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冒険者ギルド

ブックマークふえてた、ありがとうございます!

「先生、今日は冒険者ギルドに行くっすか?」

「ああ、聞いてると思うが冒険者登録をしてくる」


 授業の終わりにトニーに聞かれたのでそう答える。

今日はこれから冒険者ギルドのギルドマスターであるラルフォイに会いに行く予定だ。


 昨日は結局ディーナに九九の表を作ってやったり、タックスさんに冒険者について少し話を聞いたりして過ごした。

あと、ディーナが馬の世話をしているのを見物もしたかな。

意外としっかり世話をしていた、昔もやってたことがあるらしい。


 タックスさんは冒険者としては成功していたタイプではないと本人が言っていた。

だからあまり冒険者としていいアドバイスはできないと。

商人一本で行くと決めてから成功したようだ。

そっちの才能はあったんだな。


「それじゃ行ってくるから、タックスさんには冒険者ギルドから帰ってきてからそのことの結果も含めて相談すると伝えておいてくれ」

「わかったっす」


 トニーに伝言を頼んで家から出た。


「私も行く」


 家に鍵をかけていたら残っていたディーナがそう言いだした。


「行くって…冒険者ギルドへ?ディーナが?なにしに?」

「ヴォルるんの保護者として行くわ!」


 俺は力が抜けて膝を地面につきかけた。

保護者って…ディーナに保護される者って…馬と同じレベルかな…?

あと俺のほうが年上なんだけど一応。


「あの恥ずかしいので一人で…」

「絶対行く!何を言われても行くから!ダメって言うならここで…ごねるわ!」


 ディーナは俺の足に抱き着いて家の前に座り込んだ。

何か置いていくようなことを俺が言おうとするとあーあー言って聞こえないフリをする。

見てください、これが駄々をこねる保護者(23)の姿です。


 誰も見てるやつなどいなかったがそんな台詞が脳内に浮かんだ。

無理やり剥がして行っても良かったが、今度はディーナが勝手に付いてきてそして迷子になるところまで想像できた。


「はぁ…わかったよ、頼むからギルドで面倒なことはするなよ」


 俺は諦めてディーナと一緒に行くことにした。


………………


………


「ここがコムラードの冒険者ギルド…」

「入る前に口元拭いてくれるかな、さっき露店で買って食べた…やめろ、袖で拭くな、買ったばかりの上着が汚れるだろ!!ほらこの布で拭け」


 ディーナは俺に渡された布で口元を拭いた、歩きながら食べてた串焼きの脂で汚れていたから。

それからいつもの紳士服Tシャツの上にもう一枚、革のジャケットみたいなのを着ている。

Tシャツだと変に目立つかも知れないと思って途中で買って着させた、たぶん男物だが。

昼食もジャケットも俺の金で買った。

保護者ってなんて意味の言葉でしたっけ、もう俺にはわからない。


 最低限の身だしなみを整えてからギルドに入って中を見渡すと、今日も冒険者が何人かたむろしていた。

マーくんは…いないな、仕事してるんだろうか。

受付にいたピンク髪の女の子が俺に気づいた様子だったので、俺はそちらへ向かった。

ディーナは俺の後ろで猫背で歩きながらキョロキョロと不安げに辺りを見ている。


「確か…ヴォルガーさんですねー、ギルドマスターに来たら部屋まで通してくださいと言われてますけど、そっちの女性の方は?」

「この人はタックス商会ってとこの人なんですけど、今日は俺の付き添いで」

「そんな人が来るとは聞いてないなー…?」

「俺はそのタックス商会で雇われてるんですよ、でも前に知り合いの冒険者に案内されてここに来たでしょ?それがどうもあまり良くなかったみたいで、勝手にどこか行かれては困ると怒られまして」

