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その3 思わぬ展開

 そしてすべての検査結果の出る7月に入った。土日を挟むので、7月4日の朝に婦人科に電話してみる。


「……ああ、はい、結果が出ておりますので、ご予約を承ります」


とはいえ、すでに午前の診療予約はほ埋まっており、どうにか12時に予約を取った。時間に待合室に入ると、まだ人がいっぱいだ。モダンなホテルのラウンジのような待合室の白い革張りのソファにかけて待つ。


 そしていよいよ自分の番が来た。


「どうぞ、おかけください」

「よろしくお願いします」

「それで、結果なのですが……。一般健康診断のほうと、腫瘍マーカーの方は異常ありません。

 ですが、先日のMRIの結果、こちらがK病院の放射線科のほうでも、ガンの疑いが強いということです」

「そうですか。そうしますと……?」

「こちらと提携しております病院にご紹介という形になります。

 婦人科で手術可能となると、S病院になりますね」

「……わかりました、お願いします」


検討の結果、7月11日の10時半に予約が取れ、当日朝こちらの婦人科に立ち寄って紹介状を受け取る手はずとなったのだった。

 S病院は自宅から徒歩、バス、電車乗り継ぎで1時間すこしかかる。一番のネックは電車。この路線はかなり時間を選ばないと相当混むのだ。ガン疑い濃厚という結果に加え、さらに通院に伴うストレスがどかっと加算される。


 そして7月11日。話を聞いた隣宅の奥さんが婦人科経由でS病院まで車を出してくださるという。これは本当にありがたいことだった。


 ……が、婦人科の方は手違いでまだ紹介状が完成していないという。急ぎで書いてもらいつつ、受付の方が手違いで診療が遅れる旨S病院の婦人科に電話連絡を入れてくれた。待っていてくれている隣家の奥さんに病院の玄関に出て少し遅れるので、事情説明とおいていってくださいというメールすると、気兼ねせずに、待っているからという返事が返ってきた。実に申し訳ない。


 10時ごろようやく書類を受け取り、S病院へ。丁重にお礼を申し上げ、車を降りる。名は聞いたことはあるが、紹介状なしでは受診できない総合病院ゆえ、来るのは初めてだ。先日行ったK病院の倍以上の広さがあるのではないかという規模。建物案内図を見ると、入院、外来棟含めて8つの建物からなる大病院だ。外来棟の入り口にはボランティア人たちが並び、案内などをしてくれている。

 

 エントランスホールに入ると、回廊状の構造の中心にエスカレーター、その下に再来受付の自動機が。周囲を取り巻くように入院案内所、会計受付、自動会計機、案内所、保険証の確認だけを行う専門の受付までがある。かなり近代化――コンピュータネットワーク化の進んだ病院だな、と思う。案内所に来院理由を話すと、診察券作成と保険証の確認後、すぐ婦人科待合へ行けばいいということだった。


 婦人科は2Fにあるのだが、奥まっていてわかりづらい。随所にいる案内の方が戸惑っている様子を見るとすぐに声をかけてくれ、案内していただいた。診療の受付をし、待つこと1時間半。


 受付待合スペースの奥にさらにまた待合があり、その周囲に診察室がコの字に取り巻いている。


「今回外来担当をいたしますAです、どうぞおかけください」

「よろしくお願いします」

「まず、いくつか質問させていただきますね」


 若くて美人の婦人科の医師が明るく言って椅子を勧める。大型の液晶ディスプレイに私の持病や状態などが打ち込まれてゆく。それから医師はこちらを向き直り、内診と体癌検査をするので診察室に行ってくださいという。


 体癌検査は初めてだ。これは子宮口から細い器具を差し込み、子宮内膜を掻把して削り、細胞を採取する。掻把自体も痛みを伴うのだとは聞いているが、懸念はもう一点。未産婦である私の場合、子宮口は閉じている。ためにこれをこじ開けるのがまたかなり痛いだろうということだ。

 定年で引退されてしまったが、以前通っていた婦人科のお医者さんがこの痛みの負担をかなり気にされていたのを思い出す。


「はい、ラクにしてくださいねー」


……!!!

ムリ!

内臓をナイフで削ってませんか???

痛いんです、力抜くとか絶対無理!! 痛いッ!!!

私はかなり痛みに強いほうだが、歯を食いしばっても呻きが漏れてしまうレベル。

退職されたお医者さんが麻酔をしてしましょうかと言っていた理由が文字通り痛いほどわかった。


「うーん、子宮も腫れて見えますし……内部に血液のようなものがたまっている感じですね。

 それとこの腫瘍が子宮とも卵巣ともはっきりわかりませんね。

 細胞診の結果は7月末になります」


ぜえはあ。診察が終わり、ヨロヨロしながら着替えて再び診察室へ。


「造影剤を使ったCT検査を入れますね。14日に直接放射線科に行ってくださいね。

 今日はこの後、血液検査と尿検査をします」


というわけで血液検査に呼ばれるまで、診察室前の椅子で待つ。おなかの方はなんとまだ痛い。生理痛ににた鈍痛だが、かなり痛む。ようやく痛みが和らいだのは15分ほど経ってからだった。そのころに中央採血室で採血し、尿検査のために採尿してくださいねと案内の方が見える。


 ひきつった笑顔で礼を言い、検査室へ向かった。こちらはさくっと終了。階下に降りて会計に書類を出すと、上部のパネルに処理の終わった番号が表示されるので、自動会計機に診察券を通せばよいと教えてもらう。受け付け、会計で待たない仕組みはいい。


 検査で疲弊したまま炎天下の道路に出た。夏の日差しの中を駅に向かって歩く。昼下がりとあって電車が空いていたのが、せめてもの救いだった。


 そして、全く予想外の7月11日朝。病院から電話が来た。


「……先日来院いただいた時のMRIなのですが、当院の放射線科の画像診断の検討結果で、卵巣、子宮両方またはどちらかが悪性の可能性が高いということで。

 それで、急きょ7月19日に胸部CTの検査を追加いたします。

 細胞診は急ぎでも25日になりますので、その結果を待たないうちに追加検査になってしまうのですが」

「……わかりました、よろしくお願いします」


 私は特に宗教は持たない。が、まさにこの時の気持ちはOh my god! だった。

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