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猫と、雨  作者: 周防駆琉
29/31

8 Month Later (3)

本編はもうすぐ終わりで、いちゃいちゃ番外編をmoonに上げる予定です。どうぞお付き合い下さい。


後半、追加しました。

 

 リタと別れてから3日が経った。フェグリットを発つのは明後日だが、未だにリタからは何の連絡もない。それでも、約束の場所にリタが現れることを俺は信じて仕事をしていた。たとえ、目の前の人物が今リタと一緒にいたとしても。



「この度は御即位誠におめでとうございます。初めてお目にかかります、リズダイク宰相ラース・クヴァントの代理で参りましたシェイド・ロセットでございます。今後もクロー陛下の元、リズダイクと我が国が良い関係を築いていけるよう尽力致しましょう」



 お決まりの挨拶をクロー国王と交わしながら、俺は相手の視線の鋭さを甘んじて受け止めていた。国王がリタについてどこまで調査していたのかわからないが、俺との関係は存じ上げているらしい。顔に浮かぶのは穏やかな笑顔だが、その目は冷え切っている。それは国王の後ろに控えている近衛騎士も同様だ。



「そういえば、ロセット様は独身でいらっしゃるとか。先ほどからフェグリットの女性があなたに見惚れていますが、いかがですか?」



 クロー国王の言葉に俺の後ろで連れてきた補佐官の空気が変わった。遠まわしだが今の言葉はフェグリット国王自らリズダイクとのさらなる繋がりを求める言葉だ。イエスと答えれば王族に近い娘との結婚が進む、ノーと答えると公の場でフェグリットを見捨てる発言とも取られかねない。


 それに加えてリタが絡んでいる。国王はどうやら俺を試しているようだ。



「そうですか?皆さまクロー陛下に見惚れていらっしゃるのでしょう。それに、今の私は愛しい黒猫を可愛がり過ぎていて、女性は寄ってきませんよ」


「~~っ!!」



 驚いたのは俺の後ろだ。何の事だかわからない上、俺が惚気を言うなんて信じられないのだろう。彼らが気まずい表情をしたのをいいことに追い払う。部外者は少ないほうが向こうもこちらもいい。国王の側は一体俺が何を言い出したのか興味深そうだ。



「この春に路地裏で拾いまして、それからはすっと彼女につきっきりなんです。黒に近い青い毛並みに黒い瞳の小さな猫なんですが、私の手で美しく花を開かせたいと思っています」


「……!!」



 鋭かった視線が、さらに冷たくなる。流石に賢王になるだろうという評価がされているだけある。「ルビアが王女だと知っていた上、猫に例えるとはけしからん」と言ったところか。俺だって本当はリタについて向こうと正面から話がしたいが、立場がそれを邪魔をする。いくらプライベートだと言い張っても、俺と向こうが非公開の場で話をすることはかなわない。


 以前のリタのようにダンスにでも誘えば秘密裏に話もできるのだが、流石に俺はクロー国王とダンスをする気はない。



「随分と、大切にしているのですね」


「ええ、彼女を離すなんて考えられない位に」



 お互いの視線がぶつかる。きっと、今の俺とクロー国王の心中は同じだ。『彼女はわたさない』


 






********************************************************************************






「こんばんは、クロー陛下。まさかこんな時間にお呼び出しを受けるとは思ってもいませんでしたが…あなたの想い人の恋人である私に対する嫌がらせですか?それとも本当に私をお望みで?」


 草木も眠る深夜、俺は夜会で見た騎士に起こされたと思ったらなんとクロー国王の寝室へと連れていかれた。王城が未だ建設中なため深夜ならば人目につくことなく行動できるからだと言うが、どうして寝室なのか。そう言った噂は聞いていないが、もしかしてクロー陛下はそっちの人間なのか。もしそうだとしたら、いや、それはないだろう。



「…どちらでもありません。お呼び立てした内容はわかっていますね。この事は最重要機密なので、失礼をさせていただきました」


「私の恋人のリタの事でしょう。いや、プールビア・カルツァ=ディ・フェグリット王女と申し上げるべきか…」


「それを知っていながらよくもルビアをあんな風に扱えますね。彼女はフェグリットの正当な王女です。いくらあなたがリズダイクの大貴族だと言え、無礼にも…!!」



 賢王となると言われるこの王も年齢でいえばやっと20歳、国王としては1年生だ。プールビア王女の名前を出すと怒鳴りたいのを我慢してはいるが、怒りの感情をあらわにした。それは心からの感情に見え、好感が持てる。王朝が変わったにもかかわらず多くの臣下が彼に従うのもよくわかる。



「陛下、私はリタがどうしてリズダイクに来たのかを知りません。ですが、リタがプールビア王女として生きていくことは不可能でしたし、リタは自分の過去を一切語りませんでした。今のリタの立場は私が彼女の意思を尊重した結果です。それに、公式に既にこの世に存在していない人物を我が国でそのように扱うことができないのはおわかりでしょう」


「ルビアは…あいつは何を望んだんですか」


「多分ですが、新しい人生を。リタが出会った時に望んだのは名前でした。それからは普通の仕事。確かにあいつはあなたに手紙を送ったりと気にしていましたが、王族としての未練は全く無いように思えます。クロー陛下、差し出がましいのを承知で政治に関わるものとして申し上げます。王女の事は諦めてください。彼女はリタだ」





更新が無く申し訳ありませんでした。


今日から更新再会します!!

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