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けれどそうはならなかった。あいつも狂っているが、そいつも狂っていた。狂った二人が顔を合わせれば、普通じゃない事態が起こるのは当然の成り行きだ。
俺が降りる予定の駅で、あいつも降りた。大きな駅だからな、乗っていた客の殆どがその駅で降りる。別になんてことない出来事だ。偶然ですらない。隣の車両からはそいつが降りる姿が見えた。
俺の目的地はパチンコ屋だった。あいつが向かうのも、パチンコ屋の方向だ。自然と俺は、あいつの後を追いかける形になった。どのくらい離れていたかな? あいつはオヤジのくせして俺よりも歩くのが早かった。少しずつ距離が離れていく。パチンコ屋までは歩いて五分くらい。十メートル以上は離された。あいつが途中赤信号で立ち止まっていたにもかかわらず。俺はラッキーにもオール青だったけどな。
背後から強めの足音が聞こえてきた。なにやら興奮気味の声色だった。その声と足音が、俺の脇を通り抜けていく。
三人の男たち。皆が同じような服装をしている。顔も似たようなものだ。声にも足音にも個性がない。
あいつだ! 早くするぞ! 逃げられちまう。
ブカブカのサングラスが横目に映った。なんだ、さっきの奴じゃないか。と思ったのも束の間、三人ともが同じサングラス。どいつがさっきの奴だ? っていうか本当にさっきの奴がこの中にいるのか? 本気でそんな気がしたんだ。どいつもこいつも、最近の若者は見た目だけじゃ区別がつかねぇな。まぁ、中身を見ても似たようなもんだ。
ぜってぇ許さねぇ! 電車で恥じかかせやがってよ。
声に覚えはなくても、中身に覚えがあった。やっぱりさっきの奴だ。俺は目的を変更してそいつらを追いかける事にした。
おい! 待てよ! 俺を忘れたなんて言わせねぇからな!
そいつの声は虚しく街中に消えていった。あいつの耳には届いていない。あいつは俺が行こうとしていたパチンコ屋の中に入ろうとしている。
くそっ! シカとしてんじゃねぇよ!
そいつはダッシュであいつに飛びかかった。流石にあいつもビビっていたな。俺だってビビったよ。そいつのダッシュは、想定外に早かった。
胸座を掴み、ちょっと顔貸せや、なんて台詞を吐いていた。感情のない三文芝居。俺は思わず声を上げて笑った。あいつも、クスッとだが笑っていた。
バカにすんじゃねぇ。いいからこっち来い。話があんだよ。
そいつはあいつの首根っこを掴み、裏路地に連れて行った。そいつの仲間二人も後を付いて行く。俺もその後を追いかけた。
俺はちゃんと距離を取り、四人から見えない位置から覗いていた。やり取りをしっかり聞く為、それなりに近付いた。バレたら巻き込まれる危険はあるが、それでも好奇心には勝てない。




