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マーくんの冒険8~追跡者~

たぶん次でマーくん編おわり

 我とディーナがコムラードに戻ってきてから数日が経過した。

ヴォルガーはまだ見つからない、だが確実にやつには近づいている。


「本当に来るかしらね」


 我の隣にいるエルフのプラムが、コムラードがある方角を眺めながら言った。


「来る、でなければ我らがここにいる意味がない」


 ここ…我がいる場所は神隠しの森、それのコムラードに近い端のほうだ。

そこに立ち並ぶ一本の木の上から、この森に向けて来るものがいないかを隠れて監視している。

プラムも同じく木の上にいるということだ。


 今ここには我らしかいない。

だから、今日もし奴らを見つけたら我らでなんとかするしかないのだ。


………………


………


「神隠しの森に行くって、冗談ですか?」


 ザミールで得た情報を伝え、今後どうするかをラルフォイに説明するとそう返された。


「冗談ではない」

「ちょっと待ってくれ!マグナのいう事はわかったが…あそこは途方もなく広い上に迂闊に入れば迷って出てこられなくなる、狂暴な魔物もいるようだし、そもそも人が住めるような場所か?」

「そこに館を作って住んでるやつがいる」

「それは所詮夢の話だろう!」


 話を聞いていたジグルドがああだこうだといちいち我に反論してきた。

うるさいのはこいつだけだが他の仲間、ロイ、ミュセ、モモ、そしてまだコムラードに残っているプラムもどうせ同じような意見なのだろう。


「夢だけど…夢じゃないのに…」


 ディーナが小さい声で我にだけ聞こえるように愚痴っていた。

言いたいことがあるならハッキリ言ってやれ。


 我らは集まって何をしているのかと言うと、冒険者ギルドで会議をしていた。 

内容はもちろんヴォルガー捜索に関することだ。

我が思うにやつは神隠しの森のどこかにいる、それは間違いない。

 

 ザミールであった攫われた姉妹の話やら、アバランシュから来たという行商人のこと、果てはディーナが見た夢のことまで説明してやったというのにまだ信じられないと言うのかこいつらは。

我が早速、森に探しに行くべきだと言っているのに反対ばかりする。


「ええい、わからんやつらだな、もういい!我が一人で探しに行く!」


 そう言って席を立とうとするとロイが「まあまあもう少し待ってください」等と言って引き止めて来た。


「ボクらも別にマグナさんの話が信じられないというわけでもないんですよ、問題は探す場所が広すぎるということです、マグナさんは一体どこから神隠しの森に入って探す気なんです?」

「それは…鉱山から西に進んだあたりから森に入って探せばよかろう」

「それだけじゃあ少し厳しいですよ、その手でいくなら人数がかなり必要ですがあの森の魔物と戦えるような人数はたぶん用意できません、現状いまここにいる戦力が唯一あの森に入って生き残れそうな面子なのですから」


 言われて改めてその場にいる者たちを見る。

…ディーナは無理だな、皆それはわかってはいるだろうがあえて言わないだけだ。

ラルフォイは平気かもしれんがこいつはこの街から迂闊に動かすわけにはいかない。

そうなると我を含めて…六人か…少ないな。


「だったらどうしろと言うのだ!」


 机をたたいて苛立ちをぶつけるように我は言った。


「ああはい、では僕からもひとついいですか?結構いい案だと思うので出来れば机に当たらずに聞いて欲しいんですよ、それ結構年季ものですからマグナさんの力でバンバンやられると壊れるかもしれないですし」

「机を壊すかどうかは貴様の話を聞いて決める」


 ラルフォイがいい案があると言うので我は再び席について話を聞くことにした。


「いやー仮に僕の案が気に入らなくても壊すのは…ああ、言います、言いますから睨まないでください。案というのはですね、森を知ってる人物に案内してもらえばいいんじゃないかということです」

「そんなやつがどこにいる?」

「まあ今ここにはいませんよ?でもそのうち街に来ます」

「そのうちとはいつだ!そいつはどこのなんてやつだ!我が連れて来る!」

「あーそれはちょっと無理ですね、名前はわかりません、それがどこのだれかは…ミュセさん、例の馬車の話をしてもらえます?」

「えっ、まあいいけど…マグナが怒っても私のせいにしないでよね」


 なんのことかわからんがミュセが何か知っているようだった。


「ええとね、まずここのところずっと私たちは鉱山に行ってたのよ、労働者がまた鉱山内部で働きはじめるので最後の見回りとしてバジリスクの生き残りを探しにね」

「なんだと、そんなことをしていたのか」

「そんなことって言うけどね、仕方ないでしょ他にこの依頼をこなせる人たちがいないんだから、ヴォルガーのことだけずっと専念してるわけにはいかないのよ、それに私たちだって仕事しなきゃお金が無くなってくだけなのよ?」


