第20話『勝利と偶然』
「はあ……」
七月のとある日、森ノ宮駅。
暁美ちゃんは車両に乗るなり大きく溜め息をついた。
「何、今日はどうしたの?」
隣に座る優凛ちゃんがそれに応じる。
夕暮れ時だが相変わらず人が多い。
時間になったので電車が出発した。
「何って、テストに決まってるじゃん」
「あ、そっか」
「点はけっこう良かったんだけどさ」
「じゃあいいじゃん」
他人事のような優凛ちゃんの物言いに暁美ちゃんはは顔を顰める。けっこう良かった自分の点数をあまり気に入っていないのか。
「いいんだけどさー。宏美たちもびっくりしてたけどさ。中間と同じで。もう戦慄してたけど――」
「……」
「優凛に一個も勝ってない!」
どうでもよさそうな優凛ちゃんの顔から一気に興味の色が失せた。他人と比べることに価値を感じないのだろう。
「それどころか五教科の点数が五十点も離れてる! 毎日予習復習してテスト期間も一日しか遊ばなかったのに!」
「暁美って受験終わって春休み全く勉強してなかったじゃん――てか一日遊んだのかい」
「ぐっ……。そういえば中間の点数は? 優凛に聞いてなかったわ」
優凛ちゃんは少し思案して答えた。
「四百七十点」
「ぬわー! 聞くんじゃなかった」
そんなテストの点数ごときで大げさな……。
「毎日予習復習してるなら大丈夫でしょ、学年順位二桁は守れるぐらいには」
「次は優凛に一つぐらい勝ってみせる。結局受験で勝った教科なかったし――ってあれ?」
素っ頓狂な声を出した暁美ちゃんだが彼女を訝しむ人間はいない。
例によって、電車が急に停車していた。
人々に困惑が広がる前に、アナウンスは流れた。
いわく、人身事故らしい。人間の死体でも線路に落ちていたとでも言うのだろうか。動く様子はない。
「最近多いよねー」
「そうなの?」
「遊びに行く時にたまに起きてる」
俺にとっては久々だったがやはり最近は多いらしい。原因とかあんのかねえ。
「ふーん」
「ふーんって、優凛は他人事だなあ」
「まあ実際他人だし」
「そうだな」
人それぞれ、適当に時間を過ごしているといつの間にか五分、十分とどんどん時間が経っていた。
大事な食事会でもあったのかサラリーマン風の男が頭を下げて詫びている。何も電話越しに頭下げなくてもいいだろうに。気持ちはわかるけど。
「そーいや、今日山下先生いなかったらしいよ」
「ふーんそっか、何で?」
「いやなんか、お母さんが亡くなったとかで」
「あーそりゃ仕方ない」
「またそんな適当なこと言ってー。本当は心配なんでしょ?」
暁美ちゃんがそう言うと、優凛ちゃんは押し黙った。
「しょーもない嘘ついてもしょーもないよー」
「うるさい」
にしても、山下先生と来たか。生徒の間で話題に上がるくらいだから人気というか、人望みたいなものがある先生なんだろうか。若い先生なのかもしれない。
まあ、気にかける程でもない。名前も偶然だろう。




