表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫だってアイテムを収集すれば最強になれます!(旧題:猫だってアイテムを収集すれば最強になれます)  作者: 川崎AG
8章 幽霊ですか? いいえ、ただの船旅……えぇぇ幽霊船!?
272/424

8-26 魔導応酬

 【シャドウランサー】


 影と闇が寄り合わさって、投槍のように放たれる。


「――――そコ、だ――――」


 俺の放つ魔法と交換するように、骸骨船長の放つ魔力弾が返って来る。

 お互いに回避。

 即座に2手目。


 【ライトニングボルト】


 高速の雷撃。

 避ける間は与えない。更に、魔法を積み上げる。


 【グラビティ】


「――――むッ――――」


 銃をコチラに向けていた骸骨の手が、重力に負けて地面に付く。

 重力魔法での拘束と、出の早い魔法は相性が良い!

 骸骨船長の早撃ち(クイックアンドドロー)は大した物だが、俺の魔法連打も負けねえぜ?

 普通の奴なら、魔法や天術の発動に詠唱が必要で、使った後には消費した魔力量に応じたディレイが発生する。

 だが、俺にはそう言った物が一切無い。……まあ、そこに関しては、俺だけが特別ってんじゃなくて、【魔王】の特性の効果で同じ事出来る魔王連中もそうなんだが……。

 しかし、俺1人だけが持つ“特別”な事が1つある。

 それは、魔法や天術の発動に、肉体的な動きを1つも必要としないって点だ。

 何故なら、俺が魔法を発動する際にやっている事は、収集箱(コレクトボックス)のリストから発動する物を選ぶだけ。

 その為、魔法名の発声すら必要無く、銃のトリガーを引く速度にも負けないスピードで魔法を連打する事が出来る。

 心の中でドヤッと勝ち誇る。

 と、同時に、俺の放った【ライトニングボルト】が、重力の拘束で動けない骸骨の胸を捉える。

 直撃。

 凄まじい閃光と共に、バチバチと霧を裂くように雷が周囲に迸る。


「――――グぅ……ッ――――」


 コートが若干焦げ、骨が所々黒くなったが、致命打にはほど遠い。

 並みの奴なら今の1発で戦闘不能なのに……やはり、単発ではダメージが浅い。

 こうしてダメージを確認している間にも、キラキラとコートや骨が再生して行く。

 再生の間を与えるな、畳み掛けろ!

 【エクスプロード】

 【氷結術式(アイシクル)

 【業火(ヘルファイア)

 矢継ぎ早に魔法を放つ。

 相手に属性を絞らせない為に、敢えて同属性の魔法は避ける。

 更に――――

 【サンダー】

 【スプラッシュ】

 【スラッシュ】

 天術も織り交ぜる。

 手持ちの攻撃系の魔法と天術を、片っ端から投げ込む事1分と少し。

 爆発、炎、旋風、氷結、水飛沫、雷。

 天災の如く、甲板の上で様々な超常的な力が舞い踊る。


 これならどうよ?

 かなりのダメージを与えた手応えはある。

 ダメージを軽減されているとは言っても、これだけ魔法連発すれば――――


「――――素晴らシイな。敵とハ言エ、称賛ヲ送りタくなル様ナ強さダ。美シいト言ッテも良イ――――」


 巻き上がった粉塵と爆煙を押し退けるように、骸骨がフヨフヨと現れた。

 その体に、その服に、ダメージは――――無い。


「ミャゥ……」


 嘘でしょ……。

 かなり本気で殺しにかかったのに、それでもまだ、野郎の再生力のが上を行ってるってか? 冗談にしたって笑えない。

 今の魔法と天術の連打が、恐らく今の俺の1番の速度と火力の魔力攻撃。

 それで倒せないって、コイツ、マジでふざけんなよ……。


「――――貴様ガ、魔族デなけれバな――――」


 魔族じゃねえし、ただの猫だし。


「――――殺さナクて、済んダものヲ――――」


 銃口が俺に向く。

 チッ……【グラビティ】の効果が切れてたか。

 銃が火を噴くと同時に跳躍して避ける――――が、着地した瞬間、2発目が飛んで来て右前脚を直撃される。


「ミュッ――――!?」


 痛ッ――――!?

 そこまで大ダメージじゃねえとは言え、食らうとちゃんと痛いっつうの……!

 っつか、野郎の射撃の精度が増してねえか?

