お菓子の家攻城戦1
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入り口を見張りながら質問する。女性が一人買い物袋を持ってマンションに入っていった。
「天神先生っておいくつなんですか?すごい若く見えますけど。」
前世ならデリカシーの無い質問だが、この世界なら問題ない。
「18ですよ。若くして大成しましたからね!」
「えっ、同い年?」
「ああ、そっか、君大学一回生でしたか。ちゃんと敬語は使えよ?ボクの方が立場は上なのですし。」
何故か訝しげにこちらを見てくる天神先生。なんでだよ。
「ちゃんと使いますよ。てかよくバイト雇おうとか思いましたね。」
「阿須原さんが車出してくれない時が多いのですよ。…あの人信用ならないし。」
「え?」
「何でもないですよ。」
なんか不穏なこと言ってなかった?よく聞こえなかったけど。
「ええっと、…何で探偵になろうと思ったんですか?」
「…それ言わなきゃダメ?」
天神先生が急に弱弱しい声を出したので驚いた。こちらの顔を伺うように見てきている。
「いえ。変なことを聞いてすみません…。」
「大丈夫です。そんな良くない質問でもないですし。」
場の雰囲気が一気に暗くなり、天神先生も毛布の中に引っ込んでいってしまった。前世の女性と話が合わない時を思い出す。どうしよう。なんか趣味とか聞いた方がいいのかな。好きな食べ物とか?
「えーと、天神先生好きな食べ物とかありま『うわああああああああああああっ!!!!』」
急に男性の大きな叫び声が聞こえる。見るとマンションの入り口から全裸の男性が飛び出していた。えっ!全裸!?
全裸の男性は裸足のまま走っていき、マンションの角を曲がっていってしまった。天神先生が慌てて毛布から出てくる。
「何ですか!?今の声!?」
「真っ裸の男がマンションから出て、走って行ったんです!」
「どこへ!?」
「マンションの左の角を曲がりました!」
天神先生は車を飛び出した。白黒のディアストーカーが落ちないように抑えながら男の消えた方へ走る。私もそのあとに続いて走り出したその時だった。
甲高いような鈍いような音が鳴り響く。フィクションの中でしか聞いたことのない音。それは確か。
天神先生に押し倒される。顔をひどくゆがめて天神先生が喋る。
「銃声です。」
注意深く周りを見た。人は見当たらない。車の通りもない。ゆっくりと倒れた体を起こし、しゃがんだ状態になる。
「ゆっくり、ゆっくり様子を見に行きましょう。警察を呼びながらボクについてきてください。」
震える手でスマホを取り出す。天神先生が周りを注意深く見てくれていた。何とか警察に通報しながら進む。そうしてマンションの角にたどり着いた。曲がった先をゆっくり確認する。
「…あ。」
先ほど飛び出した全裸の男性が頭から血を出して倒れていた。
しばらくして警察が到着した。発砲事件ということもありしばらく警戒が続いたものの、その後に何も起こらず、周りに不審な人物もいなかったため、事件現場での捜査が始まった。現場を取り仕切るのはあの相川さんだ。
「また天神君なのは置いといて…。何で君もいるの?有木君?」
「探偵助手のバイトです。」
「男を囲ったか。」
「違いますよ!?こいつが何故か来ただけで!」
何かを納得する相川さん。天神先生が慌てて否定した。
「ボクがそういうことに興味ないこと知っていますよね!?ねぇ!」
「いやでも…。まあいいや。今はそれどころじゃないし。」
「いいやじゃなくてぇ!!」
相川さんは天神先生を無視して続ける。こういうところ見習わないとな。
「被害者は銃で頭をズドン。病院に行くまでもなく即死だったようだ。被害者はマンションから出てきたのだっけ。」
「はい。叫びながら急に。」
「ほうほう。で何で君たちはここにいたの?」
「…依頼があったのですよ。恋人がいなくなったから探してくれって。でこのマンションがその恋人の住居だったのです。」
「ふーん。殺されたのはその恋人?」
「いいえ、違いました。」
そう。殺されたのは私たちが探していた三木優斗さんではなかった。では誰かというとわからないのだが。
「まあ誰なのかは割れているんだけどね。このマンションの三階に住んでる男性らしい。今からその男性の部屋に行ってみるよ。」
「へぇ。」
そういって相川さんはマンションの入り口の方へ向かった。天神先生は悪い顔をしてそれについていく。どうやら一緒に被害者の部屋を見に行くつもりらしい。相川さんは深いため息をついて特に注意もしない。責任問題とかにならないのだろうか?実績があるからとかいう話じゃ無くね?
そういってマンションの中に入ろうとした瞬間、初老の女性に声をかけられる。
「すみません。そちらの方々はどなたでしょうか?」
「うん?」
「ああ、こちらはこのマンションのオーナーさんだ。すみません、こちらは私共の協力者です。」
オーナーらしい初老の女性、よくある婦人服を着ていたが香水の匂いがきついのが気になった。眉間にしわを寄せてこちらをにらんでいる。
「申し訳ないのですが、マンション内に入るのは最低限の人数でお願いします。そんなに人いらないでしょ?」
「捜査の為でもですか?」
「うちは男性専用マンションなので。あまり人を中に入れたくないのです。」
男性専用?その言葉に非常に引っかかったが、相川さんが納得したようにうなずいた。
「しょうがないですね。はい天神君と有木君は出て行って。」
「いやでも。」
「ほーら!あとで中の様子を教えてあげるから。」
天神先生は渋々出ていくようだ。私もその後につづく。
「天神先生。」
「わかっています。マンションに女性が住んでいるっぽいことですよね。」
張り込みしていた時入り口を見張っていたが、男性は出てきていなくても女性の出入りはあった。
「きな臭いですね。このマンション。」
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