 ぬう…冒険者としては当然のことだな…


「ま、それで私たち調和の牙は鉱山の警備をしてたわけ、今日ようやく完全にバジリシクはいなくなったと領主の兵士の人たちも判断したから、荷馬車の護衛をしながらコムラードに帰ってきたのよ」

「護衛の必要などあるか?鉱山とコムラードの間は危険などないだろう」

「ついでよついで、まだ不安な人もいるから着いてくだけでも効果はあるの、それで帰ってきてメルーアとモレグに会って話を聞いたら気づいたんだけど」

「誰だそいつらは?」

「誰ってアンタねえ…一緒にバジリスク討伐に行ったでしょ!4級の二人よ!姉と弟の!」

「ああ、あいつらか」


 あまり強くなさそうだったので名前など忘れていた。


「それでそいつらがなんだ?」

「二人はコムラードから鉱山に送る食料とかの物資を運ぶ手伝いをしてたのよ、二人が言うには今日まで鉱山に向けて5台分の荷物が馬車に乗って送られたって言うんだけど…鉱山には4台分しか来てないのよね」

「1台分はどこへ行った?」

「消えたのよ、鉱山に着く前にね」


 消えた…?どこへ運んだんだ?


「正確に言いますと5台というより5回ですね、鉱山に向けて荷物を運ぶという理由で馬車が出ています、ちなみに馬車自体はちゃんと全てコムラードに帰ってきています。つまりですね1台は鉱山に行く途中のどこかで荷物を別の荷馬車を用意して移し替え、どこか違う場所に運んでるのではないかと思うんですよ」


 ラルフォイがミュセの話にそう付け加えた。

ここまで言われればヤツの言いたいことはわかる。


「誰かが神隠しの森へ食料を運んでいるということか」

「想像どうりなら、恐らく。僕のいう案内はその者らにしてもらおうということですね」


………………


………


 そしてようやくだ、ようやく荷物を運ぶ馬車の中で不審なやつを見つけた。

ジグルドたちが格安で鉱山とコムラードを行き来する馬車の護衛を受け持ち、二つの地点を行ったり来たりして調べていると、今日はじめて護衛は必要ないと断る商人があらわれた。


 それを足の速いミュセが後をつけ…街道をそれるところまで確認してコムラードにいる我らに伝えに来た。


 我はそれを聞いてディーナの運転する魔動車で神隠しの森まで先回りした。

プラムを連れて来たのは一番目がいいからだ。

ディーナは魔動車と一緒に森から離れて隠れている。


 そして鉱山から西に進んで神隠しの森に入る場所付近でも、森の中にある山がなるべく近いところで我らは潜み、例の馬車がやってくるのを待ち伏せしているのだ。


「それにしてもあの魔動車っていうのにはビックリしたわねえ…あんなに速い乗り物があるんじゃ馬車にはもう乗る気がしないわね」

「クク…我もそう思う、それにあれの凄さは自分で運転してこそわかるのだ」

「うんてん?」

「あれを動かすことだ、今日はディーナがしていたがな、前に我もしたことがある、あれは面白かったぞ、なんせミミズの大群が…」

「気になるけどその話はちょっと待って、お待ちかねの相手が来たみたいよ」


 プラムの言葉を聞いて我は喋るのをやめた。

どうやら探していた馬車がようやくこの場所まで来たようだ。

遠くに小さくこちらの方へ向かって進んで来る馬車の姿が見える。


「プラムはディーナと合流しろ、それからコムラードの連中にこの場所を伝えに行け」

「私があいつらを尾けた方がよくないかしら?こう見えて貴方より強い自信はあるわよ?」

「お前には絶対に単独行動させるなとミュセに言われている、迷子になるからとな」

「うっ…」


 いくら強くても迷うようなやつに尾行はさせられん、行方不明が二人になるではないか。


「というわけだ、では我は行くぞ」

「わかったわ、ただ相手が強そうなら無理して深追いはしないでね?」

「問題ないっ!」


 我はそう言って木から飛び降り、森に入っていく馬車の後を追った。

森の中だというのに相手は結構速い、ここで見失うわけにはいかん。

慎重に、なるべく急いで我も森の中を駆け抜ける。

こういうときにヴォルガーの魔法…足が速くなるやつがあれば便利なのにな。


 しかしこんなところに馬車が通れるような道があったとはな…

森の外からはまるでわからないように巧妙に隠されていた。

茨のような植物が生い茂っている部分に馬車が突っ込もうとするのでどうする気かと思ったらなんとその茨自体が扉で森の内側から開閉するようになっていた。

明らかに誰かが手をいれて道を作り、馬車を招き入れている。

やはりいるのだ、この森に住んでいる者たちが。


 茨の扉を一瞬だけ闇の剣を作り出して切り裂き、馬車が通った後を走ってついて行くと妙な匂いがした。

何か燃やしたような…ハーブの一種にも似た匂いだ。

ひょっとして魔物避けか?

