怪物の心
赤い化け物はその四肢を蠢かせながら泣いていた。
この世界の全てに泣いていた。
どしどしと強制的に体が動かされていく。
自身の意思が介在できないまま、ただただ無意味に破壊するために体は働く。
止まってくれと願おうとも祈りはどこにもとどかなかった。
そして、人を見つけた。
「うおおおお!!すっげえ!」カメラを街の惨状に向けてうれしそうにしている男だった。
桂葬儀という名前だと赤い化け物は知った。
吸収してきた人間の、奪い取った記憶の中から理解した。
その次の瞬間には、赤い化け物は跳んでいた。
ぐちゃりと桂の体を押し潰す。
「ああああああああああああああああああ!」
赤い化け物の中でまだ生きている部分の心が泣き叫んだ。
当たり前だ、人を殺したのだ。これで殺傷した人数は4桁に達した。
10年前、上松によって化け物にされてからずっと赤い化け物はこんなことを続けてきた。
同化してきた人たちの怨念が重く圧し掛かる。
「こんなことやめろ」と。
それでも止めようがない。
ただ、一つだけ希望があった、だから長い間狂わずにいられた。
自分の食った女の息子である山坂利知と自分の子供のようなアカネ。
彼らにはできうる限り力を分け与えたのだ。
そんな風に考えていると気持ちが噴出してきて
「あぁぁああああああ!」赤い化け物はまた泣いた。
今度はその希望が原因である。
彼らにとてつもなく重い運命を課してしまったことに対する罪悪感が噴き上がって胸を締め付ける。
しょうがない、こうするしかなかったといくら自分に言い聞かせても罪の意識自体は消えない。
利知とアカネは自分を殺せば、死ぬ。
彼らは赤い化け物の力によってどうにか生きているのだ、だから赤い化け物が死ねば死ぬ。
それは確実で、変えようがない。
「君たちは私を殺せば死ぬけど、私を殺してね」
と言っているのだ。愛想笑いすらできないような話だ。
そんな風に感じるし、でもやっぱりしょうがないような気もする。
赤い化け物は、何だか自分が不思議だった。
結局、子供たちは死んでも自分を殺してほしいのか、それとも子供たちが死ぬなら殺してほしくないのか。
どちらもきっかりと半々の気持ちだった。




