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猫だってアイテムを収集すれば最強になれます!(旧題:猫だってアイテムを収集すれば最強になれます)  作者: 川崎AG
8章 幽霊ですか? いいえ、ただの船旅……えぇぇ幽霊船!?
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8-24 猫は骸骨船長に喧嘩を挑む

 銃を持った船長装束の骸骨に追いかけられるって、傍目に見たら頭のおかしい奴だよなぁ……まあ、実際に鬼ごっこしてる俺としては、笑いごとじゃねえけど。

 そんな事より、階段、階段は……っと。

 この船も、俺の乗って来た客船に負けず劣らず無駄にでけえんだよなぁ……ボロボロの幽霊船のくせに……。

 船内図を確認して……ここを右。その先に階段が――――あった!

 が、すぐ後ろには、狂ったように銃を乱射する骸骨。

 【仮想体】が文字通り体を張って銃弾を受け止めてくれているとは言え。【隠形】で相手から認識されないとは言え。何かの間違いで流れ弾が飛んでくる可能性はゼロじゃない。ちゃちゃっと上らねえと、スピード落とした瞬間が危ない……。

 スゥッと大きく息を吸って――――止める。

 【アクセルブレス】による加速。

 周囲の速度を置き去りにして、俺自身だけが倍速になる。

 ヒュンっと一足飛びで階段の下まで走り、敢えて腐りかけの階段に足をつかないように【空中機動(エアスライド)】で見えない足場を作って甲板に上がる。


「ミュゥ……」


 ふぅ……。

 外は相も変わらず深い霧。周りの景色が見えねえってのは、結構気分を陰鬱をさせる。風起こす系の魔法や天術で晴らせたりしねぇかな? 流石に無理か。

 加速解除。と同時に、下でパンパンっと発砲音が連続する。

 景気良く撃っとりますなぁ、あの骸骨船長は。現代日本じゃ、警察官が1発発砲しただけでも弾の行方やら何やらで大騒ぎになるっつうのに……。

 俺から遅れる事10秒、【仮想体】が階段を上が――――あっ。

 【仮想体】が体重をかけた途端、階段の床板がバキッと割れてすっ転ぶ。


「――――カカカカッ! なント無様ナ姿よ――――」


 やっぱり階段に足つかなくて正解だったな? まあ、(おれ)の体重だったら割れなかったかもしれんけど。

 転んだままの【仮想体】に近付いた骸骨船長が、余裕な風で銃を向ける。

 はいはい、無様無様。

 【仮想体】を手元に戻す。


「――――まタ転移術式カ。逃ゲ場ナど、無イ――――」


 骸骨船長が、天井を“物理透過”でスゥッと擦り抜けて甲板に上がって来る。


「――――ムっ……奴ハ、どコダ――――」


 探したって何処にも居ませんよ? だって【仮想体】は俺の中に戻ってるし。

 そして、(おれ)自身も【隠形】の効果で発見される事は無い。

 さぁ、反撃開始と行きますか?


―――― 【全は一、一は全(レギオン)】全解放!


 今まで10本の短剣しか出して居なかったが、ここからは全部の武器を使って行く。

 538の刃が甲板を埋め尽くし、その全てが、飢えた猟犬のように、今か今かと骸骨船長をぶち抜くタイミングを狙っている。

 改めて【属性変化(チェンジエレメント)】で、俺の装備する全ての武器の属性を“超神聖”属性に。【エレメントブースト】でその属性値を5倍に。

 

「――――こレは……リビんグそーど……でハ、ナイ!?――――」


 リビングソードと言えば、意思を持った剣が勝手に飛び回って襲って来る、お化けや幽霊系のダンジョンではお馴染みの敵だ。

 なるほど、確かに言われてみれば、俺の魔王スキルで動かす武器達は、傍から見ればそう見えるかもしれない。


「――――金鎧……奴ノ仕業カ――――」


 50点、半分当たり。


「――――ダが、無駄ダ――――」


 それは、やってみねえと分からんでしょう!

 武器達が、群れの動きで、濁流のように骸骨船長に襲いかかる。


「(剣嵐(けんらん)――――刃波(はなみ)!)」


 必殺の一手。

 が――――


「――――無駄と言ッタ――――」


 骨の体は、全ての武器を擦り抜ける。

 チッ、物理透過が厄介だな?

 ピエロ仮面も物理透過持ちだったが、アッチは超神聖属性の属性効果は受けて居たから、コイツも同じようにやれるかと思ったんだけど……ダメだったか。

 能力的に、幽霊系の上位種って事かな?

 コッチも攻め手を変えなきゃいかんね。まあ、幽霊相手なら、一々「どの手でいくか?」なんて考える必要もないけど。

 切るべき手札はコレでしょう?


