゃないですか。そういったものは嫌いなのです。」
「意外ですね。天神先生そういう表現が好きかと思ってました。功績を讃えられる時とか詩的表現の方が良くないですか?」
「称賛されることは好きですよ。ですが、そういった表現を考えて言う奴が苦手です。」
「はへぇ。」
少し意外だった。天神先生は自身を讃える言葉や人のことが大好きなのかと思っていたが、人に限りそうではないらしい。
夜空の星を街の光が隠している。世界から愛される少女を照らすのは、煌々と輝くネオンライトよりも星の光の方が似合うと感じるのは私だけだろうか。いやこういった考えの人間が嫌いなのか。
見れば一等星はもとより、雲に隠されているのか月も見えない。38万㎞の距離を振り払うようにアクセルを踏んだ。
「…月が綺麗ですね。」
「寝ぼけるな。変態。」
その日は事務所に着いてそのまま解散となり、また調査は翌日に持ち越すことになった。
次の日の朝、天神探偵事務所に着くと天神先生が退屈そうに白黒のディアストーカーを手遊びにしていた。到着した私を見ると事務所の車のキーを放りながら叫んでくる。
「遅い!」
「一応時間通りですよ…。そんなに待ったんですか?」
「5分ぐらい?」
「そんくらい待てやぁ!」
「このボクを待たせるなよ!世界の損失だぞ!」
天神先生が何か言ってるが流石に付き合ってられない。さっさと車に移動して準備していると、頬を膨らませながら天神先生が助手席に乗り込んできた。どこかで買ったのかホットの缶コーヒーを飲んでいる。
「とりあえず不動産屋に行けばいいんですっけ?」
「マンション近くが好ましいですね。いい感じのとこを探してください。」
「はいはーい。」
「はいは一回。」
車を発進させた。昨日通った道を走っていると隣から何かうめき声のようなものが聞こえる。
「苦い…。苦い…。」
「…何で飲めないのにブラック買ったんですか?」
「そっちの方がかっこいいじゃないですか!」
「飲めなかったら意味ないでしょうが!」
「うるさ、ちょっ!前!前!」
「え?うおっ!?」
突っ込むことに夢中になっていると、前が赤信号なことに気づかなかった。慌ててブレーキを踏む。そのせいでコーヒーがこぼれて天神先生にかかってしまった。
「あっつ!!」
「うわっ!大丈夫ですか!?」
「…もう!お前何なんだよ!このボクをもっと丁重に扱えよぉ!!」
「すみません!でもわざとじゃないんですよ!」
「そんなこと知らない!ていうか最初っからボクに対する尊敬が足りないんだよ!ボクは名探偵で称賛されるべき人間なんだよ!だからそれ相応の対応を…」
「そんなのばっかじゃないですか!天神先生名誉しか考えてないし、虚勢だけだし!」
そこまで言って気が付いた。天神先生が顔を真っ赤にして体を震わせている。慌てて謝ろうとしたが先生の声にかき消された。
「もう知るか!」」
そう言って天神先生が車から降りて行ってしまった。追いかけようとしたが、ずっと止まっていたことに苛立ったのか後ろの車からクラクションが飛んでくる。天神先生の姿も見失い、どうしようもなく車を発進させた。
あいつは何なんだよ!ボクのことを全然尊重しないし!だってボクは名探偵だし!虚勢なんて一切張ってないし!全部事実だし!
あの馬鹿に対する愚痴を吐き出しながら歩く。夢中になって考えていたため、気が付くと不動産屋に着いていた。まだまだ沢山不満はあるがいつまでも考えていられない。というかこれ以上あいつに脳のリソースを割きたくない。
事務所に帰ったらクビにしてやる!!!
「頼もう!!ちょっと聞きたいことがあるのですが!!!」
まずいな、どうしようか。おそらくどこかの不動産屋に行ったのだと思うのだが、天神先生がどこの不動産屋に行ったのかわからない。というか単純に謝ってももう許してくれない気がするなぁ。
無い脳みそを回転させて考える。何か情報とか手掛かりとか持ち帰れば許してくれないだろうか。…そこで一つ考え付いた。
正直やりたくないが、しょうがない。例のマンションまで車を走らせ、昨日と同じようにマンションの入り口前に車を停めて待つ。そうしていると20代と思われる女性がマンションから出てきた。
車から降りて怪しまれないように後をつける。ある程度マンションから離れ、駅前の通りに入ったところで女性に声をかけた。
「こんにちは。お姉さん、今暇ですか?」
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