気になる存在
それから私は、送られてきた四人に、とりあえず挨拶のメールを送った。
「はじめまして」
「〇〇科の〇組だよ」
そんな他愛もないやり取りを少し交わして、それで終わるはずだった。
けれど、その中のひとり――
そう、彼からだけは、なぜか毎晩メールが届くようになった。
「今日、部活きつかった」
「授業眠かった」
そんな、なんでもない日常の一言。
でも、寝る前の薄暗い部屋で、携帯の光に照らされながら彼の言葉を読むのが、
いつの間にか私の一日の終わりの習慣になっていた。
学校では、ほとんど話さなかった。
クラスも違うし、部活もそれぞれ忙しくて、
放課後に顔を合わせることなんて滅多になかった。
それに――お互いに、少し恥ずかしがり屋だったのだと思う。
目が合ってもすぐに逸らす。
それでも夜になると、文字のやり取りは途切れず続いた。
まるで昼と夜で別々の自分たちが存在しているかのように。
彼の穏やかな言葉に、私は少しずつ惹かれていった。
メールの中の彼は、いつも優しく、どこかあたたかくて、
気づけば私は、笑顔になっている自分に気づくのだった。
でも――その頃の私はまだ知らなかった。
その毎晩のやり取りが、あんなにも儚く、簡単に壊れてしまう日が来ることを。