 【冥府還(ターンアンデッド)


 対不死族特効の天術。

 野郎がどういう能力持ちなのか知らんが、既に死んでいると言うのなら、この天術からは逃げられん。

 食らえば1発アウト。これで終わりだ。

 そう、食らえば――――。

 だが、奴は食らわなかった。

 【冥府還(ターンアンデッド)】の発動によって現れた魔法陣。それに幽霊が触れれば天に召される――――のだが、奴は違った。

 魔法陣に体が触れた瞬間、骨の腕に着けられていた緑色の宝石で装飾されたバングルが光を放ち、【冥府還(ターンアンデッド)】の効果を打ち消した。


「ミャッ!?」


 なにそれ!?

 あのバングルがピカッと光って無効にされたって事は、浄化術式の防御装備か!?


「――――浄化術式ハ、俺達にトッて絶対脅威ダト言う事ハ理解シテいル――――」


 こンの野郎……脳味噌無ぇくせに、脳無しじゃねえってか?

 弱点を装備回りでカバーするのは、ゲーム感覚で言えば当たり前と言えば当たり前の行動だが、それを相手にやられると鬱陶しい事この上ねえな……。

 しかも……だ。

 相手が“物理透過”だと言うのが、最高に最悪である。

 敵が普通の相手だったならば、装備で弱点を補っていようが、その装備を俺の【収集家(コレクター)】の能力で収奪(スティール)してしまえば良いだけだ。

 だが、物理透過の相手は、そもそも触れる事が出来ない。そして、触れる事が出来なければコッチは【収集家(コレクター)】の能力を発動出来ない。

 って事はつまり、だ。今までの幽霊達のように、【冥府還(ターンアンデッド)】による1発撃破は通用しねえって事だ。

 コイツを倒すには、ガチンコの殴り合いで勝つしかねえ!

 が、相手は完全物理透過。

 武器攻撃は元より、その属性効果すら無効化される。【全は一、一は全(レギオン)】で、どれだけ大量の武器を操ろうが、コイツ相手には無意味だ。

 ああ、クソッ! コッチが使える手札が少な過ぎやしませんかねぇ!!


「――――骨ノ姿になッテモ分かル。心地良イ程の殺気と焦燥、見エないガ、貴様近クに居るナ――――」


 銃を水平に構え、周囲を警戒し始める。

 【隠形】の効果のお陰でコッチの姿は骸骨船長に認識されないが、何かの拍子に気付かれる可能性は十分有り得る。

 その前に、何か有効な攻撃を見つけたい。

 とは言え、どう攻めた物かと一瞬考えるが、「コッチの使える手が限られている以上、とにかく手当たり次第やってみるしかない」と迷う思考をカットアウトする。


 【ライトニングボルト】


 ここは甲板だし、火炎やら雷やらも解禁で良いよね?

 っつー訳で、まずは雷撃の魔法。

 真っ直ぐに敵に伸びる雷。

 それに対する骸骨の反応は早い。

 俺の放った雷撃の初動――――チカッと雷が光ったとほぼ同時に、銃口を魔法の発動した場所……つまり、俺に向け、凄まじい精密で高速なクイックアンドドロー。

 雷撃と銃弾が空中で擦れ違う。


「ミッ!」

「――――ムぅッ――――」


 お互いにその場から飛び退いて攻撃を躱す。

 銃弾が、コンマ数秒前まで俺の立っていた場所を正確に撃ち抜く。対して俺の放った雷撃の魔法は、骸骨の左手をかすめるようにして通り過ぎる。


「――――やルナ? 鎧姿で剣士ト思ワせ、実際ハ魔力戦デも強イとは驚カされル――――」


 魔法のかすめた左手が痺れたのか、軽く骨の手をフルフルと振って感覚を戻そうとしている。

 魔法は一応ダメージが通る……のか?

 疑問符を付けたのは、ダメージが小さ過ぎるからだ。

 俺の魔力で放つ魔法なら、かすった程度でも腕1本は奪えると思ったのにな? いや、ちょっと待て、あの首から提げてるアミュレット……もしかして魔力耐性の奴じゃねえか?

 前にアザリアにくれてやった奴とは違う物だが、かなり似ている。だが、明らかに骸骨船長が持ってる奴の方が豪華だ……宝石も付いてるし……。

 って事はなんだ? 魔力耐性のアミュレットの豪華版って事で、当然性能も良い奴って事かい?


「――――しカモ、魔法モ天術モ使えルとは。貴様、たダの魔族デはナイナ――――」


 数秒で手の痺れはとれたのか、骨の左手を軽く握って調子を確かめる。

 ああ、マジかよ……。

 魔法は通じるけど、威力はゴッソリ軽減されるってか……?

 しかもこの野郎、無茶苦茶な反応速度で反撃してきやがった。人間技じゃねえ……あ、人間じゃねえやコイツ。



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