帝国の道2
しかし、王国と帝国は随分と近づいたものだな。心の中でそっとそんなことを考える。
間違いなくアンネの件が切っ掛けなんだろうとは思うし、今回の話は陛下が直接うちにきて、俺の人品を確かめたからだろうが。
「帝国も野盗はあまりいないんですか?」
揺れる馬車の上、俺はなんでもないように尋ねた。場合によっては凄く無礼にあたる可能性はあるが、だとして鍛冶屋のオヤジが言うことだしと、流してもらえるかもと言う計算もある。
「そうですね。少し増えた時期もありましたが、今は落ち着いています」
「増えた? ……ああ」
ハリエットさんが静かに言って、俺は納得する。
帝国では以前に革命騒動があった。ヘレンがそれに巻き込まれた、と言うのはさておき、その革命は失敗した――でなければアンネや陛下はうちに来ていない――そうなので、革命側の残党で野盗に身をやつしてしまった者もそれなりにいたのだろう。
「このあたりはご覧の通り、草の丈も長くないですし、見通しが良すぎるのは彼らにとっては良くないようで」
ヴィクトリアさんの言葉に、俺は首を巡らせる。警戒はしつつもあまり意識できていなかったが、このあたりの草は腰くらいの高さがせいぜいで、伏せれば身を潜めることはできるだろうが、獲物を物色したり奇襲をかけたりするには不向きだ。
木もあまりないし、山からも少し離れている。なるほど良いところに街道を通した……というよりは、こういうところだから道ができたのか。
そもそも野盗の心配はあまりないし、仮にあっても俺より腕が立つかも知れないアネットさんとカテリナさんもいる状況、かつ、身を潜めるようなところはないにもかかわらず、その姿が見えない帝国側の密偵の方々もおられるのだろうから、のんびり景色を楽しめば良いとは自分自身でも思う。
だが、本来は危険な〝黒の森〟住まいだと、それなりに警戒をしてしまうな。
そうして周囲を見つつ、まだ全然先にあるのだろう、それについて俺は言った。
「そういえば、私は帝国の村や町ってちゃんと見てないんですよね」
「おや、そうでしたか。いえ、そうでしょうね」
ハリエットさんが意外そうな顔をしたが、すぐに頷いた。この様子だと、俺が革命騒動の時、帝国に潜入したことがあるのは知ってるっぽいな。
ここまでの景色同様、帝国の町についてはあまり記憶がない。大体は日が落ちるくらいに町に入ったし、一番活発に動いたのも夜中のそれも革命の混乱の中だったしなあ。
「王国の町にも多様な種族がいると思いますが、帝国の町はもっとですよ」
「そうなんですか」
言われてみれば、都には結構な種族がいたが、街のほうはある程度決まった種族がいたような気がする。
帝国なら町でも王国の都みたいに色んな種族の人々がいるってことだろう。
もちろん興味本位で声をかけて、あれこれ尋ねたりなどということはしないが、それでも色々な種族の人々に出会っておく必要はあるだろうな。
いつどんな種族の人がうちに来るかも知れないし、その時に妙な誤解やすれ違いをしてしまうことは避けたいからだ。
それでも、我ながら失礼な話だとは思うのだが、例えばエルフやドワーフのように、前の世界では出会えないような人々と出会えるかも、となれば、少しワクワクを感じてしまうのも事実だ。
僅かな興奮を押さえつけるため、俺は視線を街道の先に移した。
また別途活動報告にも書きますが、現在2月の投稿予定では2/23(月)が投稿予定になっています。
この日が祝日であることを失念しておりました。そのため、2/23(月・祝)はおやすみの予定に変更いたします。
予めご了承、ご寛恕いただければと存じます。




