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ありがとうが蟻が十の世界で  作者: でつるつた
2日目 前
36/60

第三十六話 アスナの過去

 △△


 「有安にはね、いくつかの属があってそれぞれまとまっているの」

 「王属、姫属、そして従属。 この従属の中にもさらに細かいまとまりがあるのだけれど」

 「私は察しの通り、姫属に生まれたのよ。 あ、この属の決まり方は生まれがどこかっていうので決まるわ」

 「本来この3つの属は互いに抑制しあいながら平等な立場にあるべきなのだけれど、あの第二次世界大戦の時の、……曲血の奴らによってもたらされてしまった直血の大量殺人によって王属の王が変わってしまったのよ。 その王は姫属、従属の話なんてそっちのけで日本を支配……独裁していったわ」

 「あ、この話は……え? ソナから少し聞いてるって? なら話が早いわ」

 「従属の話を聞かないのはまあ身分がそもそも低かったので仕方ないのだけれど、どうして姫属の話が受け入れられなくなってしまったかわかる? 」

 「いや、話は受け入れられていたのよ」

 「その意見をする人が……姫じゃなくて〝側近〟だったのよ……」

 「ソナの側近は私がしているけれど、側近は原則男がするものなのよ。 まあ、それはそうよね。 男の方が平均して力も体格も大きいわけだし」

 「今までは直血の側近だったから姫の話が通っていたのだけれど、さっき話した直血の減少によって姫の側近が曲血になってしまったのよ」

 「……それは姫属が〝王属〟になったことと同じだわ」

 「……男は……力も体格も大きいから姫はどんなことを思って意見しようとしてもそれらを駆使されて何も言えなかったの」 

 「挙句の果てには殺すって脅されていたみたいなのよ……」

 「ほんと、男ってくずよね……」

 「だから私はこの腐った体制をぶっ壊してやろうと思ったのよ」

 「ただ、見ての通り私は体格がとても小さいわ……さらに女だから側近になるなんて夢のまた夢」

 「だから、努力をしたわ」

 「養成所の周りは男だらけでね……。 女だからとかチビだとか、そんな暴言は日常茶飯事。 そんな幼稚なのならいくらでもいいんだけれど。 ひどいときは思い知らせてやるとか言って殴りかかってきたこともあったわ」

 「いつからか、お風呂に入るのが嫌になってね。 痛いのよ、体が。 アザだらけになってしまってね……。 訓練以外の傷が染みるし、何より、傷だらけの体を見るのが嫌だった。 」

 「自分自身が弱いことの証明をまざまざと見せられている気分になるのよ。 ……それに一応私は女子をさせてもらっているのよ。 そんな心、とうの昔に捨てたと思っていたのだけれど」

 「そして最初のぶっ壊してやるという目標は見えなくなって、どうして私がこんな目に遭わなきゃいけないのって思うようになった」

 「ぶっ壊していたのは私の精神と体だった」

 「もうそのころから、死んでもいいなって思うようになって」

 「そして、いつものように男から殴りかかられてきたとき」

 「目の前に、現れたのよ。 ……私の救世主。 ソナが」

 「勿論、その男たちを蹴散らしたのはソナについている人だったんだけれどね」

 「噂では聞いていたのだけれど、ソナも直血だからなかなか姫にはなれなかったみたいでね」

 「その時の言葉は忘れないわ……『やっと、お話をすることができました……。 この時まで生きていてくれて本当に感謝します。 どうか、私と一緒にこの日本を変えませんか? 』って言われたの。 私はその時、ああ、自分がしてきたことは間違っていなかったのかと思えたわ。 やっぱり、人は一人では生きていけないのね」

 「そこからはソナと一緒に日本を変えるために全力で努力をしたわ」

 「そして、晴れて私は側近になることができたのよ。 ただ、ソナは姫になろうとしたのだけれどその時の姫が私たちに、一般人の中に日本を変えると考えている人たちがいるということを教えてくれてね」

 「その場所が橋義高校。 そうしてあなたたちに会えたってわけ」

 「その姫から頼まれたのよ。 この腐った体制をぶっ壊してって」

 「私たちは勿論、承ったわ」


 △△


 「少し話の趣旨がそれちゃったけれど、つまり私はソナに恩返しのつもりで接しているの」


 ふぅ…… と息をつき水を飲むアスナ。 正直、なんて反応すればいいのかわからなかった。

 軽はずみな同情は不要だと思うし……

 だから俺は、

 

 「……すまない」


 と、自分でもわけのわからないことを言った。


 「なんでユウが謝るのよ。 ……あ、私が男が嫌いって言ったから? 安心して」


 そうして、アスナは今まで見たことないくらいのいい笑顔で、


 「私はあなたたちを信じているわ」


 といったのだった。

 ハジメ、いい報告だ。 アスナはツンデレではないが、ツンオンリーではなかったぞ。 と、流石にこんなにシリアスな話をしてこのコメントでは終わらせない。


 「ああ。 俺も、お前たちを信じている」


 そう、信じる。  やはり俺が考えた通り、このメンバーにおける信じるという勇気は少なくてよかったのだ。

読んでくださり、本当に感謝しかありません……!

今回の物語は第十話を見ていただくとさらに理解が深まるかと思います。



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