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パーフェクトワールド

楽しんで頂ければ幸いです。



暁の少女は歌う。


恋人たちの歌を。


歌は紡ぐ。


ひとりの女性の物語を。




小さな丘の小さな家に恋人達が暮らしていた。

しかしある時、二人を戦火が引き裂き徴兵された恋人は二年後にこの丘で会おうと女性に約束をのこし、戦場へと向かった。

一人残された女性は男が好きだった白い花を育て帰りを待つ事を決意する。しかし何度植えても白い花は根付かず直ぐに枯れてしまう。それでも手を泥だらけにしながら恋人を思い一人植え続けた。


やがて戦争は激化する。

ひとり女性は祈り願う。


彼は約束を必ず守ってくれると。



そして二年後、月明かりの下約束の丘で一人歌う。


恋人を家族を仲間を人々を国を過去未来を思い歌う。

その歌声は波紋のように広がり、そして女性の足元に一輪の白い花が静かに咲いた。花は歌声と共にその数を増し丘を覆い、村を街をそして国全体を、真っ白な花は全てを埋め尽くした。


疲れ果て、いつの間にか白い花の上で眠ってしまった女性の耳に自分の名を呼ぶ優しい声が聞こえる。



誰よりも優しく愛おしい声が。





もともとはゲームのエンディング曲で、内容としては戦略RPG。一兵卒の男性主人公が戦争で手柄を立てて成り上がっていく下克上な物語なのですよ。

罠あり奇襲夜襲あり裏切りありの、なかなかマニアックかつハード仕様なゲームだったです。そして戦が終わり主人公が武勲をたて、次の戦が始まる前に断章になるですが、そこで謎の女性が登場するです。

暖炉のそばで編み物をしていたり花を植えたりな日常的な一コマが。


誰やねんこの女性(美人さん)は?


ゲームをした誰もがが思ったハズなのです。



そして疑問が解決しないままゲームの最終戦。

戦いに決着がつき、主人公が敵将に剣を振りかざした瞬間ーー、画面が白い花で覆い尽くされるです。


なぜなになにごと、なのです。


そして訳の分からぬままエンディング曲が流れ始め、曲の内容といくつもの断章のスチルが重なり合った時、プレイヤーは知るです。



主人公おまえ、恋人いたんかーいっ!?



どうりで野営地でいい雰囲気だったロザンナ衛生兵ちゃんとかミツィア少将とくっつかないハズなのですよ。

プレイ中に、女の子を一人にするな〜です!男ならドンっと行くですよっ、ロマンスは何処にーと何度も叫んでたです、が、最初からロマンスはあったです。



そしてか細く綺麗な女性の歌声とスチルが最後を締めくくるです。



わたしは泣いたです。

盛大に泣いたです。


平和大事。

争い駄目。



結局この戦いの結末も、最後に聞こえた声が主人公のものかも、白い花に横たわる女性が本当に生きているのか、あの白い花が現実なのかさえ、全て曖昧なまま終わるです。


賛否両論なゲームですが、わたしの中では不朽の名作なのですよ。




ま、ゲームの話はさておき、うーむ、です。

歌詞を忘れているかと思ったですけど意外と歌えるものなのですねぇ。


チラリと三人を見るですが、そこだけイケメンオーラでキラキラしてる上に、何百年ぶり〜とか皆んな言ってた割には完璧な演奏なので、ちょーっとだけジェラシーなのですよ。

…いや失敗したらダメですけど。


鬼畜スキル【天壌歌】の影響で、わたしのMPがどんどんが減っているのが分かるですが流石は(無限大)なのですよ。ぜーんぜんへっちゃらなのです。もうすぐ歌い終わるですけど、余裕余裕。

HPだって残り2になったですよ☆


…をや…。


冷や汗が背筋を伝うです。

…これ最後まで歌えるのです?



ーーいやいや、女は度胸なのですよ!


やったるでー、なのです!








その日、テスコにいた人々は、


奇跡を体験することとなる。



暁の髪をなびかせ慈愛の眼差しで歌う少女。


幾重にも重なる荘厳な音の調べと共に、美しく透明な歌声が辺りを包み込み、それは交じり高め合いやがて風に導かれゆっくりと波紋状に広がってゆく。


呆然とする人々を柔らかく包む暖かい無償のうた


呼吸の音さえも邪魔だというかのように息を押し込み魅入られ、ある者は涙を流し歓喜し、またある者は跪き祈りを捧げる。ある者は神々を讃え、ある者は遠い喪った日々に涙した。



人と音と歌が響き合いひとつになった。






目を閉じ奇跡の余韻に浸る人々はまだ気付かない。



壊された建物も怪我も、汚れ破れた衣服でさえ全て元に戻っていることに。









最後の一音を気力だけで歌い終えると同時に、ファムの意識はプッツリと途切れた。

その場に崩れ落ちる体を近くにいたシリルが危なげなく受け止める。

何処も異常がないか瞬時に確認し、止めていた息を深く吐いた。


シリルは纏わりつく体の怠さを振り払うように首を軽く振った。

まだ【天壌歌】の余波は続いている。補助的役割とは言え彼ら三人のステータスも、一時的に半分以下まで低下しているのだ。

微かに震える両手に力を込めた。

ファム(マスター)の前で無様な醜態など己の矜持が許さなかった。





腕の中のファムは疲労からか顔色は青白いが、肌ツヤも良く健康状態には何も問題は無いようだ。



私も安心しました。

場合によってはマスターが守ったこのテスコが、滅びかけるではなく滅びるに変わっていましたから。


微笑を浮かべ虫も殺さぬ顔でそんな事を考えているとは周りは誰も思ってもいないだろう。



ああでも海風の影響からか綺麗な暁色の髪が少し痛んでいますね。神獣骨のハサミで毛先を整えて、それから光輝蜜や水龍華など独自に配合したトリートメント…そうそう蒸しタオルも必要ですね。桜色の爪はシーサーペントの皮で作った特製のヤスリで磨き上げて表面にはドライアドの樹液でーー。



今までの無気力が嘘かのように次々と欲求が湧き上がってくる。


この充足感。

自らの主人を見失った時から続くシリルを苛んでいた焦燥も飢餓感も、今は欠片も見当たらない。

確かに存在する腕の重みに、知らず笑みが浮かんだ。


駆け寄る同胞達の目にも同じ光を認める。

死んでも言うつもりは無いが、主人を失い彷徨い続けたこの400年。

彼らがいなければ、きっと狂っていた。



奇跡というものがあるならば、誰一人として欠けることなく今この場所に居られること。


これを奇跡と呼ぶのかもしれませんね。


シリルは心の中で呟いた。





さぁ、私たちの家へと帰りましょう。


望みのままに何処へでも。



貴女のいる場所が欠けることない世界(パーフェクトワールド)なのだから。







前回の更新日って…考えたら負けです。

未来を見ていこうと思います……すみませんでしたぁーーっっ!!《スライディング土下座》

(>人<;) =3=3=3

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