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防犯カメラ

僕は防犯カメラを購入した。

きっとまた繰り返す。その時に備えて防犯カメラをネット注文した。

ほどなくして自宅にカメラが届いた。だけどすぐに設置しなかった。

まさか数日の間にことが起きるとは考えていなかった。

その考えは甘かった。

部屋から現金が消えたことは妻にも息子にも打ち明けている。僕が警戒しているのは承知のはずだ。

しかし一ヶ月もたたない間に信じられないことが起きる。

母からもらった祝い金の5万円。4万円が抜き取られて1万円しか入っていない封筒。

その中身が抜き取られた。封筒の中身は空だ。

信じられない。

あの出来事から一週間も経っていない。

僕は部屋の中に立ち尽くす。いくらなんでも次の行動が早すぎる。そこまでバカでは無いはずだ。

僕は第三の可能性を疑い始める。それは自分自身だ。

僕がお金を使って忘れてしまっているのではないのか。自分自身の行動を顧みる。

封筒の中身が減って、妻につめより、そして残りの1万円を封筒にのこしたままにしていた筈だ。

その筈だが、そこから残りの1万円を取り出して財布に入れたのか。いや、そんなはずは無い。敢えてそのままにしておいたはずだ。繰り返し自分の行動を思い返す。頭が痛くなってくる。わからない。

最初の4万円も、一年前の10万円ももしかしたら自分自身なのか。

届いた防犯カメラを設置するモチベーションを失っていた。

この短期間でこの部屋に侵入して残った現金を抜き取るなんて正気の沙汰とは思えない。

完全に僕を舐めている。バカにしている。いくらなんでもそこまでするのか。

妻と数分にわたり口論を繰り広げた、また同じことを望んでいるのか。

それとも息子なのか。僕は息子を信頼している。妻との関係性が悪化しても息子の存在が僕にこの家族を養うモチベーションを与えてくれている。その息子が取ったというのか。

それとも自分自身に深刻な痴呆の兆候が表れているのだろうか。

それとも。僕の想像は広がる。妻と息子は共犯関係にあるのか。僕の部屋に入る時に二人で無断で侵入して荷物を取り出すと話していた。

4万円が無くなり妻と口論になった時の言葉を思い出す。僕の中でひっかかっていた言葉だ。

「調べてみたらいいじゃない。この家にはパパと私ユウトの三人しかいないんだから」

随分と自信ありげだと感じた。

指紋を拭きとるとか万全の対策をしているのか、それとも絶対に犯行を逃れる術が、絶対的なアリバイを持っているのか。

例えば、第三者を侵入させて現金を取らせている。あくまで不法侵入者による犯行に仕立てているのか。気分が悪くなる。共に暮らす家族をここまで疑い不信感を抱いたまま生活することに強い苦痛とストレスを感じる。いっそのこと自分自身の勘違いであったなら気が楽だろう。むしろ、そう認めるべきなのかもしれない。

部屋の中にいると気分が悪くなってくる。僕は散歩に出かける。

この家の中にいたくない。信用できない人間達と同じ屋根の下にいたくない。

僕はせっかく購入した防犯カメラを設置するタイミングを失った。もし自分自身がアルツハイマーを発症しているのならばそんなものは意味は無い。


だが、それからまた数日も経たないうちにまた考えられない出来事が起こる。


封筒の中に現金が戻っていた。

1万円が戻ってきたのだ。

なんなんだこれは。なんのイリュージョンだ。封筒から1万円を取り出す。間違いなくお札だ。

先日確認した時には入っていなかったはずだ。それとも見間違い、勘違いなのか。

僕は自分自身の記憶と行動を第三者にも確認してもらうため会社の同僚にラインする。

封筒に1万円が戻っていると。僕は自身の記憶を少しでも自分自身に植え付ける為信頼できる同僚にこの出来事を告白していた。そしてまた数日にうちに起こったこの出来事を第三者に報告することで自分自身に印象づける。僕がアルツハイマーの可能性もゼロではないからだ。


わずか数週間の間にこれだけのことが起こる。防犯カメラを設置したとて1年またはそれ以上の長期戦になると考えていたのにわずか数週間のうちに次々と相手が行動を起こす。

今度こそカメラをセッティングする。この犯人はまたすぐに動く可能性がある。

僕を弄んでいるのか、バカにしているのか。

Panasonic製のカメラを室内に設置する。しかしセッティングがうまくいない。家庭内のWi-Fiを介してアプリで操作するタイプなのだが、どういうわけか繋がらない。何度かルーターの再起動を試すがうまくいかない。なんなんだこれは。何度パスワードを入力しても認識しない。何度も何度も繰り返す。約2時間程セッティングに格闘するがうまくいかない。

僕は嫌気がさす。そして設定を諦めた。


それから数日後の七夕の日。また事件が起きる。

帰宅すると見知らぬ若い男が立っていた。

誰だこいつは。見ると妻が車の運転席に乗り込んでいる。この男を送るところなのか。

なんだこいつは僕は近づいていく。するとすぐに息子が現れてその男と共に妻の車に乗り込んだ。

帰宅した僕を無視して三人は車を出していく。

嫌な予感がして自室へと駆け上がる。即座に封筒を手に取る。

やられた。

またしても封筒の中から現金が消えている。

何回繰り返せばいいのだろうか。一ヶ月の間に現金が出たり入ったりする。

勘違いではない。僕の痴呆ではない。アルツハイマーではない。間違いなく第三者がこの部屋に侵入して僕の部屋から現金を抜き取っている。

さっきの男。あいつがやったのか。見たところ息子の友人だろう。

遊びに来て僕の部屋に侵入して現金を抜き取ってるとでもいうのか。

突拍子もない空想かと思われた第三者による犯行も選択肢の中に入ってきた。

もうのんびりしてはいられない。

この短期間に繰り返す相手だ、また何かやらかすだろう。現金が無いまでも僕の部屋を物色する可能性は十分にある。もう面倒くさがってはいられない。何が何でも防犯カメラをセッティングしなくてはならない。僕は改めてWi-Fiのセッティングを試みる。やはりうまくいない。家庭内のネット機器が多すぎるのかもしれない。あらゆる端末の主電源を落とし、ルーターを再起動し試みる。

そしてようやく防犯カメラシステムが起動する。

もう万全だ。あとはバカな犯人が繰り返すのを待つだけ。

警戒を与えないように今回の一連の出来事について気付いていないふりをして過ごす必要がある。

カメラの存在も気づかれてはいけない。

これまでと一転して犯行を待ち望む気持ちになる。

もう言い逃れは出来ない。容赦はしない。

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