この森にはゴブリン、オーガの他に、シルバーウルフやグラットンエイプと言った鼻の利く魔物がいると聞いた。

後者の二匹はゴブリンたちとは比べ物にならんほど危険だ。

そいつらを遠ざけるために何らかの対策をしていてもおかしくはない。


 しばらく後をつけると、道が坂になり、山を登り始めたことに気づく。

この調子でディーナの言う館まで一気に進むつもりか…?


 そう思いつつ走っていると突然馬車が速度を落とし、その場に止まった。

まだ道の途中だ、ここに何がある?

まさか我のことに気が付いたか!


 慌てて位置を変えるように横に飛びのいた。


「勘のいいやつだ!」


 我がいた場所に、木の上から飛び降りて来た男が剣を振り下ろしていた。

チッ、やはり見つかっていたか、走るのに集中しすぎて気配が殺しきれなかったようだ。


「お前らが…ザミールの姉妹を助け出したとかいうやつらか?」


 我はヴォルガーとは関係ないところから聞いてみることにした。

こちらの目的がヴォルガーだとは知られたくない。


「…っ!こいつ!囲んでることに気づいてるぞ!気を付けろ!」


 我の問いには答えず、木から飛び降りて来た男は叫んだ。

お前らと言ったのは失敗だったか、まあいい、どうせやることは同じだ。


 我は<ダークミスト>を詠唱して辺りを黒い霧で包み姿を隠した。


「なんだ!?何も見えん!」


 あたりから狼狽えた別のやつの声が聞こえる。

我はそっちに気配を殺して近づくと、間抜けにもまるで見当違いの方向をむいてる男の背後に回り込んだ。

相手が我を見失っている間に<クリエイト・ダークブレード>を詠唱し、闇の剣を作り出す。


 ぞぶっ!という音と共に背後から相手の右足に闇の剣を突き刺した。


「ぐああああああっ!」

「答えろ、ザミールの攫われた姉妹のことを知っているな?」

「だったらなんだと言うんだぁぁ!」


 足を刺された男は痛みか、それとも怒りからか、叫びながら手にしていた剣を振り回した。

我には当然当たるはずもない。


「気を付けろ!!この辺にいるぞおお!剣を持ってる!!」


 ほう、なかなかどうしてただの賊ではないかもしれん。

激痛に耐えながら仲間に情報を伝えようとしている。


 我は叫んだ男から一旦離れると、近づいてくる別の気配に向けて<ダークボール>を放つ。


「ぐうっ!?」

「な、なんだ、魔法か!?また一人やられた!」


 どうもかなりの数がいつの間にかいるな…

どうするか…<ダークミスト>はもう数分で切れるだろう。

何度も連発していては相手も逃げるかもしれん、そうすれば我も相手を見失う。

今のうちにここから我が先に逃げるか…?


 いやそれはないな。


「がはっ!?」


 また一人、別の男に背後から飛び掛かり、地面に引き倒した。


「お前らの拠点に案内しろ、そうすれば命は助けてやるぞ」

「だっ、誰が貴様のようなやつを!」


 動けないくせに威勢がいいな。

数も多いし…何人か殺して減らすべきか…


 そう思って闇の剣を首に突き立てようとしたがふとレックスのことを思い出した。

我にとってはヴォルガーを攫ったであろう賊にすぎないが、レックスにとってはこいつらは娘を助けた恩人…


 …命はとらないでおいてやろう。

我は首に剣を突き刺すのはやめて、代わりに腕に突き刺しておいた。


「ぎゃああああ!」


 そんな調子でそこらにいる男たちに斬りつけて怪我をさせておいた。

六人ほどはやったが、まだ元気なのがいるようだな。


「黒い霧が晴れたぞ!」


 <ダークミスト>の効果が切れて辺りが明るくなる。

我に向けてそれぞれ短剣、剣を構える二人の男、その背後に弓を構えた男が一人いる。


 我は弓の男から隠れるように剣を構えた男に屈んで近づく。

剣が振り下ろされてくるが問題ない。

闇の剣で受けると、相手の剣はあっさりと折れた。


「魔法剣だと…だめだ!俺たちじゃ歯が立たねえ!」


 短剣を投げつけて来た男には折れた剣を持った男を盾にして代わりに短剣を受けてもらった。

肩に刺さっていたがその程度なら死にはせんだろう。

我はお返しに闇の剣を投げつける。

短剣の男の足は闇の剣が突き刺さり、背後にある木にぬいつけられた。

我の手を離れたのでじきに剣は消えるがそれでも何秒かはあのままだな。


 我は再び<ダークミスト>を使うと盾にしていた男を離した。

矢が飛んできたがもうそこに我はいない。

黒い霧に紛れて木の上に飛び上がったのだ。


「くそっ!またあの霧だ!一旦怪我人を連れて引くぞ!!」


 やつらは我の相手を諦めて方々へ逃げ出した。

木の上から見ていると黒い塊から男たちが飛び出してくるのがよくわかる。


 さて…どいつが案内してくれるかな…


 我は腕をかばうように歩く一人の男を見つけると、後をそっとつけることにした。

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