その5 かくて手術説明の日
体調がすぐれず、だいぶ空いてしまいました。
7/25に最終結果が出た。今回は婦人科の医長さんからの説明だった。
その前にわたしはいくつかの神経症、パニック障害、恐怖症で通院しているため、病気が悪性だった場合本人に告げていいかを担当医に確認を取りたいと言われた。医長さんがメールを送信していた。
「『冷静な女性であり、告げても問題ありません』とお返事がありましたよ」
婦人科の医長さんが眼鏡を持ち上げてわたしを見た。なんだか人事採用の面接結果みたいだなあ。
「スケジュールですが、手術前日には入院していただく必要がありましてね。
最短で22日月曜日の8:30~手術なのですが、事務手続きの関係で入院は金曜の8月19日にしていただく形になります」
「小鳥を飼っていますので、金曜に手続き、日曜にこちらに来るという形でも大丈夫でしょうか?」
「外泊という形でできるはずです」
「ではそのようにお願いします」
そして、入院手続きの19日と手術当日の22日は第三者の立ち合いが必須と言われる。困った。妹夫婦は共働きで、妹は教員である。年休全捨ての激務だ。母も安定しているとはいえ若い時の輸血が原因のC型肝炎であり高齢である。親族も大半は非常に遠距離、ないしはもう故人である。少ない友人には仕事を休んできてくれだなんて悪くて頼めない。
「どうしても第三者が必要ですか・・・」
「ご友人でも構いませんので、両日ともお願いします」
その晩妹から来た電話で事情を話すと、怒られた。
「お姉ちゃんの一大事なのに行かないわけないでしょ!
ただ手術の日は午後からどうしても抜けられない出張があるから、T叔母さんに頼もう」
すまん、妹。申し訳ない、叔母殿。
そして19日がやってきた。痩せぎすの妹と恰幅のいい姉。入院手続きの用紙を渡すと、事務員と栄養士から説明と聞き取り調査があるので座って待っていてくださいとのこと。
面白かったのがどう見ても妹が病人イメージだったため、事務員さんも栄養士さんもまっすぐ妹に向かって病人と思い話しかけたことだった。妹はそんなに病人っぽいかしらとこぼしていたが、わたしはわたしで、どう見ても『病人に見えない病人』というのも複雑なキモチなのである。
事務はともかく、栄養士さんの聞き取りはアレルギーの有無、好き嫌い、あとは主食の量だ。わたしはあまりご飯を食べないので、少量にしてもらうことにした。
そのあといよいよ執刀医と麻酔医からの説明である。執刀医は若くてとても綺麗でかわいらしい感じの女性だった。丁寧に、今は念のために最悪のことも想定してお話しますので、あまり気にしすぎないようにという前置きののち、手術内容の詳細説明をもらう。
専門用語が多いので簡単に書くと、卵巣の場合摘出時に即簡易検査が可能。この時悪性と出た場合は子宮卵巣全摘に切り替え、また腹部リンパ2か所を同時に摘出する。
良性と出た場合は卵巣のみ摘出として、ホルモンバランスの崩れを可能な限り減らす方向でとのこと。
前知識として調べていたので、普通にわかりました、と笑顔で返事をすると、お医者さんが首をかしげて尋ねてきた。
「もしかして、医療関係者の方ですか?」
「いえ、違いますよー」
「動じておられないので、かな、と思いました」
「自分でも一応、調べていましたので・・・」
・・・うん、普通の会話のように答えてしまったからな。むしろ隣で説明を聞いていた妹の方が顔色が悪い。
そのあと麻酔医さんから説明があった。麻酔酔い―全身麻酔に伴い術後に乗り物酔いのような症状が出る―についてである。女性である、乗り物酔いしたことがある、たばこを吸わない人はほぼ症状が出るという。こっちのほうが手術説明よりはるかにわたしとしてはきつい内容だ。
「3つ該当しますね・・・」
「ほぼ間違いなく、麻酔酔いの症状が出ると思います。・・・では」
クールな美人麻酔科医は無情(?)にもそう言って部屋から出て行ったのだった。
「・・・まあお姉ちゃん、絶対とも限らないんだしさ」
はー。ひどい乗り物酔いとかなんということだろう。こっちの方がはるかにイヤだよ。
手続きを済ませて一時帰宅となる。本当は入院当日は帰れないらしいのだが、お医者さんがそれを知らなかったこと、準備していなかったために特例で日曜15時半にくればいいということになったのだった。
またよろしかったらお付き合いお願いします。