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青春してる奴らと眺めるだけの奴  作者: 奈宮伊呂波
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第18話『進級と変化』

 桜の季節は春だと思われているが開花は三月の末頃なことが多い。三月が春だと言われればそれまでだがこれは有名なことである。

 開花が三月だとしても、桜が似合うのは四月ではないかと俺は思う。四月という始まりの時期に桜のイメージは寄っているからだ。


「てか優凛と帰るのって久々じゃない?」

「そうかも」

「久々ってか高校入ってから初めてじゃん」

「そうかもね」


 四月中旬。入学式や始業式のイベントは終わり新一年生は通常授業に入った。

 優凛ちゃんと暁美ちゃんの初登校の日に合間見える事はなかったけれど新しい制服姿を拝むことは出来た。二人は長袖のカッターシャツに長袖の薄いカーディガンを着ている。

 優凛ちゃんは薄い青色のカーディガン、暁美ちゃんは茶色のカーディガンだ。

 高校は桃谷駅の近くにあるらしく、これからは放課後とは言わず、毎日二人に会えるかもしれない。


「私ら違うクラスだけどさ、優凛、友達できた?」


 暁美ちゃんにとっては純粋な心配なんだろうが優凛ちゃんには酷な質問だ。中学と同じようにあまり友達はできないだろう。人見知りってわけじゃないけど人付き合いに難はありそうだ

 その証拠に、優凛ちゃんは苦々しい顔を――あれ?


「まあ、一応?」


 予想とは反対にそこには誇らしげに胸を張りつつ、若干の照れを見せる優凛ちゃんがいた。


「ふーん」


 暁美ちゃんは嬉しいとも寂しいともつかない微妙な表情を浮かべた。


「暁美、今日までの放課後は何してた?」

「何で?」

「なんとなく」

「――あーそっか」


 理由を聞くと暁美ちゃんは得心したように一度頷いた。


「ん?」

「わかっちゃったわ」

「何が?」

「私が優凛から離れるか心配してるんでしょ?」


 俺にはそう見えなかったが、仲のいい暁美ちゃんはそう思ったらしい。


「は?」

「最近話してなくて高校の友達とばっかり一緒に帰ってるから不安になったんでしょ? 優凛友達少ないからねー」

「違うから。ていうか暁美もう友達できたのね」


 話を逸らしたのか、本当にどうでもいいのか俺には判別つかない。


「当たり前じゃん。まあ、高校生にとって死活問題みたいな?」

「いなくても死にはしない」

「寂び死ぬわ」


 まあ、子供にとっては学校が全てと言える。その中で一人っきりで過ごすのは息苦しいなんてものじゃないだろう。大多数の人間がそう思うはずだ。


「暁美ってすぐ友達できるよね」

「ふつーふつー」

「普通は無理だと思うけど」

「才能なんで」

「確かにそうかもね」

「あれ?」

「人と仲良くなる才能。それってとても大事だよ」

「う、うん。素直に褒められるのも照れるなあ」


 珍しく暁美ちゃんが照れる姿を見た。いつも優凛ちゃんが照れてる気がする。


「他に取り柄がないし」

「ひっど」

「ふふん」

「何で得意げなの?」


 優凛ちゃんは変なところで自信家だな。


「てか優凛も人のこと言えないじゃん」

「え、何が?」


 暁美ちゃんの言うことにいまいち心当たりが無いみたいだ。


「私見たんだよね。優凛が男子三人といるところさ」


 全くわかっていない様子の優凛ちゃんを見て心配になったのか、少し控えめに言った。暁美ちゃんがちらっと優凛ちゃんの顔を覗くと、反対側を向いてしまった。

 これは当たり、と暁美ちゃんは攻撃の手を強めた。


「やっぱりいたんだ! あの三人だよね。渾名がキモいやつら」


 酷い言われようだな。


「いいでしょ」

「ダメとは言ってないよ? いや友達がいない優凛が男子と仲良くなるなんてねー。それで、誰がお気に入り?」


 お気に入りとは、つまるところ恋愛相手を指すのだろう。気になるのも仕方ない。高校生の男女が集まれば必然的にそうなる。そうなってしまう。

 男女間の友情はありえない。友達程度ならありえてもいいが、同性の親友と同じくらい仲のいい異性の親友を作るのは無理だ。

 だからまあ、優凛ちゃんが男子といるのは何かしら友情以外の感情があるのだろう。


「そんなんじゃない」

「ならどんな?」

「どんなって言われても」

「いいよーゆっくりでいいよー」


 優凛ちゃんに今の気持ちを適切に表す言葉を探す時間が与えられた。

 でも、口を開いたり閉じたりしている優凛ちゃんを見ると、どちらかと言うと優凛ちゃんは言葉どうこう以前に言うかどうか迷っているように思える。

 しばらくした後、大きく息を吐くと優凛ちゃんの唇は動き始めた。


「なんというか、好きってより、安心するみたいな」


 優凛ちゃんは正解かどうか確かめるように暁美ちゃんを見る。


「ふーんそっか。優凛もそんな年頃かー」

「だからそんなんじゃ――」

「どう考えてもそういうことだっつの」


 さっきまでのおちゃらけた口調から一転して、乱暴な言い方に変わった。声音は優しいままだから怒っているわけではないようだ。


「ね?」


 暁美ちゃんは念を押して優凛ちゃんに自覚させようとした。でも優凛ちゃんも自分の気持ちに気づかないほど鈍感でもないし、後は認めるだけだ。

 優凛ちゃんは何が言おうとして開いた口を、閉じてもう一度開いた。


「そうかもしれない」


 耳まで真っ赤にしながら小さく呟いた優凛ちゃんを見て、暁美ちゃんは満足そうに頷いた。


「応援する」

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