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 そうだよな・・・・

 あいつは少し臆病なところがあった。やる事は滅茶苦茶だったが、すぐに後悔したり悩んだり、不思議な奴だ。その後の言葉も滅茶苦茶だった。誰か忘れたけど、その中の一人が金がないと言い出したんだ。ふざけた奴だよな。金がないのを知りながら、誰にも言わなかった。そのくせその中で一番高い料理を食べていた。それも確か、三品は頼んでいた筈だ。

 それじゃあ、やるか?

 あいつが何を言いたいのか、薄々は気がついていた。ここまで話を聞いていればお前だって分かるだろ? そうなんだよ。あいつはいつでもとんでもない事を言い出す。

 その日が初めてだった。万引きくらいなら当たり前だけど、食い逃げってのは考えた事もない。俺達にとって万引きは遊びの延長でも、食い逃げは犯罪だと考えていた。まぁ後になって知ったが、どっちも同じなんだよな。そうなんだ。どっちも遊びの延長。その後は何度も繰り返していたけれど、捕まった事はない。

 初めての食い逃げは、単純だった。

 チャリの鍵をよこせ。

 あいつはテーブルの真ん中に皆の顔を集めて、そう言った。頭が良かったのかも知れない。学校の成績はまるでダメだったけれど、悪知恵は働く。集めた鍵を俺に渡してこう言った。

 皆のチャリを入り口近くに持って来い。今から言う順番通りに並べるんだ。あまり近付けて置くなよ。適度に離して置けよ。遠過ぎるのも困るからな。準備が出来たら合図しろ。どんな合図でも構わない。お前は一番初めに逃げるんだ。

 皆の鍵を手に取り、俺は頷いた。そして一度トイレに寄ってから外に出たんだ。緊張して漏らすのはごめんだからな。あいつらはまだ打ち合わせを続けていた。逃げる順番とか、その後の落合いの場所とかをだな。俺は真っ直ぐ公園に向かうとあいつに言った。

 あいつの指示通り事を済ませて合図を送ろうとした。そこで一つ問題が起きたんだ。なんでもいいと言われても困るんだよな。当時は携帯なんてなかったからよ。店の中に戻るなんて無理だろ? それじゃ俺が一番に逃げられなくなる。どうすればいい? 窓側に座っていたとはいえ、歩道との間には訳の分かんねぇ花壇があって手が届かない。小石を投げようにも小石がないんだ。全く最近の道路はどうかしている。大きな石は転がっているくせに、ちょうどいい小石を探すのは一苦労。大声で叫んでみたけど、分厚いガラスが邪魔をして車の音にかき消され届く筈もない。取り敢えず俺は、自分のチャリンコに乗って行ったり来たりしていたよ。あいつらに気付いて貰えるようにチャリンチャリンベルを鳴らしてな。

 あいつはまるで気付かない。早くしろよと思ったね。せっかく並べたチャリンコが盗まれたらどうなるんだよ。盗まれなくても邪魔だとどかされる危険はある。俺は先に逃げちまおうかと何度も考えた。

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