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儚い恋心
時は流れ、ある晩、いつものように彼からメールが届いた。
――「KIKUって、いつも一緒にいる子のアドレス知ってる?」
その文字を見つめたまま、指が動かなくなった。
“いつも一緒にいる子”――誰のことか、考えるまでもない。
胸の奥で、なにかが静かに沈んでいく音がした。
けれど私は、何事もなかったように笑顔を装い、指を動かした。
「聞いてみるね」
そう打ち込んで、彼女にちゃんと許可を取ってから、彼へ連絡先を伝えた。
それからだった。
毎晩のように届いていた彼からのメールが、少しずつ減っていったのは。
最初は、部活で忙しいのだと思った。
でも、夜が深まるたび、携帯の画面が静まり返るたびに、
胸の奥に冷たい空洞が広がっていった。
そして、ようやく気づいた。
――あぁ、私、彼のことが好きなんだ。
その瞬間、視界が滲んだ。
けれど、不思議と嫌な気持ちはしなかった。
彼の恋を応援してあげたいと思えた。
その想いが叶うなら、それでいいとさえ思った。
好きなのに、譲りたくなるほど優しい気持ち。
それが、当時の私の“恋”だった。
だから私は、彼の話をまっすぐに聞き、
彼がその子に想いを伝えられるよう、背中を押した。
――まさか、その優しさが、
あとになって自分を苦しめることになるなんて、
そのときの私は、まだ知る由もなかった。




