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猫と、雨  作者: 周防駆琉
10/31

3 Month Later (2)

更新が滞って申し訳ありません。徐々に話は進みます。

 雲ひとつない住み渡った青空の下、私は街を歩いていた。この季節のリズダイクはほとんど雨が降らないけれど、行動は早いほうがいい。


 きょろきょろしながら通りを歩けば感じのよさそうなカフェやレストランが並んでいる。その中のいくつかを記憶に留め、辿り着いたのはギルド。首都に来てからはずっとシェイドに甘えていたけど、シェイドの妹やペットらしき立場から脱却するためにも、そろそろ仕事を見つけないと。


 ギルドには傭兵業から王宮の下官まで、全ての仕事の依頼が集まる。首都のギルドに行くのは初めてだが、王城を出てから首都に来るまでには何度も訪れた場所だ。


 今までは王城で培った教養で住み込みの家庭教師や侍女をしたけれど、今回の目当てはさっき見てきた飲食店の給仕。お茶を入れるのは得意だし、シェイドが料理をするのを見て興味を持ったから。


――リズダイクの情勢も調べてみようかな


 きょろきょろと傭兵など荒っぽい職業の掲示板を探す。


 シェイドは宰相の外交に関する補佐官だから、彼が持ってくる書類からこの国の情勢をみることができた。それによると今は周辺諸国と大きな問題はないようだけど、実際の場がそうであるとは限らない。その実際を手っ取り早く知る方法が傭兵の募集だ。


 見つけた掲示板の募集は多くはないが、少なくはない。端から見ていくとフェグリットへの援助とみられる募集もある。そして。


――メルジェ……やっぱり駄目だったのね…


 リズダイク王国はこの大陸ではかなり大きな国であり、その南の国境はたくさんの国々と面している。その一つがフェグリットであり、メルジェはその隣に位置するやはり小さな国である。



「お嬢さん、フェグリットに帰りたいのかな?」



 軽薄そうな声をかけられて振り向くと、騎士団の制服を着崩した男の人。そう言えば騎士団の募集が始まると聞いた気がする。私みたいな女の子が傭兵募集の掲示板を見ているのが珍しかったのだろう。



「へぇー、だけどおちびちゃんじゃねぇ……俺はこれからメルジェに行くんだが、おちびちゃん次第じゃ連れて行ってやらねぇこともないぜ?」


「結構です。別にフェグリットに行きたい訳じゃないですから」



 すると、今度は別の柄の良くない男が話しかけてくる。中途半端な傭兵業をしている男にありがちなことだが、私のような女とみれば下心を隠しもしない。



「んな恥ずかしがらねぇでいいだろ?」



 男の手が私に伸びる。流石に面白そうに見守っていた騎士が止めに入ろうとするが、それより早く私は動いた。



「ぐぁっ!!いってぇ……離せ、この女!!」


「女性だからって気を抜いていると、戦場では死んじゃうわよ」



 伸びてきた手を逆に私のほうから掴んでひねり上げると、男は痛みで力が入らないのだろう。逃げ腰で口だけになった男を解放してやると、恥ずかしいのだろう、すぐにギルドから出て行った。


 これでもフェグリットでは軍を任されていたのだ。王族だから前線には出られないけど、戦場で戦うことも荒れたあの国では珍しいことではなかったし。



「驚いた…強いんだね」


「そんなこともありません。武器がなければ、護身術程度です」



 弓や槍など一通りの訓練は受けたが、まともに扱えるのは弓と片手剣だ。さぁ、面倒な事になる前にこの場から離れよう。早く本来の目的を果たさなければ。



「ちょっと待って。ギルドにいるってことは、何か仕事を探してる。武器がなければ、と言うことは剣ならかなりの腕なんだろ?だったら騎士団においで」


「遠慮させていただきます、じゃあ」


「だーかーら、待ってって。そんなつれないこと言わないで練習を見に来いよ。そうだ、今ならちょうど昼休憩で練習場には誰もいないし、手合わせしよう。うん、そうしよう。あ、俺は中央騎士団長のヴィル・ヒューズだ」


「リタです…って、え!?中央騎士団の団長!?」



 ヴィルと名乗った男は驚いたことにかなり上位の騎士らしい。そして、その彼はさっと馴れた様子で私の手をとると、ギルドから私を引っ張り出した。


 

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