 さっきまでなら避けられるタイミングだったのに……。

 野郎……俺の動きに慣れて、先読みして来てんのか。

 じょーとーだッ!

 だったら、先読みしても付いて来れない速度で動いてやる!!

 

 【タイムアクセラレータ】


 時間の流れから、俺だけが切り離される。

 視界から色が失せて、白と黒のコントラストだけが残る。

 空気が重量を持ったように重くなり、呼吸が出来なくなる。


 ―――― 光速の領域。


 全てを置き去りにする、超々高速の世界。

 足を踏み出す。

 纏わりつく空気が、洒落にならないくらい重い……。

 昔、やたら深い泥沼に足突っ込んで身動きが取れなくなった時の事を思い出してしまう。あの時は結局、泣いてたら爺ちゃんが助けに来てくれたっけ……。

 って、思い出に(ひた)ってる場合じゃねえっつうの。

 一歩、もう一歩、と踏みしめるように歩く。

 【タイムアクセラレータ】には制限時間は存在しない。だが、加速中は俺が呼吸出来ないので、実質息を止めていられる時間が、そのまま制限時間となる。そう言う意味では、【アクセルブレス】と同じだ。

 猫の体で息止めてられるのは10秒くらい。どう頑張っても20秒が限界。

 その間に移動を…………ちょっと待てよ?

 能力発動中は俺だけが動ける。って事は、この状態で魔法を撃てるだけ撃っとけば、時間が動き出した途端に、敵を滅多撃ちに出来るんじゃん?

 試しに魔法を1つ撃ってみる。

 いや、撃ってみようとしたのだが――――ログが流れる。


『スキル:【タイムアクセラレータ】の発動中です。収集箱(コレクトボックス)からアイテム・能力を取り出す事が出来ません』


『スキル:【ネコババ】の効果により、マスタースキル:【   】による収集効果が優先されました。【タイムアクセラレータ】を解除します』


 突然加速が解除され、かけられて負荷がなくなり、つんのめってコテンッと倒れる。


「ミャっ」


 うぉっ。

 そして、加速が解除された事と引き換えに、魔法が発動される。

 【ソニックウェーブ】。

 床に叩きつけるように発動されたその魔法は、暴風となって俺の周囲の空気を滅茶苦茶にかき乱し、あっと言う間に四散した。

 暴風に吹き散らされ、俺の周りの霧が少し晴れて視界が開ける。

 ……ええ、そうですよ? 完全な無駄撃ちになりましたけど、何か?

 まあ、そんな事より――――【タイムアクセラレータ】は【収集家】の効果と干渉するのか。

 って事は【タイムアクセラレータ】で加速してる最中は、アイテムの出し入れは元より、魔法や天術の発動も、何も出来ない訳ね?

 無理矢理やろうとすると、【ネコババ】の効果で【収集家】の能力発動が最優先にされて、干渉している加速能力が勝手に解除される……と。


 あと、関係無いけど…………多分、ログにある【   】って、【収集家】の事だよな?

 スキル名が伏せられているのは、これは意図的に伏せてあるって事なのかしら?

 ……いいや、この件は後回しだ。今は戦闘に集中しよう。


「――――ソコ、か――――」


 ほら、色々考えてる間に、骸骨船長が俺の位置を特定して銃を発砲――――あれ?

 違和感。

 銃口の向きが、ちゃんと真っ直ぐ俺に向いていない。

 そして、その違和感は正しく、撃ち出された魔力弾は俺から2m近く離れた場所を通り過ぎて、霧の奥へと消えて行った。

 更に2発、3発と連続して引き金が引かれるが、どれも俺にはかすりもしない軌道を通って消える。

 なんだ……?

 さっきまでの精密射撃が嘘のように、俺に狙いが定まっていない。

 何か意味があって、敢えて狙いを外している……って感じじゃなさそうだな? ガチで俺を見失ってるっぽい。

 でも、なんでだ? さっきまでと何が違う?

 周囲で魔力弾が跳ねる中、静かに思考。

 違う点は――――クリアになった視界。

 「まさか!」とハッとなる。


―――― 霧か!?


 あの野郎、もしかして、俺が動いた時の霧の揺らぎを見て、位置を特定して来てるんじゃねえか!?

 ……いや、でも、霧だぞ? そら、煙のように風の動きがよく分かるのならともかく、霧って大した変化ねえだろ?

 注意してたって霧の変化なんて、俺分からねえぞ……。

 いや、でも、それくらいしか答えが見つからない。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