「はあー前は仕事サボってきたんですかー?」

「ああそんな風に言わないで下さいよ!ほら後ろに商会の人がいるんですから、今日は監視付きでなんとかここに来るのを許してもらったんですよ」


 全くディーナが付いてくるとか言うから情けない嘘をつくはめになるんだ。


「そういうことなんで、この人も一緒にギルドマスターの部屋へ案内してほしいんですがどうですかね?」

「えーっと…聞いて来るのでちょっと待っててねー」


 間延びした声で受付の子はそう言うと二階へ上がっていった。


「…ヴォルるん仕事サボってたの?」


 小声でディーナがそう聞いてくる。


「毎日ちゃんと授業してるだろが!お前が付いてくる理由を作るための嘘だよ!!」


 今のやり取りについてまるで理解していなかったので小声で怒りながら説明してやった。

後一応余計なことを言わないように釘を刺しておいた。


「…お待たせー、特に問題ないみたいなので二人とも案内するねー」


 受付の子はすぐ戻ってきた、どうやらディーナも一緒に連れて行って平気なようだ。

俺たちはそのまま二階へ案内されてギルドマスター…ラルフォイの部屋の前まで来た。


 ツヤのある木製のドアをノックすると「どうぞ」と聞こえたので中に入る。

失礼しますとは言ってやらない、ノックしただけでも有難く思え。


「お待ちしてましたヴォルガーさん、今日は監視役の方がいると聞きましたけど、それがこんな美人だとは知りませんでしたよ。うらやましいですね」

「ヴォルるん!私美人だって!」

「お世辞だよ、いいから大人しくしてろ、ラルフォイ、アンタにはすぐバレると思うから先に言っておくが、こいつは別に監視役じゃない、勝手についてきただけだ」

「ははは、でもタックス商会の人なんですよね?」

「一応な」


 ラルフォイは特にディーナのことを気にした様子もなく、俺たち二人にソファーに座るようすすめてきた。

向かいのソファーに自分も座るのかと思いきや部屋の隅にあった金庫みたいな箱の前に行き、そこから透明な液体の入ったガラス瓶を取り出すと、ソファーの前にあるテーブルの上へ置いた。

そして棚からガラスで出来たグラスを3つ持ってくると、瓶から液体を注いで俺とディーナの前に置いた。


「どうぞ、今日も外は暑かったでしょう?ネロロの果汁を絞って混ぜた水です、さっぱりしていて美味しいですよ」

「今日は随分ともてなしてくれるんだな?」

「ええ、良い返事が聞けると思っていましたので」


 相変わらずむかつくやつだ。


「あわわ、ガラスのコップだ…こ、これ私が飲んでいいのかな」

「ええどうぞ、それと良ければ名前を教えてくれませんか?私はここのギルドマスターをしているラルフォイと申します」


 ラルフォイに名前を聞かれてディーナは「ディーナです」とだけ言った。

おいお前の名前はメンディーナだろが、自分ですら略して言うなよ。

そりゃ店にいる人は誰も…いや、マリンダさんはメンディーナってちゃんと毎回言ってたな。

まあどうでもいいか、こいつはオマケだし。


「冷たい!この水冷たいよヴォルるん!!あと美味しい!」


 オマケは何のためらいもなく出された飲み物を飲んでいた。

しかし、冷たいだって?まさかあの金庫みたいなやつ冷蔵庫なのか?


 気になって俺もグラスを手に取る、確かに冷たい。

飲んでみたらわずかに甘酸っぱくてさわやかな香りがした。


「あの箱はなんだ?あの中で冷やしていたのか?」


 俺は金庫の方を見てラルフォイに尋ねた。


青鉄庫セイテツコと言います、ご想像の通りあの中はとても冷たくて食べ物や飲み物を入れておくのに便利なんですよ、タックス商会では魔法道具を扱ってると聞きましたが、これはまだみたいですね?」

「俺は初めて見る、魔法道具ってことはとても高い品なんだろう、ギルドマスターは随分儲かる仕事なんだな?」

「いえいえそれほどでも、腕のいい冒険者は僕なんかよりよっぽど稼いでますよ」


 正直あの青鉄庫というものは俺も欲しい。

くそう、冒険者になって稼げばあれくらい買えますよとでも言いたいのか。


「ぷはーっ」


 横でディーナが一気に飲み干していた、いやもうほんとなんでついて来たの君?

ラルフォイにお代わりを注がれて嬉しそうにするんじゃない。

とにかくディーナは何の役にも立たないということだけが再確認された。


「それでヴォルガーさん、今日は冒険者登録をするためにこちらへお越しになられたと思っていいんですよね?」

「そうだよ、登録することにした、ああそうだ、登録するから記念にあの青鉄庫ってやつ俺にくれない?」

「それは勘弁して下さいよ、僕の少ない給料をためてようやく買えたばかりなんですから」

「じゃあせめて余計なことをするのはやめてくれるんだろうな」

「何のことでしょう、僕はヴォルガーさんの冒険者登録をするだけです、余計なことなど致しませんとも」


 ラルフォイは俺に睨まれても平然としている。


「はいはいわかったよ、それで、登録というのは具体的にどうすればいいんだ?」

「普通は下の受付の子がするのですが、今日は僕が手続きをしましょう!こんなことまずありませんよ?特別です」


 俺としてはまだ下の受付の子にしてもらったほうが可愛い女の子相手なので喜べるんだけどな。

そんな俺の気持ちは全く察してくれないようでラルフォイは笑顔で紙の書類を差し出してきた。


「これは毎回誰にでも聞く確認事項なので一応聞くのですが、ヴォルガーさんは読み書きできますか?」

「できる」

「ではこちらをお使いください」


 インク壺とペンを渡された。

はー、これでいよいよ俺も冒険者か…


「私にもください」


 書類を読もうと思ったら隣のディーナが突然そう言った。


 それを聞いて俺、そしてラルフォイですら、は?という顔をしていた。 

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