プロローグ:夜明けの少女、夜会へ行く
初投稿です。どうぞよろしくお願いします。
この世界には、絶対の理がある。
それは、至高の存在たる女神が定めたとされる『色』の美醜だ。
白に近ければ近いほど神聖で美しく、黒に近ければ近いほど穢れ、醜いとされる。
女神の祝福を受けたとされる白や銀は至高の美。
逆に、一切の光を吸い込んだような『黒』を宿して生まれた者は、どれほど顔の造形が整っていようとも、等しく『怪物』『忌み子』として恐れられ、蔑まれる。
それが世界における絶対の常識、そしてシルヴェスタ帝国での常識だった。
――だが。
そんな常識など知ったことかという場所が、この帝国の最果てには存在する。
魔物が跋扈する過酷な寒冷地を治める、ヴァルハイト辺境伯家。
質実剛健と実力主義を地でいき、帝都の連中から、野蛮な脳筋の一族と陰口を叩かれている場所だ。
そこで育った私――ロクサーナ・ヴァルハイトには、くだらない『美の基準』なんて、ぶっちゃけどうでもよかった。
「いいか、ロキシー。帝都のモヤシ男どもに舐められるなよ。結婚相手を探すなら、ヴァルハイトの冬を越えられる、骨のあるタフな男を捕まえてくるんだぞ」
出発の朝、筋肉隆々の父(現・辺境伯当主)からそう力強く送り出された私は、19歳にして初めて、帝都で開催される一週間の大夜会へとやってきた。
お題目としては、年頃の辺境伯令嬢の『婚約者探し』。けれど、帝都の夜会は想像以上に退屈で、息が詰まる場所だった。
誰も彼もが白や淡い色を着飾り、笑顔の裏で腹を探り合っている。おまけに、運ばれてくる宮廷料理はちまっと上品すぎて、辺境育ちの私のお腹を満たすには、あまりにも物足りない。
「ああ、もうダメ。息が詰まるし、お腹が空きすぎて倒れそうですわ……!」
二日目の夜会、令嬢に囲まれて身動きが取れなくなったお兄様を置き去りにして、私はこっそり夜会会場を抜け出した。
目指すは、静かな夜の庭園。
そこで冷たい夜風に当たりながら、空腹を落ち着かせよう。
そんな、ちょっとした現実逃避のつもりだったのだ。
まさかその場所で、私の世界を根底からひっくり返すような、運命の出会いが待っているとも知らずにーー。
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