新たな提案
「目の下のクマが酷いわね」
「よく眠れなかったもので・・・」
化粧では誤魔化しきれなかったようで、王妃様に指摘されてしまいました。
「話が終わったら、王宮の部屋で休んでから、コテージに戻るといいわ。話も手短にしたいのだけど、ちょっと無理そうね・・・。まぁ、予想はしていたけど・・・」
そう言って、王妃様は応接室のドアに目線を移しました。
「母上!お話があります!!」
ドアが勢いよく開き、エドワード様が現れました。
「何事ですか?ドアはノックして静かに開けるものですよ。マリーが驚いているではないですか」
王妃様は、そう言ってから優雅にお茶を飲まれました。
「マリー・・・。君もいたのか・・・」
わたしに気付いていなかったようです。
「それで、話とは何ですか?」
王妃様がエドワード様に座るように促します。
エドワード様がわたしの隣に座られました。
「サイラスから聞いたのですが、マリーに婚約者を探すと言うのは、本当ですか?」
何故、エドワード様が気にされるのでしょうか?
「ちょうどその話をマリーとしようと思っていたところでした。気になるのなら、あなたも聞いていきなさい。それでは、マリー。サイラスから、報告は受けていますが、こちらで貴女の婚約者候補を選ぶことを了承したということで間違いないですか?」
「・・・はい」
「では、サイラスからの『提案』はどうですか?」
サイラス様は、この事も報告されていたようです。
わたしが寝不足になった原因です。
昨夜、コテージのダイニングでは、“女子会”が開かれました。
話題は勿論、“サイラス様からの求婚(仮)”です。
メアリから事の経緯を聞いたリズさん達三人は大はしゃぎです。何故?
「サイラス様も大胆なことをしますね~」
「『提案』なんて言いながら、しっかり求婚されるなんて・・・。好機を逃さないところは、流石、仕事が出来る男性ですね」
「テレサさんが小説のネタにしそうな話ですよね~」
「クララさんも言葉にはしていませんが、気にはなっている様子でしたから。今度『デイジー』に行った時にでも・・・・・・」
リズさん、エミリーさん、ローラさん、メアリの話についていけません。自分の事なのに・・・。
「マリー様は、今まで学業にがんばられてきた分、恋愛に関してはかなり疎いようですので、ここらではっきりと自覚されたほうが良いかもしれませんね」
メアリに言われてしまいました。
「サイラス様は、本心からマリー様と『結婚』されたいのです。もっと分かりやすく言いますと、サイラス様はマリー様のことを『愛して』いらっしゃいます!」
断言されました。
「ですが、サイラス様はそんな事一言も・・・」
四人にため息をつかれてしまいました。
「流石、マリー様。呆れるを通り越して関心してしまいました・・・。サイラス様の態度を見れば分かります。気付いていないのは、マリー様、エドワード様だけです。サイラス様自身も周りに気付かれていないと思っていらっしゃるかもしれませんね・・・」
ローラさんが言いました。
「そんなに分かりやすかったのですか?」
「「「ええ」」」
他の三人が頷きました。
「クララさんが言ってましたよ。『見ていて切ない・・・』って」
「そうなんですか・・・。でも、何故、サイラス様はおっしゃって下さらなかったんでしょう?」
「それは、サイラス様が遠慮していたからだと思いますよ。何に対してかは、マリーさま、ご自分でお考え下さいね」
今までのサイラス様との出来事(街へのお出かけなど)を思い出し、自分の鈍感さに気付き、深く反省しました。
ですが、サイラス様が何に対して遠慮しているのかは分からないまま、朝を迎えてしまいました。
まだ、サイラス様に対して自分がどう想っているのかも分かりません。
「その事に関しては、まだ検討中です・・・」
そう、答えるしか出来ません。
「サイラスの『提案』とは?」
サイラス様は、エドワード様にそこまでは話していらっしゃらないようです。
エドワード様が知らなくて良かったと、ホッとしました。
「あなたには関係の無いことです!」
王妃様が強い口調でおっしゃいました。
「何故ですか?」
エドワード様は少し怒っているようです。
「これは、マリーとサイラスの問題です。どうしても気になるのでしたら、直接、サイラスから聞きなさい。マリーの婚約者の件については、あなたは“当事者”ではありません。だから、あなたには話さなかったのです」
「では、サイラスは“当事者”なのですか?」
「ええ。サイラスはマリーの婚約者候補の一人です。本人もその事については了承済みです」
「しかし、私にも一言言ってくだされば・・・」
「だから、何故、エドワード、あなたに言わなければいけないのですか?あなたは『自分の妃は自分で決める』と言ったではありませんか。マリーのことに口出しする前に、自分の事をどうにかしなさい!」
「くっ・・・」
親子喧嘩(?)が始まってしまいました。
「分かりました。母上がそうおっしゃるのであれば、仕方がありません。機会を窺っていたのですが、悠長なことは言っていられなくなりました。母上、私はマリーを・・・、ローズマリー・ヴェニディウム嬢を私の『妃』に迎えたいと思っています!」
エドワード様の言葉に耳を疑いました。わたしの名前の後に『妃』って聞こえたような・・・。
「エドワード。その言葉、誠だと思ってよろしいですね」
「はい」
「分かりました。しかし、エドワード。サイラスもマリーに求婚しているのよね。どうしましょう?」
先ほどまでの真剣な話方から、少し砕けた口調になりました。
「マリー、それは本当か?」
「はい・・・。『提案』という形で、申し込まれました」
隠していてもしょうがないので、正直に話しました。
「サイラスに先を越されて焦る気持ちは分かりますが、先ずは、マリーに考える時間を与えることです。サイラスとも話し合いが必要でしょう。それから、年末で忙しいのですから、至急、仕事に戻りなさい!」
エドワード様は追い出されてしまいました。
「さて、マリー。今のあなたの状態では、まともに考えることが出来ないでしょう。先ずはゆっくり休みなさい。それから、二人のことを真剣に考えてやってね。貴女が幸せなのが重要です。どちらも選ばない選択肢もあっていいのです。答えは急ぎません。ですが、出来るだけ早く出すように。あの二人、あなたのことが気になって、仕事にならないんじゃないかしら?」
「はい・・・」
王妃様が、エドワード様のことだけではなく、わたしやサイラス様のことも想って下さっていることを嬉しく思いました。
「そうだ、答えが出るまでは、コテージに戻るの禁止ね」
そう言った王妃様の笑顔が、何故か少し怖かったです。
一週間以内に更新したいと思っています。




