第二十九話 買い物
△△
「本当にすいませんでしたぁ……! 」
テーブルを挟んで向かいに座るソナがぺこりと頭を下げた。
「……いや、別に大丈夫だから」
俺はアスナのドロップキックによって赤みがかってしまった頬を触りながら言う──
あの後、俺は2度目のそれを喰らわないためにあの状況に至る経緯を説明した。 俺1人じゃ無理だっただろうが、ソナも一緒に説明してくれたためなんとか助かったのだ。 ……説明中のアスナの目は、……うん、思い出すだけで身震いする。
「何を謝っているのよ、ソナ。 そんな変態野郎なんかに」
ソナの隣に座るアスナがゴミを見るかのような視線を送ってきた。 ……あれ、誤解が解けていない? っていうか、謝るべきはソナじゃなくてアスナだろっ!
「いえいえ、私が寝ぼけていただけなので、ユウさんは変態じゃありません! 」
「いいや、コイツ、なんかそんな感じのこと言っていたけれど、意識の無いソナをいいことになにか別のことを考えていたに違いないわ……! 」
……うう。 ソナ、俺を助けてくれっ……! 渋々、俺は目の前のトーストを手に取る。 すると、
「うんうん、ユウはそういう所あるからねー」
とハジメが水を飲みながら、俺の身はどうでもいいように言った。 ……お前、俺に死んで欲しいのか……?
「おいハジメ、おま」
言い出そうとすると、
「あ、せっかくアスナちゃんとソナちゃんが作ってくれた朝ごはんが冷めちゃう」
と、強引に話を遮った。 ……オレハオマエヲユルサナイ。
「と、とにかくユウさんは何も悪くありません! ハジメさん、アスナ、いいですか? 」
「はーい」
「……まあ、ソナが言うなら仕方ないわね」
俺の身を案じてくれたソナが念を押してくれた。 ……本当に助かった。
△
「ふわぁぁぁ……おはよう、みんな」
朝食の片付けをしていると、まだ半開きの目のままカスミ先生が起きてきた。
「おはようございます、先生。 勝手に冷蔵庫のもの使わせてもらいました」
アスナが皿を洗いながら言う。
「んぇ? ……ああ、いいよー別に」
軽く手を上げて眠そうに答えた。 ……朝弱いのかな?
「んぁ、そうそう……」
まだ寝ぼけている口調でカスミ先生は言う。
「今日は買い物って予定だから……みんな準備しといてねぇー」
そう言うとカスミ先生は洗面台へと向かった。 そういえば、昨日ハジメがそんなこと言ってたっけ。 ……ふむ。 買い物か。 一体、何を買うのだろうか……?
△
「よしっ! 準備オッケーかな? 」
さっきとは打って変わって化粧バッチリのカスミ先生は元気よく言った。 この切り替え様、日頃と先生の顔を使い分けているだけあるな。 はーい と俺ら4人が応える。
「それでカスミ先生、どこに行くんですか? 」
正直、外に出ることは難しい。 普段は有安の者に対してだけ気をつけていれば死なずには済む。 ……ただし、今回はソナ、アスナという〝元〟有安の者がいる。 昨日、ケンやアガサ先生からの襲撃があったように、どこから攻撃されるのか分からない。 これは一般人、つまり俺らと同じ身分の者に対しても警戒しなければならないことを示す。 ……もしかすると有安の者よりも危険かもしれない。 その点についての考慮はあるのだろうか。
すると、カスミ先生はウインクをして、
「それはヒミツ。 だけど、しっかり考えているから安心していいよ」
と言った。 俺たちはカスミ先生の運転する車でその目的地へと向かった。




