68:子供は正直
ランスが村に私を送り届けてくれた時。
多くが奉仕活動の時間で修道院にいなかった。それに彼は修道院長に挨拶する時こそ兜を外していたが、その時をのぞき、兜を着用していた。よって彼の姿をみんなが見るのは、昼食を一緒に食べることになった、今日の食堂が初めてだった。
もうそれは、大変な事態になってしまってしまう。
ナオミやキャリーは勿論、修道女達は、自身の立場を忘れ、ランスに見惚れた。ある者は食べようとしていたパンを転がし、またある者はグラスに注ぐ水をあふれさせる。神への誓いを忘れ、ランスのその美しい姿、仕草、笑顔に魅了された。
修道士達は、あれが聖騎士かと感嘆し、ランスを見て祈りの言葉を唱えた。そして自身ので過ぎたお腹を見て、取ろうとしていたパンの数を減らし、スープの量を少なくする。
孤児院の子供達は、他のみんなより素直だった。
「この前来た沢山の聖騎士より、この騎士が一番かっこいい!」
「聖騎士だけど、王子様みたい!」「お嫁さんにしてほしい!」
もうハッキリ声に出して、大絶賛だ。
当のランスは、そんな周囲の視線には無頓着で、一緒に座ったナオミとキャリーに笑顔をふりまいた。私の友人と分かっているので、最上級の笑顔を惜しみなく見せ、二人を骨抜きにしている。
そんなランスに連れられ王都に向かう私には、もうみんな「羨ましい!」と煩悩たっぷり。それでも「気を付けて」と、最後は見送ってくれた。
今回、馬車と御者を雇ったので、ランスは自身の愛馬にまたがり、私の馬車を完全に護衛する形だ。そうなるともう、自分が貴族の令嬢にでもなったかのような、不思議な気分になってしまう。
こうして村へ向かった時とは別の宿場町で一泊し、そして私は再び、王都へやってきた。
「アリー様、滞在いただく別邸に到着しました。ここは宮殿にも近く、普段、自分もここに滞在しています」
ランスが王都での私の滞在先として案内してくれた別邸は、エルンスト伯爵家が王都で所有する本邸とは、別の屋敷だ。
王都内で本邸と別邸を構えるのは珍しい。
理由は明白。王都の土地は限られている。そして貴族に割り振られている土地も限られていた。よって王都で本邸に加え、別邸を建てたくても、まず土地がない。
エルンスト伯爵家が別邸を持てるのは、伯爵家としての歴史が長いことと、伯爵家では最上位の格付けであるためだ。公爵家とのつながりも深く、かつ王族に嫁いだ娘も何人もいる。そんなエルンスト伯爵家だから許されている王都の別邸は、本邸より敷地は狭いが、宮殿には近い。そして本邸は、長男が継ぐことが決まっている。よって別邸には、聖騎士となったランスがずっと住み続けているのだという。
本邸より狭い……というが、周囲の屋敷に比べると、別邸と言えど、とても広い。宮殿と近いこの立地で、この広さ。他に類を見ない。
ジルベールの、サンタベリー子爵家の広大な敷地と庭園、エントランスホールを知っている私だったが……。エルンスト伯爵家の別邸には、圧倒されている。
敷地は地方領であるサンタベリー子爵家の方が、圧倒的に広いと分かっていた。でもエルンスト伯爵家の敷地、庭園には、広さを感じさせる工夫が随所に行われている。
まず屋敷そのものが、高台にあるかのように建てられているのだ。基礎となる部分に厚みを持たせ、見渡す景色がより広がっている。さらに庭園にはアレー(小道)を設け、ガラスを使ったモザイクを飾り、遠近法の手法が取り入られていた。
人間の視覚を巧みに操作することで、庭園を実質以上に広々と見せることに成功している。
案内されたエントランスホールの天井の高さもすごい。
その高さで吊るされているシャンデリアの豪華なことと言ったら……。宮殿には結局足を運んでいないが、きっとそれに匹敵すると思う。
その広々としたエントランスホールにつながるレッドカーペットが敷かれた中央階段も、手すりの装飾一つとっても芸術品に思える。
さらに案内された部屋にも、圧倒された。
窓が多く、美しい庭園が見え、南に面しているので、日光が気持ちよく入ってくる。敷かれている毛足の長いブルーの絨毯は踏み心地もよく、壁に飾られた雄大な景色の絵画も、実に素晴らしい。
どっしりとした暖炉、高級な板材に彫刻で繊細な模様が刻まれた調度品の数々。真っ白なリネンで揃えられたベッドに、深みのある紺色の布と黄金が使われた天蓋。ソファやカーテンのファブリックは、淡い水色で統一され、とても清潔感があった。
バスルームは大理石、バスタブを支える猫足は純金製。ドレッサーもあり、巨大な鏡を飾る装飾も黄金と、目がチカチカしてしまう。
いきなりこんな部屋に滞在できるとなっても、どうしていいのか分からない。
メイドに一通り室内を案内してもらったが、文机の前で固まっていると、ランスがやって来た。そのランスを見て、いよいよ腰が抜け、座り心地のいい椅子にそのままへたってしまう。
ランスは自身の屋敷にいるということで、甲冑でも隊服でもない、一般的な貴族の服を着ていた。
オフホワイトのシャツに、自身の瞳と同じターコイズブルーの上衣とズボン。ベストは紺色のシルクタフタと、淡い水色のサテンの縞模様。シルバーの飾りボタンが輝いている。タイはオリエンタルブルーで、リーフ型の宝石の飾りがとてもオシャレに感じた。ホワイトブロンドの髪にも、ピッタリのコーディネートだった。
王子様でも騎士でもないその姿は……貴公子。
まさにそんな感じで、もう見惚れてしまった。
【御礼】
なろう人生初で、金メダルいただきました!
読者様の応援のおかげです。本当にありがとうございます!
活動報告で御礼伝えています。
お祝いの新作も用意するのでお楽しみに☆彡






















































